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2012/01/13

<韓国文化>演劇通して韓日交流促進

  • 演劇通して韓日交流促進

    わだ・よしお 1951年山口県生まれ。82年から劇作家・岸田理生との共同作業を続け、92年オーストラリアのアデレード・パース国際演劇祭で『糸地獄』を上演し絶賛を得る。01年よりオーストラリアやカナダの先住民の劇作家との共同作業を始める。『居留地姉妹』『ウィンドミル・ベイビー』など。楽天団代表。07年より日本演出者協会理事長。

  • 演劇通して韓日交流促進②

    劇団サンスユ『奇妙旅行』

 第2回日韓演劇フェスティバル(日本演出者協会主催)が1月17日から3月4日まで、東京、大阪、福岡で開催される。韓日文化交流を促進するためのイベントで、会期中には在日シンポジウムや日韓文化祭も開かれる。和田喜夫・日本演出者協会理事長に文章を寄せてもらった。

◆「在日の文化、多くの人と共有を」◆

 2009年6月に一カ月間、東京で『第1回日韓演劇フェスティバル』を開催した時から、全国的に展開できないかと思い続けていた。しかし、この事業は演出者協会にとっては規模が大きく、継続を危ぶむ声も多くあった。延べ7000人以上の方が来場されたが、制作的には大赤字を出してしまったからだ。

 2010年春にソウルで、韓国演劇演出家協会、ソウル演劇協会、韓国演劇協会の代表とお会いし、「規模は大きくなくとも続けましょう!」という強い言葉を頂き、協会で協議を重ね、第2回の開催を決定した。

 第1回目にかかげた目標は、韓流ブームで日本における韓国への関心は一挙に高まったが、それはほんの一部分に関してでしかなく、より深いレベルでの交流を実現しよう、ということ。また、在日の現状と文化の素晴らしさを多くの人と共有しよう、ということ。その実現のために、世代やジャンルや国を超えて多くのひとが集まる場所、マダンを創ろうということだった。

 私にとって毎日が出会いと発見の連続だった。韓国の若手劇作家で『ちゃんぽん』の作者ユン・ジョンファン氏が語ってくれた「人間は皆こころに傷を持っている。だから演劇が必要なのです」という言葉は世界中のひとに伝えたい名言だ。

 観客や参加者の反響はさまざまだったが、最も多かったのは「いかに韓国のこと、在日のことを知らないか、ひしひしと感じた」という言葉だった。在日3世の若い人達からの「韓国の演劇や在日の文化がこれほど素晴らしいものだと知らなかった」、「自分たちが参加し、発言できる場所としてぜひ継続して欲しい」と涙を浮かべての感想もあった。お互いを理解し合うには開かれた場所での恒常的な交流を行う必要を次の課題として強く感じた。

 演劇は世界を映す鏡という言葉があるが、価値観の葛藤を社会との結びつきの中でさまざまにエネルギッシュに描いている作品が多い。それは今の日本では少なくなっている。韓国は発散型で、日本は抑制型という韓国の演出家の発言があったが、韓国戯曲に挑んだ演出家も俳優も、韓国の生活や想いに触れた喜びと、演劇をやることの異なる喜びを発見したように思う。

 第2回目となる今回は、当初の念願通り複数の都市、東京・大阪・福岡の3都市での開催となった。また、今回は多くの若手、多くの女性が推進に加わっている。次世代や女性にどのようにバトンタッチするか、それも大きな課題となっている。

 東京では女優の洪明花さんがコーディネートと戯曲翻訳に奮闘し、大阪では2010年度の若手演出家コンクールで最優秀演出家賞を受賞した劇団Mayの金哲義氏と、注目の劇団タルオルムの金民樹さんが劇団公演の作・演出だけでなく済州島の劇団ノリペハルラサンの招聘などに奮闘し、また福岡では釜山との演劇交流を重ねている劇団GIGAの山田恵理香さんがコーディネートと公演と劇団ヌリエの招聘など企画全面に奮闘している。

 より多くのひとに韓国演劇を知ってもらいたいと考え、映画で大ヒットした『トンマッコルへようこそ』を、3都市を巡演する作品として選んだ。もともと舞台作品として書かれたオリジナル戯曲による上演なので、ぜひ観て欲しい。この作品を選んだもう一つの理由は、南北の統一への切なる思い、反戦への思いが、現代の日本社会への大きな問いかけになるということだ。

 東京だけの上演だが『奇妙旅行』は韓国の話題の女性演出家リュ・ジュヨンさんによる舞台だ。日本の劇作家・演出家の古城十忍氏が書いた、被害者の家族と加害者の家族が一緒に旅行する内容で、この演出によりリュ・ジュヨンさんは新人演出家賞を受賞している。

 29日の在日のゲストによるシンポジウムは今回も劇作家の鄭義信氏のアイデアで“ちゃんそり~在日ってどないやねん!?~”というタイトルとなった。小説家の梁石日氏、映画監督の崔洋一氏、音楽家の夫歌寛氏、詩人のぱくきょんみさん、中村純さん、そして女優の朴璐美さんなど多彩なゲストが出て下さることとなった。また、21日は子供も大人も楽しめる《おいでよ、マダン!!日韓文化祭》の日として、金基英さんによる韓国民話の語り、伝統遊び、またテコンドー、パンソリなどの上演がそろった。

 一人でも多くの方が来て下さり、新たな出会いによってこのフェスティバルを生き物にすることが、全員の願いである。


■第2回日韓演劇フェスティバル

東京 日時:1月17~3月4日
   会場:あうるすぽっと他
大阪 日時:2月3~19日
   会場:ドーンセンター他
福岡 日時2月11~19日
   会場:大博多ホール他
電話:03・5909・3074
HP:http://jda.jp/
 *あうるすぽっとで17日=オープニングセレモニー、19日=韓国演劇事情シンポ、27日=マルセ太郎回顧展、29日=シンポ「ちゃんそり~在日ってどないやねん!?~」あり。2月24日~3月4日は東京演劇アンサンブル公演『荷(チム)』(東京・ブレヒトの芝居小屋)。