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2011/07/01

<韓国文化>子ども達の韓日美術交流を

  • 子ども達の韓日美術交流を

    東日本大震災で被災した中学生たちに書いてもらった大漁旗。韓国で展示予定だ(前方左端が魚田元生さん)

 NPO法人国際芸術宇宙センター(魚田元生代表)主催の「日韓交流アート・コスモス展」(東洋経済日報社、韓国文化院など後援)が、7月に釜山、8月に横浜で開かれる。「夢」をテーマに両国の子ども達の絵画などを展示し、友好と交流を深める企画だ。魚田さんに文章を寄せてもらった。

 韓国「DMZアート・フェスティバル」に招待され、参加した。DMZ(非武装地帯)とは、韓国と北朝鮮の国境沿いに設けられた幅2㌔(計4㌔)におよぶ統制線。そこにあるソッジャンリ美術館、野外展示場での展覧会である。

 非武装地帯とはいえ、いまも戦争状態にある韓国と北朝鮮。出品された作品にはそれぞれ、作家一人一人が、それを念頭において思考と手わざを重ねたであろう、線と形があった。あるいは38度線という現実において見たから、そう見えるのか。テーマと格闘するのもしないのもそれぞれの作家個人の問題ではあるが、小生自身、より具体的な作品制作になった気がする。

 さて、7月2日~8日、韓国釜山市海雲台文化会館で、日韓交流アート・コスモス展が開催される。韓国側は、李旻漢(イ・ミンハン、釜山大学校教授)氏と金玟慶(キム・ミンギョン、慶城大学校、新羅大学校講師)氏の2人にまとめていただいた。展示予定は、子どもたち(日本100人、韓国80人)、美術家(日本50人、韓国30人)。

 オープニングには、パフォーマンス、ヒップホップ、トランペットやチェロの楽器演奏などを予定している。日本からは、作家、ギャラリーオーナーなど20人近くが現地入りする予定だ。

 日本では「第1回長者町アート・フェスティバル」は、8月20日~29日、横浜市関内のギャラリーSHIMIZUで、韓国展に出品した作品を展示する。作品展示のほか、子どもたちのワークショップ、日韓「食文化」交流などを行う。オープニングにはギャラリー前の道路50㍍ほどを開放して、韓国舞踊、フラメンコ、ヒップホップ、歌、パントマイムなどのパフォーマンスを繰り広げる予定である。

 先日、今回の東日本大震災の被災地、宮城県石巻市の門脇中学校に行ってきた。2㍍四方の布を用意して、美術部の中学生20人ほどに、彼らが考える大漁旗を描いてもらった。2日間で4枚、完成した。今回の東日本大震災で被災した東北地方の沿岸部において、子どもたちと一緒に「大漁旗」を制作する美術プロジェクトの一歩。子どもたちに、喜怒哀楽や将来の夢をテーマに、自由に描いてもらうのである。

 また、「アートに枠なんてないよ、視点は360度どこにでもあり、いろいろなことができるよ」といったことを知ってもらう、アートは楽しいことだと知ってもらう。そのために、大漁旗とは別に、通常の画用紙ではなくデニムのスーツ上下に、私(魚田)の頭、顔、身体を自由に描いてもらった。グループの中に一人、最後まで笑顔のなかった少年がいたが、描くことが好きなのか、熱心に描いていたのが印象に残った。

 今回の大漁旗プロジェクトは、仙台の中学校の校長先生がパイプ役をつとめてくれた。現地の友人の案内で実際の被災地を歩いたが、ただ立ちすくむばかりであった。しかし、足を踏ん張り、カメラのシャッターを切り続けた。

 中学生に描いてもらった大漁旗と、その制作の背景にある被災地の写真を、前述の韓国釜山市海雲台文化会館と、横浜市関内のギャラリーSHIMIZUに展示する予定である。

 NPO法人国際芸術宇宙センター(略称アートコスモス)を設立して3年目に入った。設立の目的は、ひと(人)、もの(物)、こと(事)の出会いと創造。09年8月に開催した設立記念展のテーマは、「生命(いのち)」だった。設立展開催をきっかけとして、各地の、アーティストだけでなくさまざまな方、職業・年齢を問わず大人だけでなく子どもたちにも、「生命」をテーマに思いや詩などの「ことば」を募集しており、近々まとめて本にしたい。