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2005/04/29

<韓国文化>東洋の精神を現代アートに

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                 金 善姫さん

 韓国、中国、日本、そして台湾の現代作家26人による現代アート展「秘すれば花 東アジアの現代美術」が、東京・六本木の森美術館で開催中だ。東洋に息づく自然観や美学、代々受け継がれてきた精神に思いをめぐらせながら作り上げた現代アート展で、同美術館の韓国人キュレーター、金善姫さんが企画した。金さんの文章「秘すれば花 東アジアの新しいアートを探して」(同展カタログより要約)を紹介する。

 アジアは多様な人種、文化が共存した複雑な様相を帯びた地域である。中でも東アジアに該当する韓国、中国、日本および台湾の4地域は、古代中国文明から知的伝統を受け継いできた、いわゆる漢字文化圏に属する地域という特徴がある。

 これらの国家は宗教、思想、芸術を含めた衣食住はもちろん、政治や外交面でも互いに大きな影響を及ぼしあってきた。時に友好的で、時に敵対的な関係を長らく保ってきたのである。

 一方、東アジア国家の文化と伝統は、この100余年間の社会変化と西欧文化の波に押され、自分たちの伝統が断絶してしまう危機に直面することになった。しかし、経済的、社会的な安定が徐々に取り戻される中で、西欧化の限界も体験することになり、伝統に対する自覚と反省が生じ始めたのである。
 
 美術においても同様である。東アジアに西洋美術が本格的に流入されておよそ100~140年となる。当初は拒否感が強かったが、次第にその美術形式に同化し、そしてついに現代美術という名のもと、東と西という概念による美術の区分は、ほとんどその意味を失ったのである。
 
 今日の東アジアの美術は、西洋的な美術と伝統美術、進歩的な美術とそうではない美術が、互いを巻き込みながら、きわめて多様な様式を混在させている。

 東アジアの現代美術は80年代後半から国際的に注目されはじめ、新世代の作家が登場するたびに活気を帯びるようになった。

 テクノロジーを利用したアートをはじめ、ジャンルにとらわれない新しい感受性で自分たちの創意を巧みに発揮するようになってきた。

 そのような時代状況の中で、東アジアの伝統と現代美術との関連を展示の基準においたのが、「秘すれば花 東アジアの現代美術」である。「秘すれば花」は能から引用された言葉で、「”表現を慎み、節制すること”は、単に省略してしまうのではなく、”表面にすべてをあらわにしないこと」という意でとらえた。秘められた部分について無限の思惟の余地を鑑賞者に残してくれている、という意味である。展示の具体的な構成としては、おおまかに室外風景と室内風景の2つの部分に分け、それぞれ「山水」と「風水」とした。

 「山水」とは、多くは風景の意味に使われ、東アジアでは水墨画の主題として取り上げられてきた。同展では山水画に見られる山、川、空、木、岩、家などの要素が登場する。「風水」は風と水を意味し、さらに風は空気と天、水は地を象徴する。つまるところ、風水は風と水を動かし、人間が自然とともに調和を保ちながら生きるという昔の人々の知恵といえる。ここでは玄関、茶室、リビングルーム、食堂、トイレなど建物の内部に関連した作品で構成されている。芸術に対する伝統的な東アジア的思考および価値観を、より効果的に生かすことができる展示を心がけた。東アジアの現代アートの新しい息吹きを同展から感じ取ってもらいたい。