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2003/12/12

<韓国文化>韓日音楽事情 -川上英雄-

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    かわかみ・ひでお  音楽ジャーナリスト。レインボー・カルチャー・ナビゲーション代表。1952年、茨城県生まれ。日本大学芸術学部美術デザイン科卒業。79年より評論、コーディネート活動を展開。著書に「激動するアジア音楽市場」(シネマハウス)、「ナヌン・ハングクノレガ・チョッタ(私は韓国の歌が好きだ)」(韓国・搶海出版)など。  

 2004年1月1日、韓国での日本語歌詞による音楽ソフト全面解禁がようやく実施される。カウントダウンに向かって慌しい動きを見せる日韓の最新音楽事情を、ソウル、東京2地点同時にリポートする。

 全面解禁第一弾アーティストとして韓国上陸が決定したのは、TUBEおよびX。TUBEは12月31日の午後11時から、発売に先立ちソウルで解禁記念コンサートを開催する。このコンサートには、TUBEのオリジナル曲の韓国語訳を歌っている韓国人デュオ、CANも出演し、花を添える。

 TUBEの所属先であるソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)の発表によれば、来年1月上旬に韓国で発売予定の日本人アーティスト5組(前述の2組以外にCHEMISTRY、平井堅、HYDEが候補に挙がっている)について、先ごろ韓国政府の当該機関へ認可申請手続きを行ったとのこと。これらのアーティストはいずれも韓国で人気が高く、すでに英語版が発売され好評を博している。

 ところで、メディア・ミックスやグローバリゼーションの嵐が吹きまくる世界のメジャー・レーベル各社の業界地図が今や、国内の市場においても大きな比重を占める日韓の音楽産業界だが、すでにソニー以外にも現地法人を有する、BMG、EMI、ユニバーサル、ワーナーなど欧米メジャー系各社も今回の解禁を見据え、着々と布石を打っているもようだ。

 米国タイム・ワーナー・グループ傘下のワーナー・ミュージック・ジャパンも、日本で1月に発売予定のKICK THE CAN CREWのニューアルバムを同時に韓国でもリリースする方針だ。

 ここ数年、衰退が著しい演歌(トロット)やムード歌謡の分野でもいくつかの実験的な試みが実現に向かって動き出している。その1つが、かつて一世を風靡した歌謡コーラスの雄、敏いとう&ハッピー・アンド・ブルーの代表曲「星降る街角」の韓国語訳制作と発売。先日訪韓した小沢音楽事務所関係者が現在、CD化などを構想中だ。

 そのほか、東京のボイス・ミュージックによれば、80年代にKBSが行った離散家族探しキャンペーンのテーマ曲「失われた30年」で一躍スターダムにのし上がった雪雲道が日本の有名演歌歌手、伍代夏子と組んだデュエット曲「エンジェル-天使を見つけた-」(日本盤はSME発売)の韓国語バージョンの発売なども日程に上っている。

 さらに、「ラウンジ歌謡」という新種のカテゴリーを印象付けた保科有里(ガウス・エンタテインメント所属)のオリジナル「グッバイ・ソウル」の韓国語バージョン制作に関しても、韓国のLKCミュージックなどが前向きな姿勢を見せている。

 一方、日本国内大手の芸能プロダクション、ホリプロへも韓国のレコード会社やプロダクションから多数のオファーが相次いでおり、日本でもお馴染みのユンソナが所属するスタージェイエンタテインメントと提携し、新しい才能の発掘と相互交流に意欲を見せている。

 現在、韓国音楽産業界の総売上は約2000億ウオンと、日本市場の5%程度に過ぎないが、この全面解禁が順調に推移した場合、Jポップへの需要が一気に高まると予想されている。

 今回の全面解禁で、Jポップが韓国を席巻する日も、そう遠い日ではないと筆者は期待しているのだが…。