ここから本文です

2000/08/25

<韓国文化>読書

韓国戦争での出会い、人間的な視線で描く

「南のひと北のひと」

 著者は南北分断をテーマに作品を書き続けている韓国を代表する作家の一人だ。北朝鮮生まれ。1950年6月25日、高校3年の18歳の時に韓国戦争が勃発し、人民軍に動員され、韓国軍の捕虜となるまでの3カ月間、骨肉相食む悲劇の戦争を体験した。本書は、その少年時代の体験を下敷きにした長編小説であり、北朝鮮の高校生の目で当時の状況をつぶさに見据えた本は珍しい。
 物語は韓国戦争最中の南北が舞台だ。主人公は韓国から越北してきた義勇軍の指導係として動員された。人材不足のためだ。部隊は南進していくが、戦況は北朝鮮に不利になり、韓国軍の捕虜になる。そのような極限状況の中で出会った北朝鮮の人、韓国の人たちを淡々と描写している。
 北の人だからこうだ、南の人だからああだというイデオロギーを介したステレオタイプ的な人物描写は一切ない。北であり南であり、こういう人間もいればああいう人間もいるという、人物本位の目線で描いていてリアリティーがある。また、解放直後から何度か繰り返された越南、越北の事情もよく理解でき、1000万南北離散家族がなぜ発生したのかが分かる。
著者自身、離散家族であり、先の南北離散家族訪問団の随行員として平壌を訪れ、妹との50年ぶりの再開を果たした。だが、彼は日本紙とのインタビューで「98年の訪朝時に出会った女性背接待員とまた会った。彼女は私に冷麺のお代わりをサービスしてくれた。腹がいっぱいだったが、たいらげた。こうした人間的な交流を今は重視しなければならない」と述べている。必要性人間的な視線が全編にあふれた小説でもある。


韓国電子化の急進展、あらゆる面から迫る

「コリアン・ドリーム!」 「本とコンピュータ」編集室編

 技術先進国である日本は、IT(情報技術)でも世界の先頭(米国を除き)を走っていると錯覚している日本人が多い。しかし、韓国を見ると、実は日本はかなりの遅れをとっていることがわかる。つまり韓国では、インターネットをはじめとした情報通信に関してさまざまな取り組みがなされており、ビジネスまで生まれている。ベンチャー企業の隆盛はこうした背景がある。
 本書は韓国の出版と電子メディアについて、韓日の専門家による解説と現地ルポによって明らかにしたものだ。オンライン書店の誕生や新聞のオンライン版開設、歴史資料の電子化・ネット公開、インターネット人口の急増||など、急速な動きをとらえている。
 本書の執筆はこうした状況を背景に、韓日のメディア文化の隆盛と相互交流がかつてないほど活発になってきたことが動機だ。
 韓国の電子化が進んでいることは本書のデータでもそれがよくわかる。インターネット人口は昨年1000万人を突破(今年4月末で1456万人)、4人に一人がインターネットを使っていることになる。また、ドメイン登録件数は、米国に次いで韓国が2位(2000年1月現在)。さらには、世界100大サイトの中に韓国のサイトが11入っている(同5月、ちなみに日本は一つ)――といった具合だ。
 韓国のインターネット・ブームの背景として、政府の政策もあるが、韓国独特の文化現象とされる「PCバン(房)」の存在を本書では指摘している。また、執筆者の座談会で、「コンピュータへの入力が、日本語と違ってハングルは速いからデジタルの世界にすっと入っていける」という分析などは興味深い。
 韓日の交流はいまやネットビジネス分野まで及んでいる。世界のITを先導するなら韓日の協力は欠かせない、という声もある。本書は韓国の現状を知る上で格好書といえよう。「韓国は結構デジタル革命が進んでいるじゃないか」と、納得させる本である。

人に生きる意味教え、勇気与える半生記

「23歳の恋、49歳の成功」 ジョアン・リー著

 著者のジョアン・リーは、国際社会で活躍する韓国を代表するビジネスウーマンだ。
 77年に国際広報を行うサービス業「スターコミュニケーション」を設立。PATA(アジア太平洋地域観光協会)の韓国理事、国際ZONTA(女性専門管理職クラブ)アジア地域総裁などの要職を歴任した。
 ジョアン・リーはまた、23歳の時に49歳の米国人神父と結婚、世間を騒がせた。
 本書「23歳の恋、49歳の成功」は、彼女が結婚した23歳、そして当時の夫の年齢49歳になって明かした自己告白書である。
 45年、ソウル生まれのジョアン・リーは、中学3年生の時に4・19学生革命を経験して、「歴史の中の人間、社会の中の人間」に関心を持つ。
 西江大学入学後、同大学の創立者で初代学長のケネツ・エドワード・キロレン神父(韓国名・吉路連)と出会う。吉神父の純粋な人柄に触れ、いつしか「思いもよらない」ぐらい親しくなる。しかし、大学の学長でしかも神父が、一人の女子学生と親しくなることは許されることではなかった。
 大学側とカトリック教会を混乱の渦に巻き込んだ末に、吉神父は帰国を余儀なくされる。しかし、決してあきらめることのなかった二人は、ローマ教皇庁から結婚承諾書をもらってついに結婚、米国で家庭を築くことに成功するのである。
 第1部では、生い立ちから世間を騒がせた結婚まで、そして第2部では韓国に戻り、国際ビジネス界で成功するまでが描かれる。
 「愛においても、仕事においても、生きるとは結局は挑戦し、勝ち取ることだ」というジョアン・リーのメッセージは、読者に多くの勇気を与えてくれる。韓国では65万部を超えるベストセラーとなった。