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2012/03/16

<韓国文化>韓哲文化財団助成金授与式、学術・芸術など7人に

  • 韓哲文化財団助成金授与式、学術・芸術など7人に

    韓哲文化財団第6回助成金授与式(前方右が韓昌祐理事長、その左が祥子夫人)

 韓哲文化財団(韓昌祐理事長=マルハン会長)の第6回助成金授与式(平成23年度)が14日、東京の帝国ホテルで開かれた。学術・文化など各分野から7人に助成金が授与された。

 助成金授与式では韓昌祐理事長が、「きょう3月14日は、息子の哲の50回目の誕生日。哲は社会貢献に関心があった。その意思を引き継ぎたいと考えて財団を発足させた。東日本大震災から1年経ったが、これまで物の豊かさが心の豊かさを奪っていたが、震災を契機に心の豊かさを取り戻そうとする社会になった。韓哲財団は4月1日から公益財団法人韓昌祐・哲文化財団になる。これまで以上に努力し、日本有数の財団に成長させたい」とあいさつした。そして衆議院議員で同財団の理事も務める池坊保子さんが祝辞を述べた後、越智通雄・日韓親善協会会長ら来賓が紹介された。

 続いて韓理事長が7人の助成対象者に、それぞれ助成金を手渡した。
 
 美術作家の呉夏枝さんは、「祖母の記憶や経験を私は何も知らなかったことに気づいた。そして祖母の記憶を作品としてどう残すことができるか考え、芸術作品にしたい」と述べた。

 日韓比較憲法研究会の國分典子さんは、「日韓は同じ民主体制。それぞれの法制度、民主主義の概念、地方自治制度などを比較研究し、本にまとめていく」と話した。

 徳島大学大学院の樋口直人さんは、「民族経済の動態を明らかにしていきたい」とあいさつ。

 国際芸術交流・海の道の柳美羅さんは、「2001年に日本に来て、現在は横浜で舞踊教室を開いている。昨年1月に国際芸術交流・海の道を立ち上げた」と述べた。

 学習院大学文学部の赤坂憲雄さんは、「東日本大震災で在日コリアンはじめ在日外国人がどういう体験をしたか、被災した在日コリアン100人に話を聞き、来年3月に出版したい」と話した。

 徳島大学大学院の東潮さんは、新羅、日本、唐の古代史を研究している。7世紀後半の時代背景を明らかにしたい」とあいさつした。

 俳優でショートショート実行委員会の別所哲也さんは、「ショートフィルムやミュージックビデオ、観光映画の日韓交流を行ってきた。日韓映像交流をさらに促進させたい」と語った。

 続いての祝賀会では、同財団理事の溝畑宏観光庁長官が乾杯の挨拶を行い、以前助成を受けた人達の演奏会が催された。

 韓哲文化財団は、1990年に設立された韓国文化研究振興財団が前身。16歳の時に留学中の米国で事故のために亡くなった韓昌祐理事長の長男・韓哲さんの名前を付けて平成17年から再出発、学術・文化研究中心から芸術・スポーツ・国際交流など活動の幅を広げた。


◆平成23年度「学術・文化・芸術・スポーツ・国際交流」助成授与者(敬称略)◆

呉夏枝(オ・ハジ) 美術作家
■在日1世・2世のチマ・チョゴリの調査と作品制作
 晴れの日のためのチマ・チョゴリは在日1世・2世の女性にとって、ときに自尊心をもって自身の存在を表す衣服でもあった。それらにまつわる調査により、これまで語られることのなかった記憶を掘り起こし、作品化することで記憶の継承を試みる。

國分典子 日韓比較憲法研究会/筑波大学大学院人文社会科学研究科教授
■日韓憲法学者の交流基盤づくりと研究成果の出版
 日韓の憲法学者の交流基盤をつくり、それぞれの研究支援を行うとともに、研究成果の発表の場の提供を目的に活動する日韓比較憲法研究会。その研究成果発表として『日韓憲法学の課題と対話(仮題)』(全2巻)という書籍刊行を予定。

樋口直人 徳島大学大学院ソシオ・アーツ・サイエンス研究部准教授
■データで読む在日コリアンの地位の変遷
 在日コリアンの社会経済的地位についてのデータは、ほとんど整備されていない。その地位(職業と学歴)は、日本人との比較でどのような相違があり、過去20年間でどう変化してきたのか。データ分析という初の試みで明らかにしていく。

柳美羅(ユ・ミラ) 国際芸術交流「海の道」
■韓国の才人廳舞踊と日本の伝統音楽との共演
 才人廳舞踊は、李朝時代から民間で伝わってきた踊りで、近代化以前の庶民の文化をよく伝えています。その韓国伝統芸能と日本の伝統音楽とのコラボレーションによる「海が伝える古(いにしえ)の記憶」と題した公演を開催し、日韓交流の歴史を表現する。

赤坂憲雄 学習院大学文学部日本語日本文学科教授
■在日コリアンの東日本大震災体験を綴った証言集の出版
 東日本大震災の主な被災地、東北4県に暮らす在日コリアンの被災体験を聞き取り調査し、証言集として出版する。これまであまり顧みられることのなかった、戦後の東北における在日コリアン社会にもスポットを当て、被災に至るまでを綴る。

東 潮(あずま・うしお) 徳島大学大学院ソシオ・アーツ・サイエンス研究部教授
■日本と新羅の交流を基軸に東アジアの国際関係を研究
 韓国慶州の新羅王京の発掘成果をもとに、「新羅王京と東アジア~遣唐使から遣新羅使へ」をテーマに、7~8世紀の統一新羅をめぐる国際環境を明らかにする。さらに墓制・陵園制と都城制を総合的にとらえ、新羅王権の特質なども探る。

別所哲也 ショートショート実行委員会
■日本発・アジア最大級の国際短編映画祭による国際交流
 2012年6月の「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア」では、韓国の旅の魅力を描くショートフィルムを上映予定。これまで実行委員会が手がけてきた日韓観光振興プロジェクトを継続し、日韓の国際文化交流の場を提供していく。