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2011/06/03

<韓国文化>音楽で平和のメッセージを

  • 音楽で平和のメッセージを

    スミ・ジョー ソウル大学校音楽大学を経てサンタ・チェチーリア音楽院卒業。87年指揮者カラヤンのもと、ザルツブルグ音楽祭で『仮面舞踏会』のオスカル役を演じ、カラヤンから「スミ・ジョーの歌声は、神からの最高の贈り物」と絶賛される。韓国では国民的スターと評される。日本公演は16日から愛知、札幌、東京、福岡、大阪。演奏曲目はシューベルト「ます」、モーツァルト「ああ、ママに言うわ」による変奏曲ほか。℡0120・499・699。

 世界の歌劇場で活躍する韓国出身のソプラノ、スミ・ジョー(韓国名・曺秀美/チョ・スミ)が、今年デビュー25周年を迎えた。ユネスコ平和芸術家としても活動する曺秀美さんに話を聞いた。

 ――今年、デビュー25周年を迎えたが。

 すでに25年も経ったかという思いと同時に、25年間のすべてのことが生き生きと思い出される。

 イタリア留学のため旅立つ時、両親とお別れした時、留学時代、アパートで一人過ごしながら将来を考えたこと、カラヤン先生に会った時の驚き、国際コンクールで優勝した時の記憶から、イタリアのトリエステで初めて舞台に上がった時のときめき。その後、世界5大オペラ劇場で歌い、歓呼を受けたことなど、すべてがついこの間のようによみがえる。

 ――クラシック以外の分野でも活躍しているが。

 音楽に対して、クラシックと大衆音楽という区別をしていない。観客と共に呼吸し、楽しみと喜びを一緒にすることができるならばどんな音楽ジャンルにも喜んで挑戦していく。

 もちろんクラシック音楽の中でもさまざまなスタイルの音楽があり、例えばアリア、ドイツ歌曲、イタリア歌曲、フランス歌曲、バロック音楽などに今まで挑戦してきた。 クラシックでないクロスオーバーでは映画音楽、ミュージカル音楽、世界のフォークソングなど多様な分野に挑戦してきたし、今後も続けていきたい。

 ――ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の平和芸術家として活動を続けているが、世界平和、韓日交流に対して思うことは。

 ユネスコ平和芸術家に指名されて以後、多くのことを考えるようになった。音楽を通した平和のメッセージ伝達が私に課せられた命題だが、この命題は単純に文化交流の側面だけを意味しているのではなく、それよりもっと大きい意味、すなわち平和を伝えるメッセンジャーの役割だと考え、活動している。

 世界的にテロと戦争が発生している今日、しなければならないことがとても多いことに、正直、悩む時もある。ひとりのアーティストとして強い影響を及ぼすことは無理かも知れないが、音楽によって表現されるメッセージは大きい力になることができるだろうと考えている。とりわけ次世代の子どもたち、青少年らに明るい未来の希望を見せてあげたい。

 韓日間ではすでに多くの団体が文化的交流活動を行っている。私が日本で公演をするのもその活動の一つになるだろう。

 ――世界トップクラスの歌手を維持する秘訣について。

 精神的、肉体的に常に健康であることが大切だ。精神的な健康を維持することで、体に力がみなぎり、幸せな気持ちを持って歌うことができる。また肉体的に健康でなければ良い声を出すことができない。そのため運動を欠かさず行っている。また各オペラ作品の文化的・歴史的背景を勉強し、歌に込められた意味を深く理解するように努力している。

 ――日本でのリサイタルの内容と抱負を。

 6月の日本公演は、私の25年間の音楽生活の集大成的公演になるだろう。オーケストラとの共演は派手で良く見えるが、歌声をしっかりと聞かせるならば、本来ピアニストと二人きりで行う公演だ。大変ではあるが、私の歌声を最も正直に見せることができる舞台になると確信している。

 私の最も親しい友人であり優れたピアニストのヴィンチェンツォ・スカレーラ氏とともに、オペラアリアの真髄を伝えるプログラムを作った。音楽水準の高い日本のファンに満足してもらえるよう努力するので、期待してほしい。

 ――最後に東日本大震災の被災者へメッセージをお願いしたい。

 日本の地震報道に初めて接した時、とても驚いてテレビの前を離れることができなかった。これまでも9・11テロ、ハイチ大地震など驚くべき事件が多かったが、私が定期的に公演を行っている日本でこのような大きい地震が発生したことに、とても胸が痛む。

 被災者の方々が一日も早く日常生活に戻れるよう、何かしらの支援ができればと考えている。