ここから本文です

2011/02/25

<韓国文化>"家族愛"を描き出す

  • “家族愛”を描き出す①

    朱鎮模(チュ・ジンモ) 1974年韓国生まれ。モデルとして活躍し、兵役後に映画デビュー。99年『ハッピーエンド』で大鐘賞(韓国版アカデミー賞)助演男優賞受賞。『カンナさん大成功です』『愛サラン』などに出演。4月に日本でファンミーティング開催予定。

  • “家族愛”を描き出す②

    金知雲(キム・ジウン) 1964年韓国生まれ。舞台演出を手がけた後、『クワイエット・ファミリー』で映画監督デビュー。第2作目『反則王』が大好評を博す。その後も『甘い人生』『グッド・バッド・ウィアード』など次々と話題作を発表する。

 韓国映画の話題作の日本公開が相次いでいる。人気俳優の朱鎮模が、脱北して韓国の裏社会で生きる男を演じた『男たちの挽歌』(ソン・ヘソン)は公開中。人気俳優のイ・ビョンホンとチェ・ミンシク主演のサスペンス映画『悪魔を見た』(金知雲監督)は26日に全国公開される。来日した朱鎮模と金知雲監督に話を聞いた。


◆南北分断の悲劇テーマ・兄弟愛への共感を ――朱鎮模(チュ・ジンモ、『男たちの挽歌』主演)

 この映画は1986年に公開された香港映画『男たちの挽歌』のリメークだ。私は中学生ぐらいの時にオリジナル作品を観て、あこがれたことを覚えている。

 今回の作品では主人公が北朝鮮の元特殊部隊員で、脱北する際に弟と生き別れ、いまは釜山で武器密輸組織に関わる人物に設定してある。

 それによって、現在も続く南北分断の悲劇と、家族生き別れの苦しみ、兄弟愛を描く設定にしている。家族の愛情は世界共通だし、多くの人の共感を得ると思う。だから日本や在日の人たちの反響が楽しみだ。

 撮影前、韓国で暮らす脱北者から話を聞き、またドキュメンタリーなどを見て、少しでも脱北者の心情を理解できるように務めた。北の方言も練習したが、脱北後、韓国で長く暮らしている設定なので、そこはあまり気に留めなかった。それよりも特殊部隊出身という役なので、武術の訓練には力を入れて取り組んだ。アクションシーンではそれが生かされたと思う。

 (恋愛シーンがない映画なので)撮影現場は残念なことに男ばかりだった。だから話が弾まないことも多く(笑)、ツイッターを多くやって時間をつぶしていた。それもいい経験になった。

 最初はモデルの仕事をしていたので、演技をきちんと学んだ経験がない。だからテクニックよりも、与えられた役柄の感情をきちんと理解し、その役に入り込むようにしている。

 日本の作品に出たことはないが、機会があればぜひ出てみたいし、その結果として韓日交流に寄与できればと思っている。


◆純愛ゆえの”復讐”とは ――金知雲(キム・ジウン、『悪魔を見た』監督)

 本作は、チェ・ミンシクさんがシナリオに惚れたところからスタートした。そして、私に声がかかった。

 初めてシナリオを読んだとき、パワフルで本能的で荒削りなものを感じ、『このシナリオを自分のスタイルに書きかえてみたい」と強く思った。残酷でありつつも美しい、そういう叙情性をこのシナリオに加えたいと考えた。

 私は、映画のジャンルが持つ魅力を常に重要視している。面白い映画とは、観客が片時も目を離せなくなる作品だと思っている。本作のジャンルは過激なシーンが多いゴア・スリラーだ。ゴア・スリラーが持つ映画的緊張感と快感を活用したいと、本作を撮る際には考えていた。

 本作は復讐の「行為」ではなく、「感情」を描いた作品だ。復讐の行為を突き詰めるとスプラッターになるが、復讐の感情を突き詰めると純愛になるのではないか。

 愛する人を失った男の内面(悲しみ)や傷を描いたつもりだ。「もし、自分が愛する人を失ったらどうする?」と常に考えていた。

 本作を過激に感じるのならば、それは、リアル過ぎるくらいリアルに演じたイ・ビョンホンさんとチェ・ミンシクさんのおかげだと思う。

 チェ・ミンシクさんが演じるのは、言わば「純粋な悪」だ。イ・ビョンホンさん演じる、愛する人を殺された復讐としての「歪んだ正義」。それらがぶつかるのが本作だ。

 復讐は、復讐の対象が消滅していなくなるという矛盾を抱えている。完全な復讐などはない、ラストではそういったことを伝えたかった。