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2000/10/13

<韓国文化>キムチの特性と効能

キムチの特性と効能  韓国食品開発研究院・朴完洙

 高い栄養価 老化を防止し、がん抑制

 日本の食文化にすっかり定着した韓国の伝統食キムチに関するセミナーがこのほど、韓国農林部の主催で都内のホテルで開かれ、韓日の専門家がキムチの効能についての研究結果などを発表した。この中の韓国食品開発研究院生物工学研究本部の朴完洙・キムチ研究チーム長の講演からキムチの特性についての発表の要旨を紹介する。

 起源と発達

 韓国のキムチは単純な発酵野菜ではなく、塩辛類、薬味、香辛料などが多く加味された複合発酵食品で、塩の濃度、塩辛の種類、薬味の配合、魚類の添加などによって多様な製品をつくることができるようになった。

 韓国では当初、山菜類でつくった各種キムチが製造されたと推定され、カブ、ダイコン、ハクサイなど栽培野菜類が入ってきて、これらを主原料にするに至った。特に唐辛子が入ってきて、あらゆる種類のキムチに唐辛子を入れるようになった。

 韓国ではすでに三国時代からキムチを食べたと推定される。「三国史記」には高句麗人が野菜を食べて発酵食品をよくつくったという記録がある。しかし、このころのキムチは現在のキムチとは異なり、単純な塩漬け食品であったことがわかる。

 韓国に唐辛子が入ってきたのは16世紀末といわれる。唐辛子が入った現在のようなキムチに関する記録は、1766年の「増補山林経済」で見ることができる。1872年に発行された「林園十六志」には塩辛が入ったキムチが登場する。

 このように見たとき、韓国のキムチは当初、中国や日本の野菜漬けと大差なかったが、1700年代半ばごろから韓国独特の野菜発酵食品として発達したものと考えられる。

 種類と原料特性

 キムチの特性は、一般的にキムチの種類によって違う。キムチは地域および季節別に生産される原料野菜が違い、材料の種類、配合比率、および熟成方法が非常に多様だ。現在まで調査されたキムチの種類は190余種に至り、キムチを使った料理は50余種あると調査されている。

 キムチ製造方法に基づいた分類によれば、キムチは一般キムチ類と水キムチ類に区分できる。代表的な一般キムチ類にはハクサイキムチ、カクテギ、チョンガーキムチなどと、塩漬け脱水した主原料に唐辛子粉を含んだ他の副材料を混ぜ合わせて熟成製造した大部分のキムチがこれに属する。

 製造時に水を加えて唐辛子粉をほとんど使用しない水キムチ類には白キムチ、トンチミ、ナバクキムチなどを挙げることができる。

 キムチの主材料に使われる野菜類は30余種あり、これに特性を与えてくれる副材料を添加する。副材料の果実類は香味を増進させるため、穀類や糖(主に砂糖)は乳酸発酵を促進させるため、夏季に多く利用される。動物性材料には肉類と魚類が使われ、これらはタンパク質、アミノ酸成分などを補強してくれる。

 発酵特性

 キムチの特性で最も注目すべきことは乳酸発酵を中心とした自然発酵食品という点であり、乳酸発酵などいろいろな微生物の作用が非常に重要だ。

 キムチは、乳酸菌作用による乳酸発酵が起きて生成された乳酸によりキムチ漬けが促進され、味にも寄与している。また、乳酸は酵素や野菜の成分と有機的な結合して風味を育成し、一方でキムチに悪い発酵や腐敗菌の発育を抑制する。

 キムチが持った酸っぱさの主成分である有機酸は、キムチ熟成中に塩、他の調味料との調和や有機酸自身の単独作用などとても重要な役割を果たしている。キムチを熟成させれば、発酵過程で乳酸菌によりさまざまな有機酸が生成されるが、この中には乳酸が最も多く、このほか酢酸、オクサル酸、マロン酸、スクシン、リンゴ酸、クエン酸も生成される。キムチの有機酸は熟成時間によっても含有量が変化する。

 栄養成分と価値

 キムチは栄養面でも非常に優秀な食品として評価されている。キムチの栄養成分はその原料によって違うが、一般的に次の通りに整理される。

 ①原料に使われる野菜に含まれたカルシウム、銅、リン、鉄分、塩などの無機質成分を摂取できる②動物性塩辛でアミノ酸を得て、米をはじめとする穀物類で不足したタンパク質を補完することができる③ご飯を主食とする場合に不足がちになるビタミンB1の吸収を助ける④野菜に豊富な繊維素を摂取して便秘を予防、腸炎、結腸炎などの疾病を抑制する。

 キムチの栄養学的価値は、キムチそれ自体に含まれている栄養成分以外に、キムチ特有の風味による食欲増進効果を高く評価することができる。

 キムチの栄養分析表を見ると、さまざまな種類のビタミンと無機質のカルシウム成分を供給する食品であることがわかる。特に塩辛類で供給されるアミノ酸、発酵・熟成に伴う有機酸、唐辛子、ニンニク、ショウガなど調味野菜類に入っているさまざまな種類の特殊成分はキムチの栄養学的価値を高めている。

 例えば、唐辛子はビタミンA含有量が多く、特にビタミンCはリンゴの37倍、ミカンの7倍含み、人の老化を抑制するといわれる。ニンニクに含まれるアイリシンは強力な殺菌効果とともにビタミンB1の吸収を促進して新陳代謝を活性化し、強壮効果もある。さらには、乳酸菌が腸内微生物の活性に影響を与えることで、大腸がんの予防効果があるという研究結果も発表されている。