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2007/05/25

<韓国文化>あやつり人形で戦争と平和を描く

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    糸あやつり人形芝居「ドールズダウン」から。役者と人形が一体となって演じる

 在日の劇作家、鄭義信作・演出による結城座・糸あやつり人形芝居「ドールズタウン」が、5月31日から6月5日まで都内で上演される。戦争と平和の問題を取り上げた意欲作だ。鄭義信さん、そして同劇団の中心人物で、重要な役を演じる結城千恵さんに話を聞いた。

◆時代の怒りを表現 ――出演 結城 千恵さん

 糸あやつり人形は世界各地にいろいろあるが、当座の人形は手板と呼ばれる操作板と糸の固定場所により人形に命を吹き込む結城座だけの方法だ。大きさはおよそ60㌢、怪獣等の特殊なものは2㍍、反対に小さな役の人形は5㌢しかない。「顔」「胴」「手」「足」の部分で構成され、あやつり糸は普通で17本、多いものは50本、少ないものは1本である。

 1635年(寛永12年)、初代結城孫三郎が座を開設して以来、既に370年余の歴史をもち、国の記録選択無形民俗文化財と東京都の無形文化財に指定された糸あやつり人形の劇団である。江戸時代の幕府公認の五座の中で歌舞伎三座(市村座、中村座、河原崎座)は座元の名のみ継がれ、薩摩座は姿を消し、座として存続し日本の伝統文化を受け継いでいるのは当座のみである。

 現在、結城座は古典公演はもとより、新作公演、写し絵公演、海外公演と積極的な公演を行っており、本年7月にはアヴィニオン演劇祭の招聘を受けている。

 福田善行作・演出の「お花夢地獄」を上演したのは83年の事。この作品は色々な角度から読み取る事が出来る名作であり、同時に問題作とも言われているもので、社会から阻害された人々を主役にすえた劇である。

 在日の方々との付き合いは、主人公の葛の葉を結城雪斎と共に客演の李麗仙さんが演じたことに始まる。演技のすばらしさはもちろん、(少数者である)在日の李さんゆえに、この作品が大きく意味合いを広げたことは確かなことだった。

 その後、95年に在日の劇作家、鄭義信さんと「水の国のガリバー」で初めて仕事をした。舞台全面に水を張った斬新な演出で、とても美しく、楽しく、しかし演者にとっては体力的にとても過酷な舞台だったのが、昨日のことのように思える。そして今年、12年ぶりに、鄭義信作・演出の「ドールズタウン」の上演が決まった。

 今度の芝居は戦争が舞台。何処の戦争なのか、何時の戦争なのか、分からないが、確かなことは、人形の町の戦争であることだ。大人の目でなく、子供の目からみた戦争の物語は、戦争さえも時には美しく、楽しく、けれども、やはり戦争は悲惨である。戦争に巻き込まれた人の話を観ているうちに、時をこえ、観客も人形の町の戦争に巻き込まれてしまうことだろう。

 鄭義信さんが戦争というものに行き着いたのは、もしかしたら、時代が怒って、悲しんで、燃えようとしているのかも知れない。私達は全身でそれを受け止め、表現しようと努めている。身近に戦争を感じられない今こそ、少しでも多くの方々に見てもらえればこんなにうれしいことはない。

◆戦争を庶民の目で ――作・演出 鄭 義信さん

 夢見がちな少年を通して、庶民から見た戦争とは何であるのかを描きたかった。庶民は戦争の犠牲者であり、また加害者にもなりうる存在だ。

 最近の世相を見ていると、戦争や軍事化に対する警戒心が少ないように感じる。日本人も在日コリアンもあっという間に消滅してしまう戦争というものをもう一度考える契機にしたかった。戦争とは何か事実に即して描こうと考え、膨大な資料と格闘した(笑)。私たちは戦争のことを知っているようで知らないのだと再認識した。

 結城座とは12年ぶりの共演だが、役者と人形が一体になったり、入れ替わったりすることによって、フィクションとノンフィクションをうまく組み合わせることが出来るのが面白い。人形を使うことで、逆によりリアルな表現が可能になるので、演出にも力が入る。

 作家と演出家の両方を今年もこなしており、在日コリアンが登場する演劇や映画もいくつか執筆予定だが、日本社会を見ていて、在日に対する視線がどれだけ変わったのかという疑問を持っている。

 韓流ブームとか、在日の登場する映画がヒットしたりとかの現象は、日本社会が「家族の結びつき」に対する郷愁を、韓国や在日に感じている部分が多いからではないのか。根本が変化せずに表面的なブームだけが残ることに、逆に危機意識を感じている。


■結城座「ドールズタウン」■
日時:5月31日~6月5日
場所:ザ・スズナリ(東京・下北沢)
料金:4.200円
℡042・322・9750