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2010/08/27

<韓国文化>クラシックの神髄を学ぶ

  • クラシックの神髄を学ぶ①

    鄭明勳氏の指揮で学生たちは演奏した(撮影・堀田力丸)

  • クラシックの神髄を学ぶ②

    演奏後、大きな拍手を受けた鄭明勳氏と学生たち

 韓国出身の世界的指揮者・鄭明勳氏、そして韓国出身のソリストたちと東京音楽大学の学生たちが共演したオペラ『リゴレット』が、このほど都内で公演され大好評を博した。東京音大が学生たちの教育のために企画したもので、学生たちはクラシックの神髄を学んだ。同大学の野本正平・広報担当理事に文章を寄せてもらった。

 今回の『リゴレット』は、マエストロ(鄭明勳氏)が来日した翌日から毎日、リハーサルも入れ7日間の集中練習で本番を迎えた。本学の学生達にとって、今回のように集中して一つの演奏曲目を練習することはまれな経験の上、世界的指揮者の鄭明勳氏に7日間休みなく指導していただけたことは、何よりの喜びだったと思っている。

 マエストロは練習中の指揮台の上から、オペラの筋書きやキャラクターの説明などもしながら、学生たちの弾き熟せていない部分を取り出し、丁寧に時間をかけて練習させることもあった。また、時には面白い話をして学生たちを笑わせ、雰囲気を和ませることもあった。

 そんな中、マエストロと学生達の間には、練習初日から変わらぬ良い意味での緊張感が続き、本番では学生一人一人がマエストロと共に自分たちの『リゴレット』を作り上げたいと言う気持ちが出せたことが、何よりの成果のように思う。

 マエストロからは、時間を無駄に使わないこと(短い日程の中で集中的、効果的に行ってくれた)、時間を守ること(先生がとてもきちんとしていたので、学生も緊張し遅刻など出来る雰囲気でなかった)、世界的指揮者であっても、日々勉強しておられること(いくつになっても学ぼうとする精神が練習中も感じられた)を知った。さらに、音楽家も体力を維持し、健康管理が大切であること、音楽だけでなく外国語も学ぶ大切さ(世界で活躍する音楽家になりたいなら、語学も出来ないと話にならない)を、学生たちにとてもよく指導してくれた。

 また、一般的に日本でクラシックを勉強している日本人の学生の多くが欧米に関心を示す傾向にあり、在学中に欧米のコンクールへの参加、欧米の音楽大学への短期留学、各種講習会等のために出かける学生が多く、クラシックの分野ではアジアへの関心、とりわけ韓国、中国への関心は必ずしも高くない傾向にある。しかし近年、欧米の音楽大学、音楽院ではアジアからの留学生の比率が非常に高く、現地で韓国からの優秀な学生に接し驚愕することも珍しくない状況である。

 韓国の優秀な人材は欧米で活躍しており、必ずしも日本で彼らの十分な情報が入るとは限らない傾向にある。

 しかしながら今回、1週間という短い期間ではあったが、マエストロが選んだ韓国からの素晴らしい歌い手と中身の非常に濃い集中的な練習を通じ、東京音大の学生が受けた影響は計り知れない大きなものであった。

 韓国からのソリストたちの集中力、パワー、音楽対する姿勢などは東京音大の学生を圧倒しており、彼らから受けた影響はマエストロから受けた影響に優るとも劣らないものであったことは明らかで、学生の韓国への関心が高まったことが、強く感じられる結果となった。

 現在、東京音楽大学では英国、ドイツ、オーストリア、ハンガリーの各音楽大学、音楽院と提携を結んでおり、本年度から中国の音楽院も加わった。近い将来、台湾、そして今回の演奏会を通じて韓国の音楽大学とも交流を持つことを検討している。日韓音楽交流を将来発展させるためにも、今回の経験は得がたいもので、マエストロと韓国のソリストたちに、改めて感謝したい。