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2006/01/19

<韓国文化>バレエへの情熱、日本で果たす

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    「くるみ割り人形」に出演したキム・ボヨン 2005(c)Dance Square

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       「くるみ割り人形」でソリストとして踊るチョ・ミンヨン (c)寺田真希

 東京・江東区を拠点に活動する東京シティバレエ団に2005年4月、韓国出身のダンサー2人が加わった。日本のバレエ団に韓国出身ダンサーが入団するのは、極めて珍しいことだ。年末のくるみ割り人形に出演し、現在は新作カルメン公演を控えたキム・ボヨン(32)、ジョ・ミンヨン(30)の2人に話を聞いた。

◆芸術家として活躍を キム・ボヨン◆

 外国のバレエ団と違い、韓国のバレエ団は30歳になったら引退という考えが強い。バレエを続けたかったので、姉が生活している日本に来る道を選んだ。韓国では団員になると給料がきちんと出たが、その分決められた振付をこなす日々が続き、ダンサーとして不完全燃焼な部分が強かった。

 東京シティバレエ団では決まった給料がなく、公演出演料や他のバレエ教室へのゲスト出演の謝礼などで生活している。しかし、振付は個人の創作が認められる部分が多いので、芸術家としてやりがいがある。東京シティバレエ団の一員として、質の高いバレエを提供し飛躍したい。

 韓日のバレエの水準を見ると、やはり歴史が長い分、日本が上だと思う。ただ韓国もクラシックバレエがこの10年ほど人気なので、今後が楽しみだ。韓日バレエ交流の深化を期待したいし、将来自分がその一助を果たせればと思う。

◆韓日文化交流に貢献 チョ・ミンヨン◆

 韓国のユニバーサルバレエ団に所属し、クラシックバレエを約7年間踊っていた。30歳を迎えて海外のバレエ団で活動してみたいと強く思うようになり、韓国との交流事業に取り組んでいた東京シティバレエ団を訪ね、受け入れてもらうことになった。

 昨年4月に入団し、年末の「くるみ割り人形」で初めてソリストとして出演した。日本での初舞台で緊張したが、ミス無く出来たので安心した。

 日本語は難しいが、バレエは言葉がいらない世界共通の文化なので、団員とのコミュニケーションも何とかこなしている。日本は韓国より発表会が多く、ダンサーにとってやりがいがある。好きな演目は「ドン・キホーテ」で、日本でもぜひ演じてみたい。

 韓日の文化・芸能交流はこの数年盛んになったが、残念ながらバレエ交流は少ない。バレエ団同士の交流がぜひ増えてほしいし、韓日共同で作品つくりに取り組めたら、すばらしい。私も貢献できればと考えている。

◆東京シティバレエ団◆

 東京シティバレエ団は1968年、日本のバレエ界では当時唯一であった合議制のバレエ団として設立。以来合議制による創立理念を大切に、古典バレエと創作バレエを両輪として、上演活動を続けている。

 94年に東京都江東区と芸術提供を結び、ティアラこうとう(江東区公会堂)で年間4回公演を行っている。特に年末のくるみ割り人形は、江東区在住の子どもたちが多数出演し、区民に愛されるバレエ公演となっている。バレエ団付属の教育機関として、研究所、ジュニア・スクールなども設立・運営している。現在団員は60人。

 韓国との交流は、同バレエ団創立メンバーの石田種生氏(現理事)が、韓国国立バレエ団の林聖男初代団長と日本で共にバレエを学んでいたことに始まる。石田氏は韓国国立バレエ団で委嘱上演された「エスメラルダ」の振付など、これまで3回指導に行っている。また東京シティバレエ団も72年、74年と2度の韓国公演を果たしている。

 その後韓国公演は実現していないが、韓国からの団員受け入れの経験があり、今回が2度目の韓国人ダンサー入団となる。

 野口辰雄理事は、「韓国の2人は基礎がしっかりしているので、大いに期待している。韓日には歴史的な問題が残っているし、バレエ公演は多額な費用がかかるので海外公演の実現は大変だが、相互に作品の発表が出来れば、両国のバレエ界にとって大きな刺激になる」と話す。

 3月9日には「東京シティ・バレエ団meets民族舞踊」がティアラこうとうで開催される。スペイン、ロシアなどの民族舞踊に加え、2人が韓国舞踊を披露する。


◇東京シティバレエ団「カルメン」◇  
   
日時:1月14日午後6時30分、15日午後2時
場所:新国立劇場(初台下車)       
料金:S席8,000円、A席7,000円ほか    
℡03・5351・3011(新国立劇場)