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2003/06/06

<韓国文化>現代美術で未来を提示

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    グロテスクな中に美を見いだす「世界の舞台」

 国際交流基金アジアセンターは、アジア現代美術個展シリーズの第3回目として、現在国際的なアートシーンで活躍中の韓国人作家、イ・ブルを取り上げた「イ・ブル展 世界の舞台」を、7日から国際交流基金フォーラム(東京・赤坂)で開催する。日本で彼女の作品をまとまって見る機会は極めて少なく、新作を含む今回の個展開催は、またとない機会だ。

 イ・ブルは、90年代に国際的にも注目を集めるようになった韓国現代美術の最も代表的な作家のひとりである。

 2002年に韓国の美術関係者が選ぶ35~45歳作家の第1位に選出され、韓国国内での評価はもちろんのこと、ヴェネツィア・ビエンナーレ(1997年)やイスタンブール・ビエンナーレ(2001年)などの国際展にも数多く参加し海外での評価も確実なものとした。現在もヨーロッパと北米において2つの個展が巡回されている。

 日本では作品は収集されているものの、展覧会としては2000年の福岡アジア美術館での個展がまとまったものとしては唯一であり、ほかに新潟の越後妻有トリエンナーレやいくつかのグループ展に出品しているのみであり、東京での大規模な個展開催は今回が初めて。

 本展では、新作「世界の舞台」とそのドローイング約75点を、会場である国際交流基金フォーラム全体にインスタレーションする。

 新作のタイトルは16世紀、大航海時代を背景に世界で初めてオルテリウスが作成した世界地図帳のタイトルに着想を得ており、21世紀に生きるわれわれに、未来世界を提示してくれる。

 国際交流基金の担当者は、「イ・ブルの作品は一見過激でグロテスクだが、他方で非常に繊細で精緻な美しさを備えている。この相反する両極を持ち合わせているのが魅力」であり、「代表作のひとつである『サイボーグ』(97年)では、プラスチックモデルのように身体の一部を欠損した戦闘美少女を作っている。91年の『華厳』は、徐々に腐っていく生魚の臭いに現実の生理的な不快感を体験させてくれる。美と不快の対比がおもしろい。今度の新作も期待してほしい」と話す。

 イ・ブルは最近、人類が直面しているよりグローバルな問題をテーマとして、科学テクノロジー、自然(生と死)、環境なども視野に入れており、同展はその第一歩になる。7日午後2時からは、アーティスト・トーク「イ・ブル新作を語る」も開かれる。

 また同展は8月2日から、倉敷の大原美術館でも展示される。


 【イ・ブル展 世界の舞台】

会   期:6月7日(土)~7月13日(日)
開館時間:午前11時~午後7時(月曜休館)
会   場:国際交流基金フォーラム     
主   催:国際交流基金アジアセンター   
入 場 料:一般400円、高大生300円  
T E L:03・5562・3892     


イ・ブル 1964年、韓国生まれ。1987年、弘益大学校美術学校彫刻課卒業。現代美術家。現在、ソウル在住。