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2001/11/09

<韓国文化>鳥類研究と自然保護に半生捧ぐ

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      第7回韓日国際環境賞の授賞式(左から2人目が元・名誉教授)

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    元・名誉教授は野鳥保護に半生をかけて取り組んだ(写真はシベリアで繁殖し、韓国、中国を中継地にして日本に渡来するナベヅル=日本野鳥の会提供)

 韓国鳥類学者の第一人者である元ビョンオ・慶煕大学名誉教授(左から2人目)がこのほど、地球環境保全に貢献した人に贈られる韓日国際環境賞を受賞した。元名誉教授は鳥獣保護に長年尽力し、自然保護、環境保全の分野で多くの専門家を育てたことが高く評価されたものだ。

 韓国の「鳥の父」と呼ばれる元・名誉教授は、現在の北朝鮮にある平安南道の出身だ。父親の元洪九さんが鳥類学者で、研究のために鳥類の標本4000点余りを収集していた。この父の姿が元・名誉教授が鳥に興味を持つきっかけとなった。

 韓国戦争で父子は生き別れになり、元・名誉教授は韓国に逃れて鳥研究に打ち込んだ。

 本格的に研究を開始した50年代末から40数年以上、鳥類を研究しながら、韓国全土を20回以上歩き、450種類の鳥類の生息を確認した。

 新発見した鳥類は約50種、越冬実態を改名した鳥は60種以上になる。湿地、鳥類、樹木など300件が天然記念物に指定されるよう政府に助言もしてきた。発表した論文は約150編、学術書は17冊刊行している。

 1964年、足輪をつけたムクドリを北朝鮮に向けて放し、この鳥を父が偶然発見した。その後、日本とロシアの研究者を介してお互いに無事を確認した逸話は、あまりにも有名だ。その父は70年に北朝鮮で亡くなったが、この話は後に「アリランの青い鳥」というタイトルで日本でも出版され、92年には「バード」というタイトルで北で映画化された。

 慶煕大学を94年に退官した後は著作執筆、講演会、環境保護に積極的に取り組んでいる。特に生態系の保護は急を要する課題としている。


元・名誉教授の話

 世界の鳥類は9700種以上いる。これがすべて消えてしまうほど荒れた大地になったら、どんな生物が生き残れるだろうか。

 鳥をきちんと保護することが出来れば、ほかの生き物や生態系も守ることができる。鳥類研究は鳥のためだけでなく、人間の豊かな生活を守るためにある。

 環境問題に関心を持つ企業も増えたが、知識不足が問題だ。環境の復元を図るには自然生態系を知らなければならず、その基礎となるのは鳥や動物への知識だ。

 いま30人ほど弟子がおり後継者育成に力を入れているが、成長はまだまだ。一日でも長く教育を続けたい。

 日本で在日学生に講演したことがあるが、みな真剣に話を聞いてくれた。在日青年で鳥類研究に携わる人も出てきてほしい。


  ウォン・ビョンオ 1929年生まれ。50年元山農大、59年慶熙大生物学科卒、61年農学博士(北海道大学)。慶熙大韓国鳥類研究所長、同生物科教授、国際鳥類学会理事などを歴任。現在、慶熙大学名誉教授。著書に「韓国鳥類分布目録」「韓国天然記念物(鳥類編)」など