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2012/02/17

<韓国文化>歴史を知れば未来が見える

  • 歴史を知れば未来が見える①

    右から鄭勝吉、坂手洋二、伊籐克、禹美花氏

  • 歴史を知れば未来が見える②

    稽古風景

  • 歴史を知れば未来が見える③

    作者の山谷典子さん㊨と出演の鬼頭典子さん

 知られざる韓日近現代史にスポットを当て、そこから未来を見つめる舞台が相次いで上演される。24日から都内で上演される演劇『荷(チム)』は、解放直後に日本から祖国に戻ろうとした浮島丸の沈没事件を、3月10~11日に神奈川で開催される横浜しんさい市民ミュージカル『ト・キ・ノ・キ・ズ・ナ』は、1923年の関東大震災と現代を舞台に、人の絆のあり方を考える。

◆両国が背負う重い”荷(チム)”とは 東京演劇アンサンブル『荷(チム)』◆

 東京演劇アンサンブル公演『荷』は、韓国の女性劇作家・鄭福根さんの原作を日本語に翻案した韓日共演の舞台。

 祖国解放直後の1945年8月24日、日本に強制徴用されていた韓国人労働者とその家族らが、釜山に戻るため乗り込んだ浮島丸号が京都の舞鶴港沖で爆破し沈没、大勢の乗客が死亡した事件を現在の視点で描く。

 韓国人男性・金潤植と日本人女性・小野芳子の間を往来する”荷”。旧日本軍によって従軍慰安婦にさせられた韓国人女性の持ち物だった。

 金潤植の祖母役で出演する禹美花さん(37)は、「韓日の歴史をテーマにした作品を日本で上演出来ることはうれしい。本来は国が背負うべき荷を、個人が背負わされている。その事実を訴えたい」と話す。

 金潤植役の鄭勝吉さん(39)さんは、「歴史的事実を韓日の人々が知るきっかけになればと思って演じている。上演作品が両国相互に増え、新しい交流が生まれてほしい」と語る。

 小野芳子の祖父役の伊藤克さん(80)は、「少年期に戦争を経験した者として、平和の尊さ、市民の連帯を訴える芝居にしたい」と述べた。演出の坂手洋二さん(49)は、「原作が提起する問題をしっかりと伝えたい。日韓演劇交流を活性化させるため、国がもっと支援してほしい」と話した。

■荷(チム)■
日時:2月24日~3月4日
場所:ブレヒトの芝居小屋
  (西武新宿線・武蔵関下車)
料金:当日一般4500円ほか
電話:03・3920・5232
HP:http://www.tee.co.jp


◆助けあい危機乗り越える人々 横浜しんさい市民ミュージカル『ト・キ・ノ・キ・ズ・ナ』

 『ト・キ・ノ・キ・ズ・ナ』(かながわ絆プロジェクト)は、横浜市民有志とプロの役者・演出家が一緒になって創り上げるミュージカルだ。

 戦争体験の聞き取りを行い、それを演劇で発表する活動を続けている文学座の女優・山谷典子さん(35)が、「フェリス女学院150年史資料集 関東大震災女学生の記録」(同編纂委員会)を参考に脚本を書き上げた。

 同記録集は、1923年9月1日の関東大震災に遭遇したフェリス女学院が、「震災体験を後世に残す義務がある」として、当時十代半ばの女学生百数十人に書かせた「大震火災遭難実記」を新たに編集し直したもの。未曾有の自然災害の前で人々が、どう助け合い危機を乗り越えたか、一方でデマや扇動にまどわされたかが生々しく描かれている。

 山谷さんは、「架空の女学校を舞台に、1923年の関東大震災時の横浜と、東日本大震災時の横浜が行き来する設定にした。昨年の東日本大震災を受けて、人と人の絆が見直されたが、一方で市民に十分な情報が伝わらず、風評被害なども起きた。いま私たちに何が出来るのか、人が生きる意味とは何か、未来への希望をどう持つかを、観客と一緒に考えたい」と話す。

 記録集には、朝鮮人が井戸に毒を投げ入れた、暴動を起こしたなどのデマに女学生がおびえる姿、男たちが朝鮮人を捕らえて暴行を加えるようすなども出てくる。山谷さんは、「日本人の中でタブーとされるこの史実を入れる」ことをスタッフに提案、フェリス女学院出身で同じ文学座の女優、鬼頭典子さん(40)に出演依頼した。

 1年間の韓国演劇留学を終えたばかりの鬼頭さんは、「韓国に留学して知らない歴史的事実が多くあることに気付いた。暴徒に襲われる朝鮮人女性の役だが、過去に何があったか、知ろうとし、それについて考えを持たなくてはいけないと思う。そのきっかけになってほしい」と話す。

■横浜しんさいミュージカル『ト・キ・ノ・キ・ズ・ナ』
日時:3月10日午後7時、同11日
午後12時30分と午後4時30分
場所:神奈川公会堂(JR東神奈川駅)
料金:10日2000円、11日2500円
電話:080・4138・4701
HP:http://kanagawakizuna.com/