ここから本文です

2003/04/04

<韓国文化>社会の掟を象徴的に描く

  • bunka_030404.jpg

    記者会見に挑むスタッフ、俳優。中央に作・演出の金相秀、左から女優の伊藤久美子、中本奈奈、冨樫真、ちすん

 演劇をはじめテレビドラマ、映画、小説、写真な多方面の芸術分野で韓国を代表する総合芸術家、金相秀氏の作・演出による舞台「島-isle」が16日から19日まで、東京・赤坂の国際交流基金フォーラムで上演される。今回の東京公演は2001年12月の大阪公演に次いで2度目。在日韓国人と日本人のスタッフ・俳優で上演される。

 作・演出を担当する金相秀氏は1978年、19歳のとき「環」で劇作家、演出家としてデビューした。その後、演劇にとどまらずさまざまな芸術分野で活動しながら、映画、ドキュメンタリーなどでも水準の高い作品を発表。韓国の前衛芸術シーンを主導し、現代美術の真髄を世界の人々に見せてきた。86年には映画「霧の柱」の脚本で韓国のアカデミー賞と呼ばれる大鐘賞作品賞を、96年には映画「学生府君神位」で同賞脚本賞を受賞している。

 今回上演される「島-isle」は、人間と人間、自然の中の人間、人間と宇宙の共生の問題など、新たな千年を鋭く問いかける。暴力的、破壊的な文明の代案として人間の存在を問い、由緒深い人間は人間の名の下で再び立ち上がらなければならないというのが、この作品のテーマだ。

 昔々、離島に住む全ての男たちが漁に出た。その間に1人の娘が身ごもった大晦日の夜、漁を終えた男たちは海におぼれ、島に戻ることができなかった。激しい風浪に出合ったという。島の人々が騒々しく騒ぎ始めた。娘が身ごもったおかげで、島の男たちが死んだ!身ごもった娘の不浄の祟りだ!島の霊たちの怒りだ!と。島の人々は、娘を島から追い出し、無人島に送りだす--。どこかで1度は聞いたことのある伝説的な話が、この作品の背景になっている。

 登場するのは女性だけで、島を象徴するオブジェの中で3人の女性が、島を放逐された1人の娘を演じる。同作品は、92年、2001年2月に韓国国立劇場において公演され、「人間が持っている二重性、コミュニケーションの不在、集団の暴力性、疎外の問題など現代社会の精神的な病症を鋭く解剖した芸術性の高い創作演劇」(韓国日報)と高く評された。

 16日からの東京公演は、2001年12月の大阪公演同様、日本語での翻訳上演で、在日韓国人と日本人のスタッフ、俳優で行われる。これまで日本に紹介された韓国芸術文化は韓国伝統芸能公演が主流で、しかも韓国を紹介することを目的にしていたため、日本語字幕公演が多かった。今回のように日本語に翻訳・翻案し、在日韓国人と日本人スタッフ・俳優での上演は、新しい韓日文化交流の一つの方法として注目される。

 金相秀氏は日本公演にあたって、「日本社会にある例えば『いじめ』『引きこもり』などの問題の根底には、社会に内在した人を抑圧する『掟』が横たわっているように感じられる。これは日本に限った問題ではなく、韓国を含めた世界中どこにでもある問題だと思う。今回の演劇のテーマは、こうした人類の普遍的なテーマを表出することにある」と述べた。


【公演日程】
 会  場:国際交流基金フォーラム    
 公演日時:4月16日(水)午後7時半   
        17日(木)午後2時/7時半
        18日(金)午後7時半   
        19日(土)午後3時/6時 
 料  金:一般4,000円、学生3,000円。  
 ℡03・5476・4971(東京公演実行委員会)
 
【読者プレゼント】
 「島-isle」東京公演に各回3組6人をご招待。希望日時を明記し、東京本社・読者プレゼント係まで。