ここから本文です

2008/03/21

<韓国文化>"薬食同源"の思想が基本

  • bunka_080321.jpg

    鶏肉に高麗人参、もち米などを入れ煮込んだ参鶏湯。まさに"薬食同源"の料理だ

 韓国伝統飲食研究所の尹淑子所長の講演会「体に薬となる韓国の飲食」がこのほど、東京・南麻布の韓国文化院で開催された。公演要旨を紹介する。

 韓国では昔から「体が安泰でいるための根本は飲食である」「飲食によって病を治さなければならず、それが不可能な場合に限り薬を使う」と言われ、何よりも飲食を優先してきた。「薬食同源」の思想をもとに、栄養的な特徴と韓方薬材の機能的な特徴を巧みに調和させてきた。

 韓国人は、陰陽五行(万物は木・火・土・金・水の5つの要素=五行と、陰・陽からなるという伝統的な東洋思想)の五色にあたる5種類の色の 食べ物をバランスよく食べ、五臓六腑が丈夫になることを願いながら健康を守ってきた。

 青 五行の「木」。この色の食べ物は、クロロフィルが含まれており、肝臓の機能を助け、解毒作用が強く、体の新陳代謝を円滑にして、疲れをとる。緑茶、ほうれん草、春菊、梅の実、きゅうり、青唐辛子など。

 赤 五行の「火」。この色の食べ物は、心臓を健康にし、血をきれいにする。赤い色素を出すリコピンという成分は、丈夫な血管を維持し、心臓病を予防し、老化防止の効果がある。赤唐辛子、りんご、柿、小豆、クコの実、ザクロなど。

 黄 五行の「土」。黄色い食べ物は消化力を増進させ、胃腸の機能を高めてくれます。また、ベータカロチンが多く含まれているため、食欲増進と様々な成長を助け、生理作用を円滑にする。カボチャ、蜂蜜、松の実など。

 白 五行の「金」。白い食べ物にはアリシンが多く含まれており、血中コレストロールの数値を下げ、高血圧・動脈硬化・心臓病を予防する。肺や気管支が弱い体質の人にも良いとされる。高麗人参・キキョウの根・ツル人参・大根・梨・にんにく・玉ネギなど。

 黒 五行の「水」。黒い食べ物に入っているアントシアニンという色素は、コレストロールの数値を落とし、腎臓の機能を補います。黒い食べ物には、黒豆、黒ゴマ、黒米、シイタケ、ブドウ、ノリなど。

 栄養のバランスを維持するには五味をバランスよく取らなければならない。偏食は病のもと。韓医学では五行に合わせて五味を分類している。

 酸味 口内に唾液を溜め、食欲を増進させ、脾臓・胃・肝臓の機能を丈夫にする。梅、ザクロ、ユズ、ミカン、アンズ、レモンなど。

 苦味 食べたらすぐにでも飲み込もうとする現象をもたらし、心臓を丈夫にする。お茶、豚のレバー、玉ねぎの皮、杏仁、ホップなど。

 甘味 虚弱体質や消化に難がある人にはよくても、心臓病、肥満、糖尿などにはよくない。砂糖、蜂蜜、水飴、ナツメ、甘草など。

 辛味 汗が出て熱が上がり、しこりをほぐし、新陳代謝を促し、肺を丈夫にする。ショウガ、ネギ、玉ネギ、大根、唐辛子、辛子、にんにくなど。

 塩味 腎臓を丈夫にする。塩、味噌、醤油、塩辛など。

 東洋では人の体質を大きく「陰」と「陽」に分け、さらに体格、体質、性格、五臓六腑の機能などにより「太陽人」、「少陽人」、「太陰人」、「少陰人」に分けることができます。

 太陽人 体格がよく首や胸など上半身ががっしりしている。下半身は虚弱な方で尻が小さい。性格は過激でせっかち。度量が大きく頭が良い。熱が多い体質のため、海産物類や野菜類、淡白な味のものがよく、油気の多いもの辛いものは控えた方がよい。緑茶、そば、白菜、ワラビ、ブドウ、カリンなど。


 少陽人 体格は普通で痩せている方。上半身が強く下半身が弱い。生まれつきお尻が小さい。性格は陽気で活動的。よく他人を助け犠牲精神が強い。熱を多く持つ体質のため、熱い食べ物や油気の多い食べ物はよくない。熱を冷ます野菜や海産物がよい。麦、小豆、緑豆、キュウリ、チシャ、ナス、スイカ、豚肉など。

 太陰人 骨格ががっちりしていて手足が大きい。太っている方で上半身は弱く下半身が強い。首は短く背が高い。少し動いただけでもよく汗をかく。性格は真面目で、我慢強い。肉食に偏った大食家であるため、最も肥満になりやすく糖尿病、高血圧などにかかりやすい。やや熱い食べ物が良い。豆、小麦、牛肉、イカ、栗、松の実、キノコ類、ワカメなど。

 少陰人 体格が小さく背も低い。比較的バランスがよくとれているが上半身より下半身の方が発達している。お尻は大きい。性格は温厚で意志が固い。消化機能が弱いため、過食を避けること。お腹が生まれつき冷たいため、熱くて辛い食べ物が良い。ヨモギ、セリ、ニンニク、高麗人参、鶏肉、ミカンなど。

 韓国人の先祖は、宇宙空間を象徴するときに使う五方色を使って、飲食と薬は1つであると認識しながら、料理に健康と宇宙を込めた。五方色は視覚的な美しさだけでなく、一方に偏ることなく五臓六腑が丈夫であることを願う思いが込められている。