ここから本文です

2005/12/16

<韓国文化>聴衆の心ゆさぶった演奏

  • bunka_051216.jpg

    大きな評価を得た東京フィルの韓国ツアー

 韓国出身の世界的指揮者チョン・ミョンフン率いる東京フィルハーモニー交響楽団の上海・韓国ツアーが、11月に行われた。アジアの音楽交流を深めようと企画された同ツアーの報告を、東京フィル広報課の松田亜有子さんにお願いした。

 韓国に西洋音楽が紹介されたのは120年前、最初のオーケストラが成立したのは1945年とのこと。88年のソウルオリンピックを前後にして経済成長を遂げた韓国、その過程でクラシック界も発展を続けてきた。

 現在、音楽院は1つ、大学の音楽科200、オーケストラは約30ある。韓国芸術総合学校の李永朝教授は、「韓国クラシック界は成長してはいるが、まだまだ世界から学ばねばならないことが数多くある」と話す。

 その成長が期待される韓国に11月、東京フィルはツアーを行った。2003年のシンガポール・韓国公演ツアー、今年5月の釜山公演、10月のソウル国立オペラにおける、ナブッコの演奏に続き、今回は4度目。
 
 日韓国交正常化40周年を記念すべく、また、中国との親善も兼ね、ヴァイオリニスト庄司紗矢香と韓国の新進チェリスト、コー・ボンインと共に、上海をはじめ、韓国の釜山、済州島、果川、ソウル、及び仁川で演奏会を開いた。

 韓国出身の巨匠チョン・ミョンフンの熱狂的なファンや、戦前日本語で教育を受け、日本に対してノスタルジーを感じている大勢の音楽ファンが公演を聴きに来てくれた。元ユニセフ駐日・駐韓代表・具三悦氏は、彼らが演奏した「ブラームスのヴァイオリン、チェロと管弦楽のための協奏曲」を友好の象徴として絶賛した。「2人の才能あるソリスト、日本で一番古いオーケストラと韓国の偉大な指揮者によるブラームスは、そのすばらしいハーモニーで皆の心を豊かにした。これこそが文化交流だ」と語ってくれた。

 漁業と観光の島から国際文化観光都市をめざす済州道は、昨年のチョントリオの済州公演に続き、今回の東京フィル公演をどの土地よりも熱烈に歓迎してくれた。文化都市を目指す熱意がこちらにも伝わってきた。

 ソウル公演には清渓川の復興で一躍人気者となった李明博ソウル市長も聴きに来てくれた。李市長は音楽通としても有名で、オペラハウスの建設も計画している。

 ツアーの中でも感動的だった演奏会はソウルの西、韓国第3の大都市仁川の総合文化芸術センターでの公演である。多数の音楽好きな母親と子供達がやって来た。

 ブラームスのコンチェルトはみずみずしい叙情的な作品で、その第3楽章はウキウキさせる軽快なハンガリーのフォークチューンを含み、2人の若いソリストとオーケストラの見事な調和で、韓国の子供達や若者の心を大きく揺さぶることが出来たと思う。

 ショスタコーヴィッチの交響曲第5番「革命」はチョン・ミョンフンの十八番。歯切れの良い振りで、オーケストラを引き込み、1930年代のスターリン政権批判とされるダイナミックな曲のイメージを伝えた。曲が終わった瞬間から、観客はブラボーを連発し全員で総立ちとなった。

 「日韓文化交流はもうできている。」と、いう声が至るところで聞かれ、「大統領に言われなくても、共に未来へ向かうのは当たり前です。」と言った仁川のコンサートを聴きに来た1人の音楽愛好家の言葉が、とても印象的で「アジアはひとつ」を実感した。

◆22日にシルクロード保存音楽会◆

 22日には東京国際フォーラムで、「シルクロードチャリティーコンサート アジアはひとつ 未来へのフレンドシップ」コンサートを開催する。

 これは韓国企業のサムスンが取り組んでいるシルクロード文化財保護の重要性を訴えるためのチャリティーコンサートで、韓国の若手歌手イム・ヒョンジュや、松任谷由実も出演する。日韓友情年の締めくくりとして、韓国で感じた「アジアはひとつ」の思いを示すコンサートにしたいと考えている。