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2000/09/08

<韓国文化>秋夕

秋夕―――――
 ご馳走をつくって家族で先祖の墓参り

 韓国でもっとも盛大な祝祭日の一つである秋夕(チュソク=旧盆)が間もなくやってくる。秋夕は陰暦の8月15日で、今年は9月12日がその日に当たる。この日はごちそうをつくって先祖の墓参りや祭礼を行い、その年の豊作を祝う。秋夕の食べ物にまつわる話を韓国料理研究家の金裕美さんに紹介してもらうとともに、その代表的な食べ物である「ソンピョン(松餅)」の作り方を紹介する。

  ◇民族大移動の秋夕◇
 秋夕は先祖の墓参りを行うため、都会で暮らす人たちが一斉に田舎へ帰る。このため韓国全土で“民族大移動”が繰り広げられる。

 秋夕は「嘉俳日(カウイナル)」、「ハンガウイ」ともいう。このころはちょうど秋の収穫が終わったころ。人々は家族そろって民族衣装に着替え、新しい穀物でつくった餅や酒で「茶礼」を行い、隣近所と分け合って食べる。このあと穀物や果物、酒、松餅などを先祖の墓に供えてその年の豊作を祝う。


 祖先への感謝の気持ち大切に 金裕美(韓国料理研究家)

 日本の都市では、子供たちを中心に仲秋の名月をめでる月見の風習が辛うじて知られますが、騎馬民族から農耕民族として韓半島に定着した祖先の末裔として、未だに陰暦を大事に生活の中で生かしている我が韓国では、澄み切った秋の夜空に一際大きく浮かび上がる真ん丸い満月を感慨深く見上げます。

 仲秋節、またはハンカウイと言われる秋夕は、収穫の名節です。春から夏にかけて懸命に育てて来た穀物や果物がようやくにして熟し、収穫を迎える待ちに待った大切な季節です。自然と満ち足りた豊かな気持ちでいっぱいになります。その気持ちを表すように空の月も一年で最も大きい満月となり、地上を明るく照らし出してくれます。

 実り多い収穫は、祖先から続く知恵の賜です。祖先がおり、今の我々がいる。儒教の伝統が未だに色濃く残る韓国社会では、時の流れの中で連綿として繋がっているのです。

 秋夕は、また祖先にその年の豊作を報告し、感謝する大事な日です。正月にも負けず劣らず大きなハレの祭祀なのです。普段は都市や田舎など、離れ離れの親兄弟、家族親戚が一堂に集まり、その年にできた新しい穀物でお酒を作り、新米でご飯を炊き、餅も作り、収穫された果物でお供え物をして、新しい服装で祀りやお墓参りをして祖先に感謝の祈りを捧げます。久しぶりの一族の団らんの時なのです。一族の紐帯を強く感じ、益々の結束を確認する機会なのかも分かりません。日本で、今は薄れて行く家族主義の良い面が、韓国では何時まで続いていくのでしょうか。


 秋夕には、日本では小さく真ん丸い餅を食べるようですが、韓国ではソンピョン(松片)、トランタン(上卵湯)、収穫された果物、ペスク(梨のデザート)、きのこ料理、タッチム(鶏蒸煮)などを賑やかに揃った家族で食べます。ソンピョンの中には、白小豆、新緑豆、大豆、ごま、栗などの餡(あん)を入れ、貝の形に作ります。形は地方によりいろいろ違いがありますが、きれいに良く出来れば、可愛い子供が産まれるとか、良い人と結婚できるなどの言い伝えも有ります。幼い時に妹たちといっしょにお互いにきれいに作ろうと飽きもせず自分なりの作品を作り、満足したりしたことを思い出します。作った餡餅を松の葉を敷いた蒸器で蒸すのでソンピョン(松餅)と言います。

 またこの時期に旬を迎える里芋でトランタン(里芋スープ)を良く作って食べます。里芋は栄養が有り、土の卵という意味で、土卵とか、またその葉が蓮の葉に似ているので、土蓮とも言います。固まりの肉を柔らかく良く煮込んで大根、里芋を加えてさらに良く煮込みます。肉と昆布のスープが里芋と程よくマッチし栄養を補給してくれます。

 昔、秋夕に男たちたはシルム(相撲)をして楽しみ、女たちは明るい月夜にカンガンスウルレを皆で丸く輪になって歌い踊り、秋の夜長を楽しみました。そんな風景は、今は見るのが難しいかも知れませんが、時代が変わっても秋夕の名節を過ごす気持ちは、違いが有りません。

 この時期、韓国政府も3日間の休日に定め、幹線道路には祖先のお墓参りや懐かしい親兄弟に会うために、お土産を手に故郷に帰る人たちが長く数珠繋ぎを作ります。愛する親兄弟家族に会いたい気持ちはどこも同じですが、何時までも大事にしたいですね。
   ◇
 キム・ユミ 韓国料理研究家。日本の素材に合い、日本料理の繊細さを取り入れた独特の調理法を研究。料理教室を主宰するかたわら、テレビ、雑誌、講演などで活躍。韓国料理研究院は大阪市北区天満1―3―3、天馬パークハウス801、電話・FAX06・6356・1600。

 <松餅の材料・作り方>

●材料
コメ5カップ/アズキ2カップ/ヨモギ若干/ナツメ10個/クリ10個/炒りゴマ1カップ/ごま油大さじ5/蜂蜜大さじ5/砂糖2分の1カップ/塩おおさじ1/松葉/食用色素若干
●作り方
①コメは水に浸して十分にふやかし、水気を抜いたあと、塩を加えて粉にしてからふるいにかける。
②アズキは水に浸してふやかしたあと、蒸し器に入れて砂糖を混ぜて20分ほど煮詰め、あんを作る。
③クリはゆでたあと、皮をむいてつぶす。
④ナツメは種を除いて千切りにする。
⑤以上のそれぞれに塩と蜂蜜を加え、混ぜて中味をつくる。
⑥炒りゴマをすり鉢に入れて粉にして中味をつくる。
⑦ヨモギはゆでたあと、水気を抜いて刻む。
⑧ふるいにかけたコメの粉を3等分し、食用色素を加え、もう一つにはゆでて刻んだヨモギを加える。残りの一つは白色そのまま熱い湯でそれぞれ粘りが出るまでこねる。
⑨こねたコメの粉を適当な大きさに分けて丸め、指先で伸ばして中身を詰め、口を閉じて餅の形を整える。
⑩蒸し器に松葉を敷いて蒸したあと、餅の表面にごま油を塗る。