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2009/11/20

<韓国文化>◇韓日音楽事情◇

  • 韓日音楽事情①

    大盛況だった第6回アジア・ソング・フェスティバル

  • 韓日音楽事情②

    アジア各国から人気歌手が参加した

  • 韓日音楽事情③

    かわかみ・ひでお 音楽ジャーナリスト。1952年茨城県土浦市生まれ。日本大学芸術学部美術デザイン科卒業。79年より評論、コーディネイト活動を展開。著書に「激動するアジア音楽市場」(シネマハウス)など。

 初秋の風もさわやかな韓国ソウルのワールドカップ競技場において「第6回アジア・ソング・フェスティバル」が盛大に開催された。

 同フェスティバルは、アジアの国家間の文化交流促進を目指して2004年に始まったもので、国際文化産業交流財団(KOFICE)が主催して、ソウル、光州などで毎年行われている。アジア各国から人気スターがエントリーすることで知られ、ホスト国の韓国からはビッグバン、スーパー・ジュニア、少女時代など4組の人気スターが登場した。

 日本からはV6やGackt、中国からは李宇春、台湾からは羅志祥、香港からは黎明、インドネシアからは歌手で俳優のアグネス・モニカ、さらにウクライナからも前国会議員で歌手のRuslanaも出場した。米国と欧州を含む海外30カ国の主要テレビで収録放送される一大イベントである。

 その華やかなパフォーマンスを一目見ようと、若者を中心に大勢の観客が詰め掛け、場内は興奮のるつぼと化した。

 日本での韓流ブームは、最近は一息付いた気がしないでもないが、日流ブーム全盛の韓国では、日本人アーチストへの熱狂的な声援はすさまじく、時代の変貌ぶりをまざまざと感じずにはいられなかった。国際文化産業財団の関係者は、「アジアが一つの音楽市場として協力して成長していくようなブームを作りたい」と語っていたが、まさに音楽に国境は無しを実感させられるイベントだった。

 時を同じくして、ソウル市内のホテルでは韓国、日本、香港、タイなど、音楽産業界の重鎮が一堂に集う『アジア音楽産業リーダーズフォーラム』が開かれた。

 日本レコード協会会長でユニバーサルミュージック会長兼CEOの石坂敬一氏をはじめ、国際レコード産業連盟(IFPI)香港グループCEOのリッキー・フォン氏、タイ・ソフトウェア産業振興院(SIPA)院長のルンルアン・リムチュパティパ氏らが、「アジア圏に於けるデジタル音楽市場の活性化と音楽産業界の発展案」についてディスカッションを行った。

 日本代表の石坂氏は、世界的に音楽ビジネス・フィールドにおいてコンテンツ産業が果たす役割が増大している現状を踏まえ、衰退する音楽ソフト需要とデジタル化の波をどのように融合させていくのか、また、新しいビジネス・モデルの実践例として、氏が率いるユニバーサルミュージックジャパンで成功を収めつつある『デジタルとパッケージ』を組み合わせた碕住み分け戦略鷺について提言し、多くの共感を集めていた。

 香港代表のフォン氏は、「変化に直面している香港レコード・マーケットの挑戦」と題して講演し、1979年以降、中国市場の斬新的な開放にリンクしつつ急激なデジタル化を成し遂げた香港のエンタテインメント事情を紹介した。

 また、タイのリムチュパティパ氏も、タイ政府の支援を受けて推進中の『デジタル・クリエイティブ・タイ』キャンペーンの現状と将来について熱弁をふるい、多くの聴衆に感銘を与えていた。

 最後にホスト国・韓国代表としてSMエンタテインメント代表理事のキム・ヨンミン氏が講演し、BOAや東方神起など、日本でも人気のメジャー・アーチストの日本およびアジア進出時の成功秘話を披露するとともに、各国で差のあるデジタル配信ビジネスに於ける利益規準の均一化など、アジアのデジタル音楽市場に共同で対処する必要性を力説した。

 近年、米国や欧州市場をしのぐ勢いでアジア圏の音楽産業界は急激な成長を遂げているが、音楽産業界のリーダーが一堂に会してのワーク・ショップや国際フォーラムはこのところ減少しつつある。

 今回ソウルで開催されたこのフォーラムが、多国間交流の一層の円滑化に寄与する機会となってほしいと切に感じた。


  かわかみ・ひでお 音楽ジャーナリスト。1952年茨城県土浦市生まれ。日本大学芸術学部美術デザイン科卒業。79年より評論、コーディネイト活動を展開。著書に「激動するアジア音楽市場」(シネマハウス)など。