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2004/10/15

<韓国文化>韓国の舞台芸術・地方の文化発信活発に

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    チョン・ジェイル 高麗大学卒。中央日報記者、慶熙大学講師を経て、現在LGアートセンター運営部長。演劇評論家。

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    キム・デジョン チェリスト。大田市立交響楽団事務局長を経て、現在大田文化芸術殿堂公演企画チーム長

 文化産業の発展が著しい韓国で、劇場運営はどうなっているのか。LGアートセンターの鄭在日運営部長(40)(写真・左)と、大田文化芸術殿堂の金大鍾公演企画チーム長(47)(写真・右)が都内でこのほど「韓国最新舞台芸術事情」と題して行った講演の要旨を紹介する。

◆韓中日の舞台交流を◆
LGアートセンター 鄭在日

 ソウルには現在、大型劇場が5つある。公的施設として芸術の殿堂、文化会館、国立劇場、世宗文化会館(ソウル市の運営)、そして民間施設のLGアートセンターだ。

 同センターは企業の社会貢献を目指し、2000年に設立された1503席の多目的公演場だ。

 運営が成功した要因として、まず場所が江南にあることがあげられる。ここはソウルの中産階級以上の人たちが住む場所で、その人たちをターゲットにした。

 良いプログラム、運営システムの現代化を取り入れた。いま会員が10万人おり、その半分が公演を観に来る。そのため劇場の回転率は90%以上と好調だ。今後東南アジアや日本の劇団も紹介したいと考えている。

 韓国の文化芸術はいま激変期にある。政府は分権化を推し進め、首都ソウルの機能を全国に分散しようとしている。それが芸術にも影響している。

 地方の劇場がその地方の人材を使って特色あるフェスティバルを行い、成功している。演劇界もソウルが中心の時代は終わった。

 2つ目に中堅企業が中小劇場に進出している。大規模な資金投入が必要なバレエ、ミュージカル、オペラなど世界的に有数な劇団の韓国公演も実現するようになった。アジアへの巡回公演は、日本、ソウル、北京という順番だ。

 そして世界的な流れを見ると、日本、中国、韓国に加え東南アジアブロックも出てきている。アジアが世界に東洋的文化を発信していく時代が来た。今後、韓日中が連帯して独自の東洋芸術を作り、世界に輸出する時代が来る。

 すでに人的交流、作品作りは行われているので、後は世界に通用する商品に仕上げられるかどうかだ。


◆ソウル偏重を是正◆
大田文化芸術殿堂 金大鍾

 これまでソウルの一極集中が進む中、各種公演も80%がソウルで行われてきた。昨年、ソウルで1年間に行われた演劇は800回、その他の地方は600回、バレエなどの公演はソウル280、その他285、音楽(オペラなど)はソウル1300回、その他800、海外音楽人の招請公演はソウル470、その他190となっている。

 地方で文化活動への関心が低いことが問題となっていた。市や傘下機関の長期的プラン不在、会館運営の専門家の不足、地域住民の関心低調などが拍車をかけた。

 そのような中、韓国政府は、自律、参与、分権を通した地方の文化芸術支援を方針としてあげた。新しい文化政策のための組織作り、民間への委託、地域の特性に属した公演芸術の開発などが具体的方策としてあげられている。 

 私がいる大田は人口150万の広域都市だ。科学都市を宣言しているが、現在は科学と文化の調和した都市を目指している。市立芸術団、舞踊団、交響楽団を持ち、大田芸術殿堂は1550席と650席の2つのホールのほか、会議場やスタジオも併せ持つアートコンプレックスだ。

 市が運営し、今年の10月1日に1周年を迎えた。公演予算を他の市より増やし、市民に文化を還元するために運営している。これからは地方の団体が海外に発信する時代になる。

 韓国ではいま首都移転の計画がある。第一候補地の公州は大田から近い。そうなれば大田の文化発信地としての価値はさらに高まると思う。このように大田市だけでなく、韓国の地方都市からの文化発信は今後広がっていくだろう。