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2001/09/28

<韓国文化>秋夕 先祖の墓参りをし松片つくって食す

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 9月30日は、韓国でもっともたいせつな祝祭日の一つ「秋夕(チュソク=旧盆)」だ。各家庭では故郷に帰って先祖の墓参りを行い、ごちそうを食べる。料理研究家の高根恵子さんに、秋夕の話と代表料理の一つ「松片(ソンピョン)」について寄稿してもらった。

 秋夕(チュソク)が一年の中でお正月に次ぐ大きな行事である事を今回、韓国を旅行して改めて感じた。

 これまで私の中で秋夕(チュソク)は、6~7年前いつも行く焼肉屋さんのハルモニに初めて食べさせていただいた時に『松片(ソンピョン)』という餅菓子がある事を知り、その後本を見て調べ、作ったり、いろんな方からお話を聞くうちに旧暦の8月15日を秋夕(チュソク)と呼び、日本で言えばお盆あたりその年に収穫された新米で松片を作り、祖先に収穫の感謝を込めて御供えする…という位にしか知らなかった。

 ソウル市内では、多くの店が秋夕仕様であった。専門店のみならずコンビニエンスストアでさえいつもならイートインのスペースや雑誌が並ぶ入り口付近に手頃な食品の詰め合わせ、洗剤など日用品の詰め合わせ、高級な高麗人参茶の詰め合わせなどが包装済みで積み上げられている。

 デパートなどは更にすごく、さながら日本の御中元、御歳暮コーナーが各階の全ての商品ごとにあるようなのだ。

 聞けば、秋夕には子供や家族皆に新しい衣類を購入し、それを着てたくさんのお土産やお金を持って田舎の親元へ挨拶に行きお墓参りをするとのこと。

 秋夕の食卓はやはり地域差があり、各家庭の用意の仕方が違う。ここにも先ほどの贈り物が登場し、手頃なものでは梨などの果物各種、高価なものでは干しイシモチ(クルビ)も焼き物や和え物に調理され食卓を飾る。もちろん松片も欠かせない。

 各家庭で作られるほかに街のお餅屋さん、デパート地下の食品売り場、市場でも数えきれない程色々なタイプのパック、箱、カゴ入りなどが売られている。ほとんどがお餅部分が白いもの、ヨモギ入りの緑のもの、食紅で淡いピンクに染められたものなど。中にはその年とれたての栗、なつめ、ごま、小豆、白いんげん豆などから作られたあんが入る。

 秋夕の朝食にはこの松片と共に里芋のスープ(トランクッ)が出される。昼食、夕食にはこれらの他に牛肉とわけぎの串焼き(サンジョック)や韓国かぼちゃと白身魚の煎(ジョン)、イシモチの薬味醤油焼き(チョギヤンニョムジャンクイ)など作られる。

 これまで松片は何度も作ってきたが、作る度に思い出されるのは韓国料理を学び始めた頃、朝鮮半島の生活と日本での生活の両面から「食」についてお話を伺った金斗来(キム・トゥレイ)さんの事である。

 斗来さんは慶尚北道大邱郊外の農村生まれでお話を伺った当時は85歳であったがとてもお元気で、子供時代の自給自足に近い農村のとても満ち足りた生活と、その後、その豊かで楽しい生活を踏みにじった日本の植民地支配時代の食の話が象徴的だった。

 日本に渡ってきてからの生きるためのぎりぎりの食の中、「なぁんにもなくてもさ、お粥さんだけでもお供えして、祭祀(チェサ)はしたんだよ」など など、幾つものお話が忘れられない。

 知り合った翌年、喘息発作のため86歳で急逝されたが、日本人の一人である私にとても暖かいはげましを下さった斗来さんの「がんばってね」が今でも私の胸に響いて、治療
食研究の支えとなっている。