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2001/02/16

<韓国文化>在日韓国人文化芸術協会 金好植・新会長に聞く

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    キム・ホシク(おか・ひろし) 1941年東京生まれ。日本大学芸術学部卒。74年に結成した「クリアトーンズ・オーケストラ」のバンドマスター。千秋企画、クリア・ミュージック・パブリッシャーズ社長。日本作曲家協会会員、日韓芸協会常任理事。妻は歌手の金蓮子。

在日韓国人文化芸術協会 金好植・新会長に聞く

 日本社会との懸け橋に
 幅広い人が参加できる団体目指す

 在日社会の発展を文化・芸術面から支えようと活動を行っている在日韓国人文化芸術協会の新会長に金好植(岡宏)氏がこのほど就任した。同協会は1982年に設立され、資金難に悩みながらも19年間、活動を続けてきた。金新会長は、協会の事業にもっと幅広い人が参加できるよう力を尽くしたい、と意欲的だ。今後の協会運営について聞いた。

 ――在日の文化をどう考えるか。

 一口にいって、埋もれている文化だと思う。ぼくみたいに通名で活動している人や、隠している人、帰化した人が一歩下がったところで活動している。ただ、最近は埋もれた文化が動き出してきたかな、という感じはしている。だからそういう人たちに幅広く声をかけて、輪をつくりたいと思う。

 在日文化人といってもさまざまで、伝統文化を継承している人、日本にやってきて新たなものに取り組んでいる人、日本のいいものを取り入れながらやっている人もいる。そういう同じ血が流れている人がひとつにまとまって、文化をつくりたい。

 ――ひとつにまとまる意義は。

 例えば、韓日の行事で韓国代表という形で参加しなければならない場合がある。それに恥ずかしくないものを出すための準備をしておかなければならない。われわれがそこで役割を果たすことができる。そこに意義を感じる。しかし、はっきりいってまだ出せるものがあまりない。

 ――本国と在日の文化の違いは。

 在日はミックスされた文化だ。在日の文化人はすべての情報を自由に受け入れたため、比較的幅広い文化観を持っている。規制のなかでやってきた韓国の文化人より在日の方が広い視野を持っているように思う。ただ、いまは本国も情報が入っているから急激に変わっている。

 ――文芸協会員にはあらゆる分野の文化人がいる。ひとつの方向をどうやって見出すのか。

 ライオンズクラブやロータリークラブと同じで、意識を持つことが大事だ。みんな組織に入りたくないという独立人だから、確かにまとめるのは難しいだろうが、みんなで手を取り合って行こうよ、という意識の確認をまず手がけたい。

 ――前会長(河正雄氏)は、文芸協の活動によって在日と日本人、在日と本国、日本と韓国の橋渡しをしたいと常々いっていたが。

 そう思う。在日の役割は重要だ。われわれは日本の中にいる韓国人として、日本人と、あるいは本国人との間に入って果たせる役割がある。

 いま考えていることは、文芸協がこれまで3回公演した「アリランの旅人」を、もっとプロフェッショナル的な作り方をして、全国行脚をしたいということだ。民団の地方本部の協力を得て場所を確保して進めたい。

 公演では徐々に収益もあげたいと考えている。寄付だけに頼らず基金をプールし活動資金にしたい。自分たちの力でできるところまではやりたい。

 ――それ相応のレベルでなければ収益は難しい。

 在日の文化人はジャンルによって格差がある。画家や小説家には飛び抜けてレベルの高い人はいるが、芸能になるとまだまだだ。「アリランの旅人」のように韓国人の内面の心を知ってもらうショーをつくるにはまだ役者不足だ。

 役者不足というのは経験が不足しているということだ。活動の場所をつくってあげ、何回もこなしていかないと本物に育っていかない。だから全国行脚をして、帰ってきたときにはきちっとなっているくらいのものをつくりたい。総連系の金剛山歌劇団までは無理だが、ああいった形をつくりたい。

 3、4世の時代になって民族意識が薄れつつあるなかで、こうした公演は民族意識を高めることにもなる。日本人に対しては、「アリラン」を通じて韓国、韓国人を知ってもらうことができる。

 ――会員は現在、60人ということだが増やす方法は。

 潜在会員は何百人といるはずだ。そういう人たちの参加意思を確認して、ちゃんとした組織をつくりたい。団結しないと対外的に声を出せない。そうなれば賛同して入ってくる人も出てくる。文学など日本の中で認められている人は、講演会などを開いて取り込んでいけたらと思う。

 いろんなジャンルの人がいるから、ゆくゆくは会員の個々の活動を、物心両面で支援できるようにしたい。また、将来は、大阪など全国の主要都市に支部もつくりたい。

 ――会の名称の変更を会長就任の条件にしているが。

 もっとたくさんの人が催しに参加してもらえるような名称にすることを、真剣に考えなければいけないと思う。「在日韓国人の会」というだけで総連系の人は参加しないし、ニューカマーも足を運びにくい。「コリアン」などの名称を使ってもいいと思う。こだわる必要ないと思う。回りの意見を聞きながら決めたいと思う。

 ――文芸協の役割をどう考えるか。

 ぼくがいつもいっているように、文化は余裕のあるところに生まれ、文化は余裕を生む。在日に余裕が生まれるような活動をしたい。みんなが団結してそれなりの活動をすれば、世間は認知してくれる。そうなれば活動もやりやすくなるだろう。在日文化のつぼみがつくよう頑張りたい。