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2007/04/20

<韓国文化> ◇韓日音楽事情◇

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    かわかみ・ひでお 音楽ジャーナリスト。1952年、茨城県土浦市生まれ。日本大学芸術学部美術デザイン科卒業。79年より評論、コーディネート活動を展開。著書に「激動するアジア音楽市場」(シネマハウス)など。

 3月20日から23日までの4日間、香港貿易発展局の主催による『エンタテインメント・エキスポ香港』の一環として、『香港フィルマート2007』及び『香港ミュージックフェア2007』が、湾仔(ワンチャイ)地区にある香港コンベンション&エキシビジョン・センターで開催された。

 躍進する中国経済の牽引車として、ますますその存在感を誇示する最近の香港だが、国際的な金融や流通の拠点としての顔のみならず、アジアにおける映画・テレビ・映像ビジネスの振興及び製作・配給の中心地として新たな役割も担い始めようとしている。

 毎年2月に開催される香港アート・フェスティバルを筆頭に、国際的なイベントも数多い土地柄だが、更なるエンタテインメント産業の育成と促進などを目的に今年から内容もグレードアップされ、特に世界各国から出展した関連企業のブースは、各国から参加した関係者やバイヤーで大いに賑いを見せた。

 90年代中ばに、フランスのカンヌで毎年盛大に開催される国際音楽見本市MIDEMのアジア版として『MIDEM香港』が3回程開催され盛況を博したが、その後の世界的不況とIT関連によるエンタテインメント産業の劇的変化と言う大きな波を受け、音源や映像の発信コンテンツも様変わりの様相を呈しており、今回もダウンロードによる配信ビジネス業者等の参入が注目を集めていた。

 特に『フィルマート』の会場では、未だアジア各国で根強い人気を持続する“韓流”の勢いに乗った韓国映画関連ブースが、積極的に商談を進めているのが印象的だった。

 また、スコットランドの様に独特の風土と美しい自然環境やインフラを売り物に、映画ロケの誘致に積極的な各国自治体のセールスにも熱が入っており、会場は、アジア優数のコスモポリタン・シティ香港ならではの活気に満ちていた。

 『ミュージックフェア』の会場では、中国大陸からの出展ブースが数多く見られ、地元香港のローカル資本と提携して世界へ進出しようと言う意気込みが強く感じられた。

 ただ、中華文化圏(台湾、シンガポールを含む)以外からの参加は少なかったのは残念であった。香港に東南アジア地域の拠点を築いて来たEMI(百代)やユニバーサルミュージック、ソニーBMG香港の現地メジャー3社が花を添えていたのが唯一の救いと言えなくもないが、“映画”はともかくこと“音楽コンベンション”としては、精彩を欠いた感は否めない。

 ただ、国際的な音楽著作制作者団体IFPIや香港電台(RTHK)の強力なサポートを得ていただけに、若手歌手のショー・ケースや記者会見、パフォーマンスは、ひんぱんに開催され、日本人俳優・広末涼子、韓国人歌手RAIN(ピ)の登場には注目が集まっていた。

 唯一の韓国企業として『ミュージックフェア』に出展した新規参入の音響ツール開発業者『SLIMDISC』のマネージャー、シム・サンシク氏のコメントを紹介すれば、「地元香港企業に自社の製品とブランド・イメージを認知できたインセンティヴは少なからぬ効果をもたらしており、今後中国大陸や東南アジア市場へ進出する良いきっかけになった」と、今回のイベント参入の意義を総括していたのは興味深い。

 世界的に注目を集めている韓国映画やTVドラマの影響か、『フィルマート』には、MBC(韓国文化放送)始め、CJエンタテインメントを筆頭に映画制作及び配給会社13社が出展したほか、今年の『釜山国際映画祭』事務局も広報活動を展開し、活況を程していた。

 大手のCJエンタテインメントは、ハ・ジウォン、イム・チャンジュン主演の『一番街の奇跡』など新作映画3本の試写会を開催。また、インドやアラブ諸国で人気上昇中の碕韓流鷺にちなんだTVドラマの売込みにも熱が入り、各企業のブースは商談でごったがえしていた。

 ロマンティックなミステリー映画として注目を集める『消え去って、私の愛よ』の監督ノ・ドンシク氏ヘのインタビューが、会期中毎日発行されるオフィシャル・デイリー・ペーパーにも掲載されるなど、中国・日本と並びアジア諸国の中では、韓国の存在感が一層際立つ印象を受けたのは、筆者ばかりではあるまい。