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2002/03/08

<韓国文化>東京など4都市で「韓国大衆文化展」

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            工事現場の看板。「墜落注意!」とある

 映画、音楽、ファッション、料理など、これまであまり紹介されてこなかった韓国の大衆文化が、急速に日本のメディアにも登場するようになってきた。2002年W杯韓日共催の年を迎えた今年、視覚芸術の観点からそれらにアプローチする「韓国大衆文化展」が、朝日新聞社、世田谷美術館、福岡アジア美術館ほかの主催で、1年かけて全国4都市で開かれる。

 従来韓日で開催されてきた展覧会は、陶磁器などの古典的な文物か、先端的な現代美術に傾きがち。韓国社会の中に息づいている「大衆文化」が紹介されていない。そういう美術館関係者の疑問から、「韓国大衆文化展」が企画された。

 現代の都市文化には、既成の「文化」や「美術」の枠に収まりきらない面白さがあふれている。その中から、韓国の現在を伝える多彩なモノたちを集めよう。韓国側主催者である省谷美術館の協力で、約2年の準備期間を経て今回の美術展が実現した。

 大衆文化という、日々変わりゆくとりとめのない対象に切り込むため、「メディア」というテーマを設定が設定された。

 巨大なビビンバのオブジェがまず目を引く。器の中には雑誌、TV、ポスター、携帯電話──現代を象徴するガジェット(小物)たちが山盛り。韓国文化を理解するキーワードは「フュージョン」(融合)という、李御寧教授(『縮み志向の日本人』著者)のアドバイスを象徴するインスタレーションだ。

 展示はテレビ、映画などの映像メディア、新聞、雑誌、ポスターなどの印刷メディア、看板を始めとするストリートメディア、ファッション、儀式というメディア別にコーナーを作り、それぞれ工夫して立体的に行われる。

 「民防衛訓練」の政府広報ニュースから、ワイドショーまで。火災予防のポスターからスポーツ新聞。「工事中」の看板、洗剤のパッケージ。おもちゃ箱をひっくり返したような混乱と、原色の色彩の乱舞は、「似ているけれども違う」韓国社会を感じさせてくれる。

 「韓国人の涙であり、歌であり、喜びであり、愛である大衆文化」「大衆文化は自分たちの時代の精神を表す。……時代とともに変わる可変性を持ちながら生きている生命体である」。同展のカタログに文章を寄せた作家で、世宗大学教授の韓水山氏の言葉だ。

 韓国の「いま」を浮き彫りにすると同時に、ふりかえって現代の日本人の価値観やライフスタイルを外からの眼差しで検証したい。「それ自体で完結した純粋な文化など存在しない。文化の豊かさとは、他の文化との不断の相互作用による変容の積み重ね。今回の企画が、日韓双方の文化がさらに多彩で豊かな変容を遂げていくためのささやかな一歩になれば」と主催者は語る。

 「韓国の大衆文化展」は、新津市美術館(新潟/2月8日~4月7日)、世田谷美術館(東京/5月25日~7月14日)、高松市美術館(香川/8月2日~9月1日)、福岡アジア美術館(11月21日~2003年2月2日)で開催。