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2002/11/15

<韓国文化>近代工芸技術 アジアで発展

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                   市村 禮子さん

 韓国、日本、台湾の金工・ジュエリー作家による合同展『隠された思い-三国女性メタルアーティスト創作巡回展』が17日まで、東京・銀座のポーラ・ミュージアム・アネックスで開催中。同展は12月にソウル、来年1月には韓国のハワイ移民百周年記念イベントとしてハワイで展示を行う予定。日本側の代表を務める日本アート・ジュエリー交流会代表の市村禮子さんに話を聞いた。

 メタルアートとは本来金工、金属に細工を施す美術工芸をいい、その基本は鍛金。今回の展示品にはジュエリーなどの装飾品が多いが、それらは本来の金工から派生してきたものだ。また最近は金属のみならず、漆、紙、木、布など様々な材料を工夫して取り入れている。メタルにとらわれないメタルアートというのが、最近の傾向だ。

 私が韓国を初めて訪れたのは1986年。そのとき韓国について感じた第一印象は、〝金属の国〟だということだった。箸や器なども金属を使っている。長い象牙の箸を使う中国や木の箸の日本とも違う。それに衝撃を受けた。

 韓国の知人が還暦のお祝いなので何を贈ったらよいかと韓国の人に聞いたら、金製品それも純金製品がよいと言われたこともある。韓国には日常に金属がある。韓国の打楽器も金属製だ。

 日本の太鼓は木に革を張ったものが多い。また、先日訪韓したときに気が付いたのは、韓国では大体の大学に金工学部があるということ。これも日本と大いに違っている。韓国にとって金属は欠かすことのできない材料と言える。

 今回の展覧会のきっかけは、韓国では2000年、日本では2001年に開催された「日韓女性ジュエリー金属芸術家展」にさかのぼる。

 そして日韓巡回展のそもそもの発端は梨花金工作家協会会長の金弘子さんと私が米インディアナ大学の金属工芸科で同じ教授の下で学んだ同窓の縁だった。

 梨花金工作家協会では2年に1度国際交流展を行っていて、隣国の日本に白羽の矢が立った。2001年2月の東京での巡回展は、ちょうどJR大久保駅で韓国人留学生の李秀賢さんがホームに転落した人を助けようとして亡くなった事件の直後ということで、日韓交流を盛り上げようとの思いが強くなった。

 金弘子さんが昨年台湾に招かれた際、国立台南芸術学院助教授の王梅珍さんと知り合い、彼女も米国で学んだという共通点もあって、今回は台湾も加えて三国の巡回展をしようという話しになった。

 3カ国の金工作品に民族性の違いが顕著に現れているとは思わないが、ほんのりと匂う部分はやはりある。例えばワイヤーを編んだ作品は台湾に伝わる伝統工芸品に通じ、韓国はヒスイなどの素材を使うことも多い。

 今後の交流について具体的なことは決めていないが、各国の作家たちはこういった交流の意義を認めており、アジアを中心により大きな規模で続けていきたいし、広がる可能性は大いにある。


  いちむら・れいこ 1965年京都市立美術大学卒業。68年インディアナ大学大学院卒業。72年東京芸大大学院修了。65~66年インディアナ大学招聘講師。