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2009/12/28

<韓国文化>佐々木直子先生の韓国正月料理

  • 佐々木直子先生の韓国正月料理

    ■ ミルサム ■

  • 佐々木直子先生

    ささき・なおこ 東京外国語大学朝鮮語学科卒業。「KOREAN COOKINGジョン・キョンファスタジオ」勤務を経て現在、フリーで韓国料理に関する翻訳・執筆を行う。訳書に『韓国料理文化史』(平凡社・共訳)など。

 韓国のお正月料理といえば、まず思い浮かべるのはトックッ(韓国の雑煮)でしょう。牛や鶏でとったしょうゆ、または塩味のスープに、うるち米でできた小判型の餅をたくさん入れた、日本のお雑煮と比べてぐっとボリュームのある一品です。

 トックッ以外でお正月によく食べる韓国料理としては、カルビチム(カルビの蒸し煮)、ジョン(肉や魚介、野菜に小麦粉と卵の衣をつけピカタ状に焼いたもの)、サンジョッ(串焼き)、ピョニュッ(ゆで肉の薄切り)、ミルサム(八色野菜の薄皮包み)などがあります。これらは、必ずしもお正月でなくても、祭祀や誕生日など人が大勢集まるときに作るごちそう料理です。

 それらの中でも、作る手間は少しかかりますが、見た目に華やかで味わいも上品な「ミルサム」をご紹介します。

 ミルサムは、小麦粉の生地を薄く焼いた皮(ミルチョンビョン)で、八種類の具を包んで食べる料理で、「ミル」は小麦を、「サム」は包むことを意味します。もともと「九折板(クジョルパン)」という料理名で、同名の八角形の漆器に盛りつける宮中料理でしたが、近年はこのように器にこだわらず、身近な食材で手軽に楽しむ傾向があります。

 ミルサム(あるいは九折板)は、器の中央に薄皮を重ねて置き、その回りに赤、青(緑)、黄、黒の具を2種類ずつ、それぞれ対角に来るようにぐるりと配すのが特徴です。中央の薄皮が白色なので、陰陽五行思想を象徴する五方色をとりいれた典型的な料理といえます。そして、薄皮で八種類の具を少しずつ包んで食べることで、五方色をバランスよく体に取り込むことができるわけです。また「包む」ことは「福を包む」ことに通じ、新年にふさわしい縁起の良い食べ物といえます。


<材 料> (4~5人分)
A 卵     1個
  水     1カップ
塩       少々
小麦粉    100㌘

・にんじん   1/2本
・赤ピーマン  1個
・絹さや    50㌘
・筍       50㌘
・きゅうり    1本
・干し椎茸   3枚
・きくらげ    5㌘

B しょうゆ  大さじ1
砂糖      少々
おろしにんにく 少々

・卵       1個
・植物油    適量
・ごま油     適量
・塩・こしょう  少々

C しょうゆ  大さじ2
 酢       大さじ1
砂糖      少々


<作り方>
①Aを泡立て器で手早く混ぜ合わせ、ラップで覆って30分ほど寝かす。
②ホットプレートを中温に熱して植物油をひき、1の生地を大さじ1杯ほど流し入れて直径10㌢の円形に薄く広げる。途中で裏返して両面焼き、ザルに上げて粗熱をとる。
③にんじん、赤ピーマンは千切りにし、ごま油をひいたフライパンで塩、こしょうをふりながら別々に炒める。絹さやもすじをとって千切りにし、同様に炒める。
筍も千切りにし、同様に炒める。
④きゅうりは千切りにし、塩少々をふってしんなりさせた後、水気をしぼって同様に炒める。
⑤干し椎茸、きくらげは水につけてもどし、石づきを切り落としてそれぞれ千切りにする。Bを混ぜ合わせ、椎茸ときくらげに半分ずつかけて下味をつけ、ごま油をひいたフライパンで別々に炒める。
⑥卵はときほぐし、ごま油をひいたフライパンで薄く焼いて千切りに。
⑦大皿に薄皮をと具をいろどりよく並べる。
⑧Cを混ぜ合わせて酢じょうゆを作る。
*薄皮を1枚とり、8種類の具を少しずつのせてくるりと巻き、酢じょうゆをつけていただく。