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2010/05/28

<韓国文化>韓日の歴史を舞台劇に

  • 韓日の歴史を舞台劇に①

    渡来人を描いた総勢50人の群像劇『太陽の帝国』

  • 韓日の歴史を舞台劇に②

    アジア演劇の魅力を伝える『王女メディア』

 静岡県舞台芸術センター(SPAC)主催による「Shizuoka春の芸術祭2010 未完成な世界」が、6月5日から7月4日まで、静岡芸術劇場と舞台芸術公園をメイン会場に開かれる。今年は韓国の演戯団コリペによる『太陽の帝国』、ギリシャ悲劇『王女メディア』を韓日を舞台に大胆に脚色した作品が上演される。

 『太陽の帝国』は、古代日本を舞台に、韓国の巨匠、李潤澤(イ・ユンテク)氏がつくりあげる壮大なドラマである。韓半島と日本の古代史にも造詣が深く、韓日関係をテーマにした作品にも意欲的に取り組んできた李潤澤氏は今回、紀元400年の渡来人の物語を題材にした。

 総勢50名の俳優・スタッフが来日し、野外劇場の幻想的な空間を埋め尽くす壮大な歴史絵巻で、「征服ではなく定着、支配ではなく共存」をテーマにした。

 紀元400年。高句麗の広開土(クァンゲド)大王は、伽倻の城を攻撃する。5万の大軍に攻められた城は陥落し、伽倻の王家は降伏する。しかし、騎馬武人で鍛冶屋のセブルカン、陶工のノマ、そしてもともと倭人であったが学問のために伽倻に滞在しているスザンは降伏を拒否し、海を渡ることを決意する。セブルカン一行が到着した地は、現在の九州、筑紫であった。日本にたどり着き、渡来人となったセブルカンたちは、いったん天照(あまてらす)3世の奴隷となるが…。

 李潤澤氏は、詩人、劇作家、演出家、シナリオ作家、映画監督など様々な芸術領域を貫く芸術家。釜山で旗揚げした劇団「演戯団コリペ」を韓国最高峰の劇団にまで発展させ、「文化のゲリラ」というニックネームも付けられている。04年には韓国国立劇場国立劇団の芸術監督を務め、韓国の大学をはじめ世界各地において独自のメソッドを教えている。現在は韓国の蜜陽(ミリャン)に演劇村を造り、団員達と合宿生活をしながら活発な創作活動を続けている。

 一方の『王女メデイア』は、99年に初演され、翌年の第一回「Shizuoka春の芸術祭」で上演されて以来、韓国、ロシア、イタリア、フランス、インドなど10カ国19都市で上演を重ねてきた宮城聰・芸術総監督の代表作のひとつ。

 古代ギリシアの英雄イアソンとその妻メデイアをめぐって繰り広げられる壮大な「子殺し」の悲劇を、明治時代の日本に舞台を移し、ギリシャが日本、メディアの出身国コルキスが韓半島に設定され、韓半島と日本との100年の歴史を考えさせる内容となっている。

 歓楽街の座興で演じられる劇中劇として再現する。セリフを語るのはすべて男。その言葉に操られるように動く女たち。宮城聰が長年にわたって追求してきた語りと動きを分ける二人一役の手法がストーリーと密接にからみ合い、 やがて言葉の支配をくつがえすかのように女たちの反乱が始まる。

「語り」「動き」「生演奏」の三位一体によるこの「祝祭としての悲劇」は、世界各国で高い評価を獲得している。


■『王女メディア』
日時:6月19日、26日午後7時30分開演
場所:舞台芸術公園野外劇場「有度」

■『太陽の帝国』
日時:7月3日午後7時30分
場所:舞台芸術公園野外劇場「有度」
 *7月4日午後4時、静岡市伝馬町けやき通りで、演戯団コリペのパレード開催
料金:各4000円
電話:054・202・3339(SPAC)