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2000/09/01

<韓国文化>韓国映画を語る

韓国映画を語る 李鳳宇・シネカノン代表の講演から
輸出産業に育成へ

 先ごろ東京で開かれた「韓日文化産業投資説明会」で著名人が韓日交流ビジネスについて語る講演会が開かれた。このなかで、「韓国コンテンツビジネスがアジアのエンターテインメントシーンを変革する」と題した李鳳宇・シネカノン代表のトークショーの要旨を紹介する。李氏は日本で大ヒットした映画「シュリ」を配給したことで知られ、この日は韓国の映画産業の魅力や現状などついて語った。

 ――韓国映画との出合いと印象は。

 正直言って韓国映画は80年代中ごろまで見たことがなかった。当時、韓国映画は日本にたくさん紹介されてはいたが、自主上映というか、小さな映画館で、興業ではなく紹介しているいった感じだった。

 そういうところでたくさん韓国映画を見た。良質な映画がたくさんあったが、ジャンルが固定されていたのでビジネスになるものはなかった。

 ――ジャンルの固定とは。

 韓国映画は、最近は大きなスタジオができてスタジオで撮れるが、70年代から80年半ばまでは、スタジオがなかったためロードムービーが多かった。それにお決まりのテーマがあった。例えばば男と女が旅をしながら出会ったりとか、どこかたどり着くまでの話だ。
 ――「シュリ」との出合いは脚本からだったとか。

 韓国の映画会社関係者から大変面白い脚本があると聞いた。送ってもらって読んだら非常にリアルで面白かった。ただし当初は、アニメでは可能だが、韓国の製作陣では劇映画にはできないと思っていた。いまにして思えば間違っていたが、当時は韓国でこういうスケールのは映画つくられていなかったからだ。

 完成して99年の初めに韓国で公開され、すごい興業記録だということですぐに見に行った。

 ――「シュリ」の買い付けを決心した決め手は。

 よくできた映画ということだ。映画館で見たとき、座席の両サイドに座っていた女子高校生が号泣していた。号泣のステレオサラウンドみたいで、これはすごいなと思った。それだけ感動できるドラマはなかなか見当たらない。これはいけるな、というものがあった。

 ――あれだけの映画だから買い手側の競争があったと思うが。

 三星電子が製作費を出して海外セールスもやっていた。三星電子の人に聞いたら日本からも5,6社引き合いがあったという。当時の韓国映画の値段は20万から30万㌦。それまで一番評価された韓国映画は「風の丘を越えて」で、これが25万㌦という値段だった。三星電子から提案された値段はその4、5倍だったので、みんなは韓国映画はそんなに入るわけないよと敬遠したと思う。

 ――買い付けに成功したとき、客が入る自信がどれほどあったか。

 できるという自信と不安が半々だ。映画はそういうことの繰り返しだ。

 ――いま韓国映画が元気といわれているが、その理由はどこにあると思うか。

 一言でいえば面白いからだ。韓国映画が元気なのは、観客を意識してつくっているからだ。日本映画との違いはそこだと思う。韓国の映画館の観客層は若い人が圧倒的で、その20代、30代を対象にした映画づくりが行われている。その世代が見たいもの、見たい俳優、テーマでつくられている。観客も若いし、プロデューサーや製作スタッフも若く、観客を常に意識しているところが活力につながっていると思う。

 ――日本はうまくいっていないと感じるか。
 まったくうまくいっていない。日本の映画監督は職人ではなく一種の文化人。1本いい映画をつくると20年ぐらい監督といわれる。だからお客さんによって淘汰されたり検証されたりしていかない。支持されないと監督とはいえない。一部の評論家が支持していることで監督として生きている人が多い。そこが日本の映画産業が元気のない要因ではないか。

 ――「シュリ」ではすごいアクションシーンをうまく見せている。
 日本も韓国も貧乏な映画、泣かせる映画がうまいのが共通点。アクションは弱点だった。「シュリ」以降の韓国映画のアクションはリアリティーがある。

 ――心の奥底に潜む痛みの表現もうまかった。

 誤解を招く言い方かもしれないが、悲劇を抱えている国なので観客に与えるインパクトが強い。

 ――韓国では「シュリ」が経済効果も与えている。

 正確なところはわからないが、「シュリ」の製作費は2億6000万円といわれている。日本ではそんなに多いものではない。それだけの製作費であれだけのものをつくったことが一番大きなショックだった。

 「シュリ」が海外でも上映され、日本だけでも製作費分ぐらいの利益があった。韓国映画産業にとって大きな経済効果があった。自分たちの映画がこれだけ成功できる、これだけの製作費が回収できるといことから「シュリ」以降の映画は大作傾向にある。「シュリ」の製作費を超える映画が生まれている。

 ――「シュリ」以降、ヒット作も生まれている。

 韓国は100万人動員がヒットの基準になるが、それまでソウルで100人を動員したのは「風の丘を越えて」だった。「シュリ」はソウルだけで260万人動員した。「シュリ」以降、100万人突破映画は「ガソリンスタンド襲撃事件」などたくさん出てきた。今後は100万人が低いハードルになって200万人が壁になるのではないか。

 ――韓国の映画づくりの環境は。

 一般の大学に映画学科があり、映画を学ぶ若者は多い。映画会社もたくさんできている。プロダクションの規模も大きくなっている。例えば、「シュリ」のカン・ジェギュ監督の会社は初めて知ったときは10位以下の会社だったが、いまは80人ぐらいいる。新人スタッフを募集したら3000人ぐらい来たという。一種のコリアンドリームだ。

 ――韓国で受け入れやすい映画はどんなものか。

 ここ10年ぐらいはラブストーリー、いわば悲恋ものが基本になっている。韓国人は泣けるようなドラマが好きだ。「シュリ」でもそうだが、主流はメロ。泣くのが好きな民族だ。

 ――ヒット作が出てきたことで映画に投資しようという動きが起きているようだが。
 韓国ではネット関連企業がたくさんできて活況だが、インターネット関連のインフラは日本より進んでいるだろう。コンテンツを求めているので映画に対する投資は活発だ。カン・ジェギュ監督の会社も来年には上場する予定で、株価はかなり上がるのではないか。

 ――今後の韓国映画の可能性は。

 可能性はあると思う。金大中大統領もいっているように立派な産業として成長するだろう。輸出産業としても価値が高まっている。シュリ」は日本だけではなくスペインやイギリスでも公開されるが、欧米で韓国映画どれだけ受け入れられるか試金石になるだろう。

 今年日本で公開される韓国映画だけでも10本近くある。韓国で成功したものもあるし、海外の映画祭で賞を取ったものもある。日本で興行的に大ヒットしそうなものがある。日本でのマーケットは今後とも広がっていくだろう。