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2005/01/21

<韓国文化>韓中日・オンライン漫画の現状探る

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    シム・スヒョン氏作の「PapePopo」シリーズは、オンライン漫画配信サービスから人気に火がつき、150万部のの売上を記録した

 国際交流基金が主催する「アジアINコミック」が来月19日、20日に東京・赤坂の国際交流基金フォーラムで開催される。韓中日3国のオンライン漫画に焦点をあて、各国のオンライン漫画をとりまく現状、課題、そして将来に向けた取り組みについて討論する。配信事業についての報告要旨を紹介する。

多様な作品の提供を
鄭熙運(イー・コミックス副社長)

 韓国の漫画市場は、90年代後半の経済危機および貸本屋の拡大とともに縮小してきた。また、ゲームやインターネット、携帯電話などの爆発的な普及により、漫画は日の当たらない存在となっていった。

 しかし、インターネット利用が活発になると、オンライン漫画配信サービスが本格的に始まった。2002年~2003年、オンライン漫画はポータルサイトによりたくさんの作品を安価でサービスする戦略でシェアを高めた。また、この時期、日本の成人漫画が重要なコンテンツの位置を占め、目をみはるべき商業的成果を収めた。

 昨年は、オフライン漫画市場の不況により、オンライン漫画配信への関心が高まり、有料・無料の連載漫画配信サービスが拡大した。

 韓国では、貸し本屋で漫画を借りる人が全体の90%以上と言われている。出版社や漫画家にとっては、読者が貸本屋を通して漫画を読むのより、オンライン配信のほうがはるかに多くの利益を生む。配信料金は、大部分が定額制で、定額を払うとサイトが提供する全ての作品を見ることができるようになっている。こうした料金体系は、実質的には価格を引き下げ、企業側にとっては不利になる。

 出版市場全体の萎縮とともに、漫画読者の需要も減ってきているので、オンライン漫画配信サービスを通して、漫画の読者層を拡大しくことが市場の底上げのためにも重要だ。

 昨年の、有料オンライン漫画市場の全売上規模は約250億ウォン(2億3100万円)ですが、多様な新刊作品を提供することによって、売上規模は何倍にも膨らむと予想されている。また、配信作品の増加にあわせ、オンライン配信サービス企業と出版社間の提携が強化しそうだ。

アジア圏へ進出企図
鈴木雄介(イーブックジャパン社長)

 日本では現在、およそ10サイトがオンライン漫画を配信している。配信方法は、2通りあり、パソコンにダウンロードして読む方法と、パソコンをサイトに接続したまま読むストリーミングの方法だ。昨年2月には、松下電器産業がシグマブック(読書専用端末)を発売。見開きの2枚の高精細液晶を搭載して、電池による駆動時間も革新的に長くなった読書専用の端末だ。将来的には、このような読書専用端末の普及が、オンライン漫画市場拡大のカギとなるだろう。

 また、昨年の夏以降、携帯電話向け配信も始まった。携帯電話の小さな画面にマンガをコマ単位で表示させるサービスだ。携帯電話の利用者は、若年層が中心で、また手軽さもあり、市場が爆発的に伸びることが予想される。

 売れ筋マンガの特徴としては、長編ものがある。例えば60巻ものの長編マンガの第一巻を購入した読者が、そのまま全巻をダウンロードする確率は8割近くにまで達する。

 また、販売ルートの拡大も大きなテーマとなっている。パソコンにダウンロードして読書するというスタイルを基盤にしているが、そこから読者をより拡大するためサービスを検討している。

 さらに将来的には、オンライン漫画のメリットを生かして、アジア圏における市場攻略を考えている。各国のパートナーと提携しながら、日本で生まれた漫画をアジア各国に向けて配信したり、外国の漫画を日本に配信するインフラを構築したい。このようなインフラ整備をすることで、作品がより多くの読者に楽しんでいただけるようになるだろう。

教育漫画で市場拡大
リアン・ガン(トリワークス社長)

 2002年は僅か94万人だった中国でのブロードバンド利用者が、昨年10月には3500万人を超えた。オンライン漫画配信市場は、4つの理由により巨大な市場への転換が期待されている。

(1)漫画コンテンツの審査承認システムの遅れで、国内で出版された漫画コンテンツが不足していることから、オンラインコミックは高速で安価な娯楽の手段として、多くのインターネット利用者が利用。

(2)中国にはインターネットカフェが約15万店舗あり、これらのカフェがコミック読者にインターネットへ接続する場所を提供。

(3)昨年12月現在、中国語圏(香港と台湾地域を含む)には合計37のオンライン漫画配信会社があり、従業員は約2000人。オンラインコミックの中で、中国産コミック(香港と台湾地域を含む)は約37・5%を占め、輸入コミックは約62・5%を占める。

(4)コミック作品は文化的な背景と密接な関係があり、強い民族性と豊かな内容を含んでいる。インターネットの急激な発展により、今や、多くの青少年の生活は大きく影響を受けている。
 インターネット関係機関は、ソフトウエア企業の自主開発を積極的に指導、奨励するとともに優秀な文化製品の生産及び普及を進め、積極的に未成年者の精神文化生活の充実を図っている。

 今後オンラインコミックのコンテンツ開発は、娯楽コンテンツを見本としながら、健全な教育内容を漫画の形にすることにより、益々大勢の漫画読者を生むと予想される。