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2002/05/10

<韓国文化>アジア最大の現代美術の祭典

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                     河 正雄さん

 現代美術の祭典「第4回光州ビエンナーレ」が、6月29日まで光州市内で開催中だ。
在日2世の立場で同展に長年協力してきた、河正雄・光州市立美術館名誉館長の寄稿「省察と飛躍・第4回2002光州ビエンナーレに寄せて」を紹介する。

 アジア最大規模の現代芸術の祭典、第4回2002光州ビエンナーレが韓国光州広域市で開催されている。

 プロジェクト・1のテーマは慌ただしい現代社会の流れの中で混沌と不条理、矛盾を省察する「止まれ」である。一時停止(単純な停止でなく)で過去を「振り返り」新たなるスタート、跳躍のために休息、充電し思索を呼びかける「止まれ」である。光州ビエンナーレは「境界を越えて」「地球の余白」「人+間」というテーマで回を重ねてきたが、この度は光州ビエンナーレ自体をも省察し跳躍しようという意志が込められている。芸術監督、成完慶氏と各プロジェクトのキュレーターが巧みに計算した好企画で説得力のある展示となった。

 プロジェクト・2は「韓国人の離散」がテーマである。在外に居住する韓国人は600万人にもなる。分断と韓国の近代史の断面と結びつけ、多様で混成的な営みの中で民族の同一性とそれらの文化を見つめ直してみようというものである。在日の作家(蔡峻、盧興錫、朴一南、金暎淑、金誠民、尹熙倉)の6名が参加されているコーナーでは身近なものを感じ頼もしくなる。特に蔡峻の1997年作「故郷を捨てて」には在日1世の苦節の想いが滲んで共感を呼ぶ。

 プロジェクト・3は「執行猶予」。1980年に起こった光州民主抗争運動(光州事件)を軍隊が鎮圧、その憲兵隊兵舎を保存している5・18自由公園が会場。旧尚武台軍事法廷や監獄、食堂、浴室など寒々とし生々しい歴史の現場は韓国民主主義について若い世代のために歴史的な想像力を換気し余りある展示である。私はその展示場で凍り硬くなった心と体を元に戻すために長い時間がかかった。その刺激的な現場で「止まれ」の明確なる意図を見た。

 プロジェクト・4は市内の旧湖南線南光州駅の鉄道廃線跡地が会場である。アートと都市の新しい出合いがそこにはあった。光州の未来にアートの介入と参加を能動的な姿勢で促している。全体的に言えることだがもう1つのテーマは「市民の中に入ろう」である。市民が積極的に参加し共有する。市民参加型の「光州ビエンナーレ」を創造しようとしていることだ。

 また光州市立美術館では記念特別展として「韓日現代美術50年の礎・郭仁植の世界―河正雄コレクションを中心として」が開かれている。韓日で現代美術史に残る活躍をした郭仁植の業績を回顧する展示は美術史上、これがはじめてである。韓日間の美術界に新鮮なる記憶を刻み込んだ意味深い展示である。

 前回はアジア中心の展示がなされ日本作家の参加も多かったが今回は少ないように思えることが私としては物足りない。光州ビエンナーレの歩みは未だ混沌とし試行錯誤しながら明確なる道筋が見えてこないという批評もある。

 「難解で独りよがりの作品は面白くない。どこかの展示会で見たような作品はもう見飽きた。見て楽しい、いうなれば単純明快な美しさに感動するビエンナーレが見たいものだ。」私の尊敬する元老彫刻家はそう感想を述べた。

 しかし連日押し寄せる若者達はそれを頓着無く受け入れているようで今風のテクノロジーアートを楽しみ好奇心を満たしている。世代、世界観の違いなど多面的な事柄を考慮するに、評はなかなかに難しいようだ。しかし創設した際の初心である「征治、宗教、理念を超えて人類が一つになろう。

 東西洋平等の歴史創造とアジア文化の能動的な発芽のために美術の水準を高める世界的な美術展にしよう」という矜持、情熱と意気を胸に更なる前進を望みたい。

 我々もまた、世界の「光州ビエンナーレ」に育み定着するよう、ともに歩み寄与していこうではないか。