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2001/03/02

<韓国文化>読書

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韓国IT革命の勝利  河 信基著

急成長の戦略を説き、日本との違い明かす

 インターネットでは韓国が日本より1、2年先に行っているということをよく聞く。それを裏付けるけるかのように、ネット関連の韓国ベンチャー企業の日本進出が相次いでいる。技術力を生かしビジネスチャンスを狙おうというものだ。

 本書は98年のIMF不況を乗り切り、インターネット先進国に急成長した韓国の戦略を分かりやすく解説した本だ。インターネットの何が日本より進んでいるのか、なぜ日本は遅れをとったのか、疑問点が次々と明らかにさてれていく。日本IT革命への警鐘の書でもある。

 韓国のインターネット利用料は接続料、通信料すべて込みの定額制であり、日本円にして月額2000円である。時間制限のない1日24時間つなぎっぱなしで日本円にして月額2000円である。日本では毎日5時間使えば負担は悦額20万円近くになる。
 韓国では2人に1人がインターネットを利用しており、一日の利用時間も長い。今年からは小学校にもインターネット教育が実施され、インターネットができなければ宿題ができなくなる。日本の現状と比べると大きな違いだ。

 このような韓日インターネット事情の違いを列挙しながら、話は国家戦略にまで発展する。
金大中大統領は98年の就任早々、IT・インターネットを国家発展のため活用しようと考え、インターネットの普及を妨げる規制や障害を果敢に除去した。昨年からは知識基盤社会というスローガンのもと、さらに拍車をかけている。本書はそれを「知識情報強国」とネーミング、その足取りを詳述している。この政府の取り組みが日本との決定的な違いであり、韓国に張り巡らしたネット網が北朝鮮をも視野に入れ南北統一促進に大きく役立つだろうと結論づけている。インターネットに関心のある方は一読に値する。


第四の選択 韓国系日本人  河 炳旭著

民族性堅持しつつ日本国籍の取得を

 在日外国人の地方参政権問題が論議される中、与党3党による特別永住者への国籍取得緩和法案が提出され、在日社会でも大きな関心を呼んでいる。

 本書は、民団京都団長、民団中央本部顧問などを歴任し、人権問題に取り組んできた著者が、長年の経験から、国籍問題を軸に日本社会で在日韓国人がどのように生きていくのが望ましいかについて提言した書である。

 世界には7302万人の韓民族がおり、そのうち522万人が米国、中国、日本など海外に居住している。多くの在外同胞が、居住国の国籍を取得して生活しているのに対し、在日韓国人は歴史的背景から日本国籍取得に頑強に反対し続けてきた。

 著者は、国際化が進み、外国人が増えたため、日本社会も従来の他民族に対する排他的な姿勢を転換し、多民族共生社会に移行せざるをえない状況にあると指摘し、在日も米国や中国の同胞のように居住国の国籍を取得して生きるのが自然だと提言する。ただし、同化されることなく、民族性を堅持して生きなければならないと強調、それには民族名(韓国名)で日本国籍を取得し、「韓国系日本人」として生きることが大事だとしている。

 また、在日はサンフランシスコ講和条約で一方的に日本国籍を剥奪されたもので、当然の権利として国籍取得は申告制とすべきだと主張する。

 本書では、韓国名を名乗り日本国籍で活躍するソフトバンク社長・孫正義氏、薩摩焼の沈寿官氏らの生きざまを紹介。さらに世界中でたくましく生きる韓民族の姿を国別に詳しく報じており、韓民族の実態を知る格好の資料ともなっている。


角が立つ韓国人 丸くおさめる日本人  王 秀英著

日常の一コマに見る韓日の比較文化論

 韓国人と日本人は似ているようで違う。だから摩擦が起きる。本書の表題も違いの典型だろう。日本で暮らす韓国人が、日常の経験の中から韓日の違いを明らかにした、いわば比較文化論集だ。といっても堅苦しい本ではない。エッセイ風にまとめられた内容は、なるほどと思ったり、ほろりとさせられたり、気楽に読める。

 著者は1937年に釜山に生まれた韓国では著名な女流詩人だ。女性雑誌の駐日特派員として77年に来日、フリーになってからも日本に住んでいる。日本人なら何げない日常生活でも、外国人が暮らすとなると文化や習慣、価値観の違いから毎日が“衝突”の連続だろう。そうした日常の一こまを切り取って韓日の違いを浮き彫りにしている。

 37の興味深い経験がユーモアたっぷりに紹介されているが、最初のタイトルは「家族にしてくれたヤクザ」。ヤクザの家庭に間借りする話しで、のっけから波乱の滞日生活を予感させる。

 しかし、韓国女性特有のバイタリティーとまっすぐな物言いで、最初は日本人と衝突したりイライラしながらも、日本(人)を理解してその社会に溶け込み、信頼を得ていく。

 一時帰国して日本に帰ってきたとき、近所の人から「お帰りなさい」といわれて喜ぶ著者。いわば日本が第2の故郷になった。といっても、日本人におもねることなく、韓国人として誇りを持って生活する著者の生き方は実にすがすがしい。

 韓国(人)と日本(人)はやっぱり違うが、付き合えばわかり合える、ということを改めて納得させてくれる本だ。