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2011/04/22

<韓国文化>音楽の感動を伝えたい

  • 音楽の感動を伝えたい

    チョン・ミョンフン 1953年ソウル生まれ。89年パリ・オペラ座バスチーユの音楽監督就任以来、ベルリン・フィル等のオーケストラはもちろん、ウィーン国立歌劇場等でのオペラ指揮を中心に世界中で活躍。現在、フランス放送フィル、アジア・フィル、ソウル・フィルの音楽監督を兼任。青少年の音楽教育活動にも熱心に取り組む。また音楽を通じたアジアの友情関係を築くため、活発なアジア音楽外交を展開。

 韓国出身の世界的指揮者、鄭明勳氏がソウル・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督を務めて6年が経つ。「韓国そしてアジアのクラシック発展に尽力したい」と同楽団を急成長させた。

 ソウル・フィルハーモニー管弦楽団(ソウル市立交響楽団)は、韓国国内ではKBS交響楽団と並ぶ実力と評価されている。前身は解放後の1948年に結成されたソウル交響楽団で、韓国戦争時には海軍所属の音楽隊として活動。57年にソウル市立交響楽団として再出発した。

 初代指揮者は金生麗(キム・センリョ)氏で、ちなみに同氏が指揮者をしていた60年に、当時7歳の鄭明勳氏が同楽団の少年少女音楽隊の一員としてデビューしている。

 同楽団は、欧州のオーケストラでもマーラーの交響曲をあまり演奏しなかった時代にマーラーの交響曲に挑戦。また80年代には韓国代表として欧州や米国で巡回公演を行ったこともある。しかし、世界的レベルには時間がかかるとの評価がなされたことから、鄭明勳氏に音楽監督を要請、鄭氏も「母国のクラシック発展に尽くしたい」と快諾し、2005年から音楽監督を務め、現在に至っている。

 鄭氏は音楽監督就任直後から団員のオーディションを実施し、国籍・人種を問わず優秀な音楽家を探してきた。これまで半数近くの団員が入れ替わり、現在も随時オーディションを行っている。

 「オーケストラの実力向上には時間を要する。優秀な指揮者と優秀な団員、それに周囲のサポートが必要だ。以前、イタリア・ローマの聖チェチーリア音楽院管弦楽団で音楽監督を務めていたが、その時は優秀な団員を選ぶのに6年かかった。フランス放送フィルハーモニー管弦楽団からこれまで、優秀な演奏者5人に入団してもらったが、彼らの演奏に他の団員が学んでほしいと考えたからだ」

 同楽団は昨年5月と6月にイタリア、ドイツ、チェコ、ロシアの4カ国9都市を回るワールドツアーを行い、「世界レベルのオーケストラ」と高く評価された。今後、米国の大都市でも演奏会を計画している。モーツァルト、ベートーベン、ブラームス、チャイコフスキーなどの名曲を定期演奏会で発表すると同時に、韓国の現代作曲家、陳銀淑(チン・ウンスク)を常任作曲家に迎えて、定期的に現代音楽の演奏も行っている。

 また、ソウル市民とクラシック音楽の魅力を分かち合うため、病院や、図書館、区民会館などでの演奏会をはじめ、こどもの日や独立記念日の光復節には野外公演も開催している。

 昨年の欧州ツアーの演奏を聴いた世界大手のクラシックレーベル「ドイツ・グラモフォン」の関係者からアルバム発売を打診され契約を締結。8月には昨年に続く欧州ツアーと、「エディンバラ国際音楽フェスティバル」にも参加する。

 その欧州ツアーを前に5月、東京、大阪、富山で日本公演を行う。東日本大震災の影響で公演中止も検討されたが、鄭氏の希望でチャリティーコンサートとして行われることになった。

 「3月11日は仕事で日本にいて、大地震を経験した。私は日本に最も近い隣国の韓国人であり、音楽を通じてたくさんの友人が日本にいる。いつも温かく受け入れてくれる日本で、何かしなければいけないと思った。こういう状況だからこそ、日本へ行こうと楽団員と話した。音楽の感動、愛のメッセージを伝えたい」

 コンサートには日本の人気女性バイオリニスト庄司紗矢香も、被災者支援の願いを込めて特別出演する。