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2004/01/09

<韓国文化>アジアの急速な変化を表現

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    韓国 パク・ヘソン 「Go I conda」

 国際交流基金アジアセンター主催の「アウト・ザ・ウィンドウ」展が、1月10日から2月15日まで、東京・赤坂の国際交流基金フォーラムで開催される。韓国、日本、中国の57人アーティストが、各国のテクノロジーやメディアの急速な変化をインスタレーション、ビデオ上映など多彩な形式で紹介する。韓国からキュレーターのソ・ジンソクさんをはじめ23人が参加。アナログとデジタルの狭間を生きる若手作家の表現感覚に注目してほしいというソさんの報告要旨を紹介する。

 韓国は非常に躍動的で変化の激しい国だ。後進的な農業国家から苦しい近代化の過程を経て、デジタル時代に至る現代まで……ほかの国で数世紀かかる変化が、わが韓国ではたった半世紀のうちに全て起こってしまった。

 つまり50年代、春窮期が云々されていた貧しい農業国家から、自ら「漢江の奇跡」を謳う急激な近代化の風に揉まれ、やっと先進国の入り口まで辿り着いたと思ったら、今度はデジタル時代の革命的な変化が彼らの背中を遠慮なく押している……といった具合だ。

 農耕時代、近代国家、デジタル革命。一人の人間が、3つの時代的変化を全て体験するケースもある。例えば、農村で生まれた子供が、父が牛を売ったお金で大学を卒業する。就職して近代化の尖兵として働き詰めに働いて中年を迎える。

 これでようやく一休みと思った途端、今度はコンピューターの風が吹き始め、書類一枚ですらコンピューターで決裁しなければならない時代を迎える。一人の人間が人生のうちにこれほどまでに急激な変化を経験しなければならない国は世界史を見てもあまり例がないだろう。

 一方、80年代以降に生まれた世代は典型的なデジタル世代であり、コンピューターの前に座らなければ落ち着かない世代でもある。幼い頃からデジタル文化の洗礼を受けた彼らは、デジタル方式で考え、彼らだけの文化空間、言語空間の中で活発に交流している。

 問題はこの二つの世代に挟まれた20~30代だ。彼らは父親の世代と妹弟の世代の価値観と文化の差異の境界線上に存在する、典型的な「挟まれた世代」だ。彼らの記憶には、デジタル世代が決して持っていないある幼年期の平和が息づいている。

 幼い頃に訪ねた田舎の家の庭。その暖かな日の光、こっそり隠れて見に行った韓国映画……アナログとデジタル、伝統と現代が彼らの精神の中にバランスよく存在するのはそのためだ。

 この文化的アイデンティティの「混沌」こそ彼ら、若い作家たちの作品世界を理解するための重要なキーワードなのである。彼らはデジタル文化に慣れていてデジタル時代の各種の文明の利器を器用に操るが、精神の根はアナログ的な感受性をそのまま保っている。

 韓国の伝統美をデジタル的に復元しようとする試みや、古くなった昔の物に執着するようなキッチュ志向等はこの世代だけの独特な文化的感受性だ。

 今回紹介されるインスタレーションにはその影響がはっきりと現れている。華やかなデジタルの殻の中に大切に保管されたアナログ的なある郷愁……。

 私たちが彼らの作品に注目するのは、もしかしたら彼らがこのような根源的なもの、本質的なものに対する探求を決してあきらめないからかもしれない。それこそ時代の革命的な変化の中でも、最後まで生き残る人間的なものだからだ。


  ソ・ジンソク  ソウル生まれ。キュレーターとして展覧会を企
  画、実行する他、自らアーティストとしても活動する。


◆ 「アウト・ザ・ウィンドウ」展 ◆
  会期:1月10日-2月15日
  休 館 日:月曜日 *1月12日開館、翌13日休館
  会場:国際交流基金フォーラム(赤坂)
  料金:一般400円、大・高生300円
  開館時間:午前11時-午後7時
        ※10日午後1時からトークイベントあり
  T E L:03・5562・3892