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2006/07/28

<韓国文化>韓国映画の新潮流を知る!

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    『まぶしい一日』主演の杉野希妃(右)と森透江

 劇場未公開の韓国映画の秀作を上映する「シネマコリア2006」が8月、全国5カ所で開催される。シネマコリア代表の西村嘉夫さんと、上映作品『まぶしい一日』に主演した杉野希妃さんに話を聞いた。

◆新世代監督に注目 西村嘉夫さん◆

 今回上映するのは新作韓国映画6本と関連する日本の短編を1本の合計7本だが、複数監督によるオムニバスが2作品あるので、参加監督数でみると、12人の監督の作品を紹介することになる。

 今年も「韓国の今」を切り取った秀作・良心作がそろったと自負している。実力派中堅監督・演劇出身監督・女性監督・ドキュメンタリスト・新人・短編映画界のスター監督まで、その才能が発揮されたバラエティー豊かな作品を楽しんでいただければと思っている。

 上映作品中、特に思い入れのある作品がある。それは日韓そして在日の若き映画人が、「日韓関係」をテーマに描いた3本のオムニバス『まぶしい一日』だ。

 『シュリ』以降長く継続する韓流ブームは、韓国映画を見る年齢層を押し下げ、韓国映画界で活躍することを夢見る若者を生み出した。それら若き人材が、単身韓国へ渡り現地の若手映画人と映画製作をするようになっている。『まぶしい一日』は、そんな新しい潮流を代表する作品だ。

 済州島、ソウルと東京、そして仁川国際空港を舞台に、日韓の若者の出会いと成長が軽やかなタッチで描かれているが、日韓間に横たわる政治的・経済的な様々な問題点も忘れることなく折り込んでいる。3本のオムニバス全体で日韓の過去と現在をみつめ、未来志向の関係を築くという構成になっているのが興味深い。

 特にエピソード1『宝島』では、日本人と韓国人、そして在日が登場し、三者のそれぞれの関係性が一気に描かれるシーンがある。

 これまで韓国人と日本人、在日と日本人など二者の関係を描いた作品は数多く生み出されてきたが、日本人と韓国人の本音、在日の思いなどを一瞬にして描ききったのは本作が初めてではないだろうか?日韓の交流が深まり、その中で在日の持つ役割が大きくなっている時代性とでも言うべきものが、このような意欲作を誕生させたのかも知れない。

 また、『まぶしい一日』にスタッフとして参加した日本人大学生は、故郷の福岡で祖父の実話をベースに戦時下における朝鮮人と日本人の交流を描いた作品『けつわり』を完成させている。若い世代の日韓映画交流の実例として重要な作品で、これも上映することにした。

 歴史認識の違いをはじめ、政治的社会的に未解決の問題が山積している日韓関係であるが、「若い世代がこのような映画を作り始めたなら、両国の未来は明るいのではないか?」と思えてくる。そんな希望に満ちあふれた作品だ。

 『まぶしい一日』については、シネマコリアで上映権を獲得し、日本国内の映画祭や自主上映などで上映することが可能になっている。

◆韓日で女優活動を 杉野希妃さん◆

 大学2年生のときに韓国映画『猟奇的な彼女』を見て、小さいころにイメージしていた韓国と違うのに驚き、それから数多くの韓国映画を見続け、韓国文化に新鮮な感動を受けた。

 韓国語を話せず、映画を見ても言葉が理解できないことが悔しくなり、韓国留学を決めた。また、中学生のころから女優志望で、大学に通いながら演技の勉強をしていたが、韓国で女優デビューしてみたいと考えるようになった。

 延世大学語学堂に留学すると、映画や演劇、歌などの最新文化から韓国料理、物事をはっきり言う韓国人の性格に至るまで、すべてが楽しく刺激的で、完全に韓国にハマってしまった(笑)。

 留学中、今回の映画のオーディションを知り、応募したところ合格して出演することになった。祖国を訪ねる若い在日韓国人女性の役だったが、監督の考える(少し古い)在日のイメージとギャップもあったので、それを埋める努力をしながら撮影に臨んだ。演技はまだまだだが、これを糧に今後さらに努力したい。


  すぎのきき 1984年広島生まれ。慶応大学経済学部在学中。スターダストプロモーション所属。


■シネマコリア2006■

8月5、6日=愛知芸術センター
8月12、13日=大阪・第七芸術劇場
8月19、20日=東京・イイノホールほか
8月26日=福岡アジア美術館
8月27日=札幌・スガイシネプレックス
作品:『まぶしい一日』など7作品
料金:1,000~1,500円
http://www.seochon.net/cinemakorea/