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2006/04/21

<韓国文化>湖林博物館の名品一堂に

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    粉青沙器鉄絵唐草文俵壺 15-16世紀 宝物1062号 

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              白磁青花松梅文壺 16世紀

 韓国の湖林博物館に所蔵された朝鮮朝時代の白磁と粉青沙器120点を紹介する「湖林博物館所蔵李朝陶磁の名品=白磁と粉青沙器展」が、4月22日から6月25日まで、滋賀県守山市の佐川美術館で開催される。出品作品のほとんどが日本初公開で、韓国で「宝物」に指定(日本の重要文化財に該当)されている4点も特別に出陳される。崔健・朝鮮官窯博物館館長が同展に寄せた文「朝鮮陶磁器の展開とその性格」(要約)を紹介する。

 朝鮮初期を代表する陶器は、粉青沙器と白磁である。粉青沙器は、高麗後期の象嵌青磁の朝鮮的変形ともいえる。

 青粉沙器は、朝鮮時代の初期の陶磁器文化の中心にあった。粉青沙器が中央官庁と社会支配層を対象にした多様性と普遍性を持つ陶磁器なら、白磁は主に王室を対象にした陶磁器といえる。

 象嵌青磁から粉青沙器に姿を変え、再び粉青沙器が消滅するまでの150年間は「粉青沙器の時代」と呼ばれる。この粉青沙器の時代は、前期と後期に分けられる。前期は、1410年から1470年までの60年間で良質な象嵌粉青沙器類が主流を占め、1480年代からの後期100年間は、比較的粗野な粉粧粉青沙器類が流行した時期に当たる。この時期、掻落および線刻粉青沙器が盛んであったが、鉄絵および粉粧灰青沙器の流行を経て、ついにはその技法が消滅する。

 一般的に、高麗は青磁の時代、朝鮮は白磁の時代という。加えて、仏教の色は青、儒教の色は白という。しかし、陶磁器の色と王朝、宗教、思想とは因果関係がない。

 韓国では、朝鮮時代初期である15世紀に入ってから青磁から白磁に交代する変化が現われる。当時の白磁は青磁より高温で焼くため、相対的に強度と弾性が高い完全な磁器質の硬質白磁として、釉薬と胎土を含む材質によって、景徳鎮窯の硬質白磁のような画期的な改善を成し遂げた。青磁から白磁への転換は、より純粋な材料、より高い技術、より頑丈で清潔、実用的な陶磁器を作るための努力の産物であった。

 白磁が陶磁器の中心となる朝鮮時代初期の15世紀は、高麗滅亡以降、新しい朝鮮が強力な国家の建設に拍車をかけた時期であり、高麗の伝統を継承した象嵌青磁と、新興朝鮮の粉青沙器、そして、材質と形態を新たにした硬質白磁がお互い和合しながら、旺盛に制作された時期でもあった。この15世紀を過ぎたころ、朝鮮社会は白磁を選ぶことになる。15世紀後半から粉青沙器が加速的に衰退する一方、白磁は最高の品質と生産量を備えた朝鮮王朝の絶対的な磁器として確固たる地位を得る。すなわち、15世紀初めは高麗式象嵌青磁と、朝鮮式象嵌青磁(粉青沙器)と新興白磁が優劣を競った時代なら、その後半は完全に白磁の時代になったといえる。

 高級白磁制作技術は、京畿道広州から地方に拡散していった。鄭夢周の学風を継承して、嶺南地方のソンビの尊敬を集めていた金淑滋が高霊の「県監」(現在の県知事)の職にあったとき(1442-1447)、「沙器匠」(陶工)たちに「九節之法」(白土を精選、練土する九つの秘法)を教え、広州および南原よりすぐれた白磁を貢物として納め、賞を貰ったという記録が残っている。

 粉青沙器と青磁は、お互い継承関係にあるが、白磁とは対立関係にある。白磁は新しい技術と新しい次元の特化された陶磁器といえる。

 世界陶磁史の中で、「粉青沙器」という名前は異色であり、きわめて特別なものとして知られている。線が太く頑丈な形態と、迷いのない大胆なタッチが与える感動は、現代人にもストレートに伝わる。粉青沙器は土(胎土)本来のやさしさとラフな感触がそのままに伝わり、省略や誇張によって変形させながら再構成する過程で、変幻自在の文様が自然に表現される。

 その半面、朝鮮白磁には陶磁器がもつ本質的な美しさがそのまま残っている。中国の白磁が多様な彩色で白磁の限界を越えたときも、また日本やヨーロッパの白磁が産業社会の中で、装飾的で豪華な商品陶磁器に変貌したときも、朝鮮の白磁は自然材料の純粋さを古典的に表現しようとする傾向を保ちながら、本来の造形感覚をそのまま持ち続けた。

 韓国陶磁器文化に継承されてきた美意識は、中国、日本や西欧世界が志向したものと、はっきりとした違いがある。彼らの陶磁器文化が、産業社会を基盤とした功利主義を選んだとするなら、韓国は知識社会を基盤とした道徳主義を選んだといえる。

 彼らの装飾意匠が豪華な貴族社会の喜びを表現したとするなら、韓国は質素、倹約を実践する知識社会の節制された美しさを表現したものといえる(図録より)。

◆プレゼント 同展の入場券を10組20人に。住所、氏名、年齢、職業、希望プレゼント名、本紙の感想を明記の上、東京本社・読者プレゼント係まで。


◇湖林博物館所蔵「李朝陶磁の名品展」◇

日 時:4月22日~6月25日
場 所:佐川美術館(滋賀県守山市)
  ※JR守山駅より路線バスで30分
入館料:一般1,200円、高・大生800円ほか
℡:077・585・7800


◆佐川美術館◆

 佐川美術館は、佐川急便の創業40周年記念事業の一環として、琵琶湖をのぞむ近江・守山の地に98年3月に開館した。日本画家の平山郁夫氏と彫刻家の佐藤忠良氏の作品を中心に展示し、地域社会に開かれた美術館を目指している。