ここから本文です

2007/08/10

<韓国文化>◇韓日音楽事情◇

  • bunka_070810.jpg

             芸道50周年を迎えたサムルノリの金徳洙

  • bunka_070810-1.JPG

             Rain(ピ)の最新ビデオクリップ集

 空前のウォン高による海外旅行ブームに沸く韓国で今、若者を中心に『日流』の嵐が吹き荒れている。日本へ渡航する若者達も多くこれまで、インターネットでファン・クラブを結成していた日流ファンが直接、東京や大阪をかっぽする状況も日常化している。

 爆発的な人気を呼んだ我が国の『韓流』ブームも、最近は落ち着きを取り戻し、より成熟した作品の紹介に力点が移り、映画・音楽共にフラットな相互通行による交流が一段と増加しつつあるのはファンならずとも嬉しい限りだ。それでは、07年初夏から秋にかけてのトピックスをいくつか紹介していこう。

 去る7月、韓国が誇る世界的な打楽器集団、四物遊撃(サムルノリ)の創始者、金徳洙(キム・ドクス)の芸道50周年を記念するコンサート・ツアー(企画制作/プラネットアーツ、サムルノリハヌルリム)が日本各地で開催され好評を博した。

 80年代に米国のメジャー・レーベル、ワーナー・ミュージック系ノンサッチレコードにより世界へ発信され、一躍注目を集めた正統四物遊撃のリーダーとして日本でもお馴染みの金は、5歳で放浪の芸人集団・男子党(ナムサダン)に入団。全国農楽競演大会にて最年少で大統領賞を獲得、チャンゴの神童―として全国にその名を轟かせた、言わばカリスマ的な人物…。

 今回のツアーは、日本の伝統芸能、津軽三味線の若きヒーロー、上妻宏光等何組かの大物日本人アーチストとのコラボレーションを展開し各地で熱狂的な盛り上がりを見せた。今は亡き作家の故中上健次氏等のきもいりで、我が国へ紹介されてから早20年の歳月が流れたが、最近現地でリリースされた『芸道50周年記念CD』の発売を願う日本のファンも少なく無く、大いに期待したいものだ。

 ところで、韓国歌謡界が久々に放った国際派シンガーとして、本国はもちろん中華文化圏や米国でも人気の男性歌手Rain(ピ)のビデオ・クリップ集が去る5月にキングレコードより発売され人気を博している。

 最近は、ナショナル・フラッグ・キャリアの大韓航空が彼のワールド・ツアーを記念し、機体にド派手なペインティングをした旅客機を登場させ話題を呼ぶなど、前代未聞のコラボレーションそしてプロモーションを展開、メガ・アイドルとして歌謡界で異彩をはなつピであるが、現在ハリウッド映画に出演、ロケーション中とのこと。

 昨年は、日本でのシングルそしてアルバム発売を継続的に行って来たが、10月には韓国で約2年振りとなるオリジナル・アルバム『RAIN'SWORLD』を発売。前述のアジア&アメリカを含む12カ国にわたる世界ツアーの言わば記念CDとしてヒット・チャートを独占したのも記憶に新しい。

 今回、キングレコードより発売のビデオ・クリップでは、初々しさの残るデビュー当時の映像から最新作での一皮剥けた大人びた表情まで多彩な魅力を凝縮、そのメロウなヴォーカルの心地良さも相まって、ファン必携の一枚になることも受け合いだろう…。

 さて、冒頭でも述べたが、最近現地韓国では碕日流鷺の人気沸騰を背景に様々な動きが加速しているので、いくつかのケースを紹介してみたい。

 04年の日本大衆文化全面解禁から早5年、現地では音楽ばかりか映画やドラマは言うに及ばず、ライセンス出版された日本文学や漫画に至るまで今や百花繚乱と言ったところだ。

 特に大手企業までが、日本風なキャラクターやヴィジュアルを用いた手法でTV-CFを展開したり、日本人音楽家にCFタイアップ曲の制作を依頼したりとこれまでとは一味違ったケースが出現している。

 例えば、日本でも知名度が高いとは言えない女声ハープ奏者が大手財閥系企業のCFタイアップ曲を制作したり、著名なコスメティック・ブランド『ラネズ』のCM曲に、インディーズ系の日本人女性歌手、ダリアの曲が使用され人気を呼ぶなど、韓国は中国・香港・台湾・シンガポールと並ぶ、日本エンタテインメント業界にとっても大きなポテンシャルを秘めた市場と化している。

 ちなみに、日本のジャニーズ事務所がマネージメントにタッチしている男性5人組アイドル『嵐』の韓国コンサートには熱狂的なファンがつめかけ、チケットもすべてソールド・アウト、CDも飛ぶように売れ正に“日流”の実力を如何なく発揮、韓国社会に大きなインパクトを与えた。

 ますます面白くなって来た“日流”の嵐から当分目が離せない。


  かわかみ・ひでお 音楽ジャーナリスト。1952年、茨城県土浦市生まれ。日本大学芸術学部美術デザイン科卒業。79年より評論、コーディネート活動を展開。著書に「激動するアジア音楽市場」(シネマハウス)など。