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2002/04/12

<韓国文化>書評

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「韓国経済ハンドブック」 辺真一・許仁成共著

 韓国経済は、97年末の通貨危機による経済難を矢継ぎ早の改革で乗り切り、再び成長軌道を回復しつつあり、今年のGDP成長率は4・0%を超える見通しだ。

 世界的な経済のブロック化が進む中、韓国と日本は、今後のアジア経済を担う重要なパートナーとして位置付けられており、W杯共催をきっかけに両国の関係はさらに深まると期待されている。

 本書は、「漢江の軌跡」とうたわれた脅威の高度成長から、IMF危機に陥り、国を挙げた構造調整でそれを克服した現在までの韓国経済の発展の軌跡を検証しつつ、韓国経済の実力、潜在力に迫る。

 GDP成長率、為替レート、金利などの推移をグラフや表をふんだんに使って解説してある。

 韓国の経済指標がひと目でわかり、まさに「韓国経済ハンドブック」の名にふさわしい。

 また、第2編で北朝鮮を取り上げ、経済の概要、今後の展望、主要経済統計、南北経済交流の実態、朝日貿易の現況などについて詳しく紹介しており、闇に包まれている北朝鮮経済の実態を知る格好の資料となるだろう。

 北朝鮮は、慢性的な経済破たん状態からの脱却を図るため、経済特区を設けて韓国など海外から企業誘致に力を注いでおり、今後の朝米・朝日対話進展など政治的緊張緩和が実現すれば、経済交流に火がつくことになる。

 本書は、こういった経済情勢の変化に対応していくための基礎資料としても大いに役立つ。
(全日出版、四六判、272ページ、1800円)


「韓国と日本、二つの祖国を生きる」 河正雄著

 在日2世の河正雄氏は、在日の美術活動支援に尽力し、また在日としての思いを韓国に伝えるべく、さまざまな文化活動に取り組む。その間の想いをつづったエッセイをまとめたのが本書である。

 「在日」の生きざまを韓国と日本に一番理解してほしいという著者の願いがにじみ出た本だ。

 第1部「父祖の地 光州」は、父母の故郷・光州に作られた市立美術館に在日作家6人の作品212点を寄贈して、館内に『河正雄コレクション』が設けられるようになった経緯、95年に始まった現代美術の祭典「光州ビエンナーレ」で秋田の「わらび座」公演を実現させた話などが紹介されている。

 劇団わらび座は、東北の民俗芸能を掘りおこしている劇団で、朝鮮人強制連行問題への関心も高い。

 同劇団の韓国公演を実現することは、韓国・日本という「二つの祖国」のかけはしになると、河氏が熱望してきたものである。
 第2部「私の清里」では、朝鮮に愛された日本人・浅川巧の生涯を紹介。第3部「結ぶ縁」では、秋田・田沢湖周辺での朝鮮人強制連行による犠牲者や無縁仏を一人探し続けていた話、広島原爆慰霊祭を訪ねた時の思い出が語られる。

 そして第4部「追憶」では、祈りの芸術と評価される全和凰画伯ら画像の生涯を通して、不幸な祖国の近現代史と在日韓国人の生の痛みについて述べている。

 「過去の目に見えない対立と葛藤を、芸術を通じて解いていこう。政治・宗教・理念を越えて人類が一つになろう」という光州ビエンナーレの精神を、自らのものとして受けとめ、奮闘してきた河氏の熱意が随所で伝わる。
(明石書店、四六判、228㌻、2000円)