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2000/07/21

<韓国文化>劇団影ぼうし  韓国との交流深める

 国内はもとより積極的な海外公演も行っている劇団影法師(本部・東京都武蔵野市、山崎靖明代表)が韓国との交流に力を入れている。来年の2月から3月にかけて、韓国、中国の劇団と共同制作した児童劇のアジアツアーを行うほか、今年8月には影絵「竹取物語」を韓国3都市で公演する。


 「西遊記」を韓中の劇団と共同制作

 劇団影法師が中心となって共同制作しアジアツアーを行うのは西遊記を翻案した児童劇「GOKU 悟空――新たなる旅立ち」。同劇団の香港公演を見た香港芸術節協会から共同制作が持ち掛けられ、ソウルの「劇団ジョイフルシアター」、香港の「中英劇団」、中国の「北京市児童芸術劇団」が参加することになった。

 脚本は鐘下辰男(演劇企画集団THEガジラ)、演出は鵜山仁(文学座)で、演出補や衣装、プロデューサーに各国の関係者が加わる。キャストは韓国3人、日本4人、中国9人の計16人。肌合いの違う一行が旅の途中でさまざまな民族に出会うという物語のため、各国の俳優はそれぞれの国の言葉で話し、字幕は使わない。

 各国の出演者らは6月26日から1週間、東京に集合しワークショップを開催。脚本の完成は8月末、けいこは12月10日から始まる。

 同劇は2001年1月26、27日の東京芸術劇場を皮切りに3月まで、香港、北京、上海、シンガポール、ソウルの各都市で公演する。ソウル公演は最終公演となり、3月24日から26日まで、湖巌アートホールで行われる。

 演出の鵜山は、「今回、東アジアのシルクロードの東のはずれから、中韓日の合同プロジェクトを発信するという刺激的な企画が持ち上がった。西遊記の物語がまた生まれ変わって、21世紀の東アジアの夢となる。顔かたちも、出自、使う言葉もまったく異なる演劇人たちが足並みをそろえて、新しい世紀の文化交流の新たな1歩を踏み出す、そんな冒険をぼくもいまから心待ちにしている」と語っている。

 韓国の3都市で「竹取物語」公演

 一方、劇団影法師は、日本最古の純文学を影絵にした「竹取物語」を8月10日から28日まで、全羅北道・益山、ソウル(国立劇場)、釜山(文化芸術会館)の3都市で公演する。益山公演は、益山フェスティバルの正式特別招待公演となる。
 「竹取物語」は、日本独自の美しい色彩の影絵手法を駆使し、平面的な影絵に俳優などの前芝居を加えた立体的な作品。海外では92年にロシアで初演、米国、香港などでも公演した。
 韓国公演は俳優24人、スタッフ10人の計34人で編成、韓国人俳優の録音による韓国語で行うほか、韓国人俳優二人が出演する合同公演になる。

 同劇団は、「日本の古典が韓国で受け入れられるかどうかわからないが、成功すれば新たな公演を企画したい」と話している。

 友情結ぶ機会に  山崎靖明・劇団影ぼうし代表の話

 劇団影法師は、日中合作大型人形劇「三国志」ワールドツアー(米国、カナダ、メキシコ、韓国、中国)の一環として、今年2月にソウル公演を実施した。その興奮も冷めぬうちにスーパーカゲエ「竹取物語」韓国ツアーを実施できることを大変光栄に思う。

 「竹取物語」は、すべての日本人が幼いころから親しんでいる物語で、親子の情や、月へのあこがれ、竹林の美など、日本人の心情を表すモチーフで彩られる。この日本最古のSFファンタジーともいえる題材を、劇団影法師独自の影絵に人形劇などさまざまな表現を取り入れたスケールの大きな舞台で、子供から大人まで多くの皆さんに楽しんでいただけるよう制作した。

 このツアーが、日本文化を紹介するにとどまらず、日本と韓国の国民が互いの文化への理解を深め、友情を結ぶよい機会になるようここから願っている。

 ●あらすじ
 「GOKU 悟空――新たなる旅立ち」 三蔵法師と悟空一行が通天河という大河のほとりにさしかかる。渡ることができずに途方にくれ一夜の宿を請う。宿の主は子供たちを食べる「霊感大王」の物語を語る。悟空と八戎は子供たちの身代わりを買って出る||というのがあらすじ。

 まだ見ぬ異郷へのあこがれ、新しいコミュニケーションの希求、異なる文化への恐怖と期待、力を合わせて困難を乗り越えることのすばらしさなど、さまざまなテーマが凝縮されている。言葉を越えたアンサンブルによって物語が繰り広げられる。

 ◆劇団影法師 78年設立。俳優・スタッフ・職員約80人。児童青少年のための演劇教育普及から一般を対象とした公演まで、毎年約800ステージにおよぶ公演を日本全国で展開。88年から国際室を設置し、国際交流・国際共同制作事業を開始。韓国語、英語、中国語、ロシア語、スペイン語各圏の専従職員が海外芸術団体との制作任務に就き、ワールドツアーや海外派遣、招へい公演、国際共同制作などを手掛けてきた。

 ◆劇団ジョイフルシアター 92年に仁川で旗揚げした韓国を代表する劇団の一つ。95年にソウルに拠点を移し、活動を全国に展開。常に芸術性の高い公演をめざし、情操教育に寄与する児童少年のための公演から、観客と俳優が一体となる参加型公演など、多岐にわたる公演を精力的に実践。