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2006/01/01

<韓国文化>佐々木直子の韓国正月料理

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    トックッ(韓国式雑煮)

 お正月はお盆と並ぶ、二大名節のひとつ。「名節」とは年間を通して行われる節句・年中行事のことで、その際、祭壇にお供えしたり皆で食べる料理を「名節飲食」、略して「節食」という。節食は、四季折々の季節食である「時食」と合わせて、ハレの日を彩る韓国の伝統的なごちそう料理である。

 韓国のお正月料理といえばトックッ。うるち米の粉を蒸してつき、細長く延ばした棒餅を、小判型に斜め薄切りにしてスープで煮た、韓国式のお雑煮だ。

 韓国では年齢を数え年でいうため、誰もが新年にひとつ年をとる。そこで、お正月にトックッを食べて年齢を重ねる意味で、トックッを「添歳餅」と呼んだりもした。

 お正月にトックッを食べる意味としては、いくつかの説がある。餅の白色が純粋無垢を象徴することから、白い餅で一年のスタートを切ることで天地万物の誕生を祝い、一年間の無病息災と福を祈願するという説。これは、祭祀のとき、祭壇に真っ白い蒸し餅を供えることにも通ずる。また、餅の形からみて、棒状に延ばすのは「財が伸びるように」、あるいは長寿を願う意味がこめられ、それを楕円形(小判型)に薄切りするのは「金銭に恵まれるように」という願いがこめられているという。

 トックッの他にも、餅を使ったお正月料理に、餅入り餃子スープ、餅炒め、餅の蒸し煮、餅の串焼き、餅と野菜の炒め和えなどがあるが、どれもこのシンプルな白餅「カレトッ」が使われる。

一方、トックッの作り方や材料・味は、地方により家庭によりバリエーションがある。スープのとり方では、伝統的かつ一般的なのが、牛骨や牛ブリスケでとった澄んだスープ。同じ牛スープでも、薄切りや細切りにした牛肉を薬味じょうゆで炒め、水を注いで煮出したり、牛テールを長時間煮込んだ白濁スープもある。その他、鶏ガラ、鶏肉や、昆布、煮干し、貝などでスープをとることもある。

 具には、スープをとるときに煮た牛ブリスケを薬味じょうゆで和えたものや、ねぎ、錦糸卵をあしらったり、とき卵を流し入れたり、もみ海苔をのせたりする。切った肉や魚介を薬味じょうゆで炒め、水を注いで煮る場合は、ダシが出たあとの肉や魚介をそのまま具にする。この方法だと、少量でも手軽にできる。

◇トックッ(韓国式雑煮)◇

<材 料>(4人分)
・鶏肉(もも)   1枚(約300㌘)
・水           8カップ
・トックッ用の餅   600㌘
・長ねぎ        1/2本
・卵           1個
・おろしにんにく   少々
・薄口しょうゆ    大1
・塩           約小1

A  しょうゆ      大1
   すりごま      小2
   ごま油       少々
   塩         少々
   こしょう      少々

<作り方>
①鍋に鶏肉と水8カップを入れて火にかける。沸騰したらアクをとって火を弱め、軽く湧くくらいの火で約30分煮る。
②鶏肉を取り出し、身を手で細く裂いてAで和える。
③トックッ用の餅は、くっついていれば1枚ずつはがしておく。長ねぎは斜め薄切りにする。
④①のスープを火にかけ、薄口しょうゆ、塩で味を調える。沸騰したら③の餅と長ねぎを入れ、2~3分煮て餅に火が通ったら、とき卵を流し入れて火を止める。
⑤器によそい、中ほどに②の鶏肉をのせる。


  ささき・なおこ 東京外国語大学朝鮮語科卒。モランボン味の研究所、KOREAN COOKINGジョン・キョンファスタジオ勤務を経て現在、フリーで韓国料理に関する翻訳・執筆を行う。訳書に『韓国料理文化史』(平凡社・共訳)、『わが家で作れる! 韓国おなじみ
レシピ』(小学館)。