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2009/12/04

<韓国文化>韓国映画発展の軌跡理解を

  • 韓国映画発展の軌跡理解を①

    パク・キヨン 1961年生まれ。ソウル芸術大学映画科卒業。KAFA3期生。2003年から学院長を務める。主な作品に『モーテル・カクタス』『ラクダたち』。

  • 韓国映画発展の軌跡理解を②

    『かくれんぼ』 (クォン・イルスン監督)

  • 韓国映画発展の軌跡理解を③

    『コチョルのために』 (ホ・ジノ監督)

 韓国国立映画アカデミー出身の韓国映画監督の作品を紹介する「韓国国立映画アカデミー(KAFA)25周年記念映画祭IN東京」が、12日から東京・渋谷のユーロスペースで開かれる。来日した朴起鏞(パク・キヨン)・同アカデミー院長に話を聞いた。

 ――東京芸術大学と交流を重ね、来年には合同企画を行うと聞いたが、これまでの成果は。

 東京芸術大学大学院映像学科とは、芸大の120周年記念で韓国映画アカデミーとの合作映画を決め、07年に制作し、08年の東京フィルメックスで上映した。芸大とアカデミーの制作専攻の学生で合同ワークショップも続けている。07年の第1回目はソウルで、08年第2回目は箱根で、第3回目は全州で行われた。私は、アジアが共同制作で映画をつくる時代だと確信しているが、人脈をつくる上でも成果があったと思う。

 来年の合同企画では長編を撮ることになっており、今シナリオを書いている。来年3月に撮影、7月に完成のスケジュールだ。また、次回ワークショップは、アカデミーと芸大にフランスの国立映画学校が参加することになっている。


 ――12月に都内で韓国映画アカデミーの作品上映を行うが。

 韓国映画アカデミーが今年で25周年を迎えるにあたり、国内外で記念上映会を行ってきた。5月カザフスタンのアルマトイ映画祭、6月北京の中国戯曲学院、7月ソウル、9月バンクーバー映画祭、10月釜山映画祭と横浜映画祭、11月京都造形芸術大学、そして12月のユーロスペースだ。来年2月のベルリン国際映画祭、またパリで特別上映も行われるユーロスペースでの上映は、日本の観客にアカデミーの卒業生の作品を観てもらう貴重な機会であり、重要と考えている。

 一連の映画を観てもらうことで、韓国の映画青年が何を考え、何に苦悩してきたかが一目でわかるはずだ。卒業生がどれだけ映画に情熱を持っているか感じてもらえればと思う。アカデミーの25周年は、韓国映画の25周年でもあり、韓国社会の25周年でもあり、この25年間の縮小版として理解して欲しい。日本でも有名なポン・ジュノやホ・ジノの作品もあり、2人がアカデミーの学生だった時の作品も観ることができる。両監督の作品『母なる証明』『きみに微笑む雨』は東京で今、公開されているので、学生時代の作品と比べて観るのも面白いと思う。

 またアカデミーでは、07年に長編映画とアニメーションの製作過程を設けた。長編映画および長編アニメーションを、実際に学生に製作させるという意味では、世界唯一の学校と思っている。もちろん世界唯一が重要なのではなく、高い水準の教育ができて、釜山映画祭のような世界的映画祭で、アカデミーの学生の作った映画が受賞できたことが重要であり、誇りに思っている(09年釜山国際映画祭でソ・サンミン監督の『私は苦境に立った』がニューカレンツ賞を受賞したことを指す)

 ――朴院長の映画監督としての活動は。

 院長就任前の主任教授の時代も含めて、9年間映画製作の現場から離れていたので、現場に戻るには時間がかかると思う。ストーリーや素材は頭の中にあるが、まずは、それを整理したい。映画は、私個人が作りたいと思ってもすぐにできるものではないので、今、いつ何を作るとは言えないが、来年下半期には始めたい。

 韓国映画界はこの間深刻だった。多少上昇してきたと思うが、数年前までの良い状態に戻ってはいない。映画制作のシステム自体を検討していく必要があると思う。韓国の映画制作システムはきわめて脆弱だ。そのため、外的条件に規定され、発展と停滞を繰り返している。良い時に戻るのを待つだけはでなく、いつでも良い状態になれるような綿密なシステムを打ち立てる必要がある。現在、韓国映画界は国内市場が飽和状態なので、外国へ出ることが必要だ。日本に韓国映画を輸出しているが、規模は大きくない。もっと大きくするには、共同制作を増やし、最低でもアジアで通用するような、普遍性を持った映画を作っていく必要がある。アカデミーの学生たちが、そこで役立てればと考えている。

 ――韓日の文化交流について。

 韓国と日本は、文化を通じてお互いを知ることが大切だ。「近くて遠い国」という言葉で両国が表現されているが、芸大とのワークショップでも、わかっているつもりで、わかってない事が多かった。相互理解が大切だが、今はまだ不足している。映画、音楽、文学、演劇などお互いに知りあい、相互理解を進めてほしい。芸大との交流もその一助になればと思う。


■韓国国立映画学校

 韓国国立映画学校(KAFA)は韓国の代表的映画教育機関。1984年に映画振興公社(現在のKOFIC)の付設で設立され今年で25周年を迎えた。KAFAは卒業後にプロの映画製作現場ですぐに活躍でき、かつ将来業界を牽引できるようなエリート的人材の養成を目標に、今までに438人の映画エキスパートを輩出している。90年代以降の韓国映画ルネサンスの中心的な役割を果たしている。記念映画祭の詳細はwww.eurospace.co.jp