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2013/02/08

<韓国文化>ダンス創作通し相互理解を

  • ダンス創作通し相互理解を

    ファン・スヒョン㊨と鈴木優理子

 横浜ダンスコレクション(17日まで)の一環としてソウルダンスコレクションと横浜ダンスコレクション共催の「日韓ダンス交流プロジェクト」が、15、16の両日、神奈川県横浜市の象の鼻テラスで開催される。韓国からファン・スヒョン、日本から鈴木優理子が参加し、共同作品を発表する。同事業を企画した高松有希子さん(横浜赤レンガ倉庫1号館副館長)に文章を寄せてもらった。

◆”共通のイメージ”を形に 高松 有希子(横浜赤レンガ倉庫1号館副館長)◆

 日本と韓国を代表する若手振付家のためのコンクール「横浜ダンスコレクション」(主催:横浜赤レンガ倉庫1号館/公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)と「ソウルダンスコレクション」がタッグを組む「日本-韓国ダンス交流プロジェクト」が、昨年に引き続き今年も進行中だ。

 同プロジェクトは、日韓それぞれのダンスコレクションが選定した振付家が、韓国・ソウルと日本・横浜でそれぞれ約1カ月、合計2カ月間レジデンス(その地に滞在し、作品制作を)し、創られた作品を韓国、日本で上演するもの。日本での公演会場は、「象の鼻テラス」(神奈川県横浜市)と八戸ポータルミュージアム「はっち」(青森県八戸市)の2カ所。

 このプロジェクトに今年参加するのは、ファン・スヒョンと鈴木優理子。ファン・スヒョンは、財団法人韓国公演芸術センター主催の「ライジングスター」に選定された振付家。イム・ジエと共に結成したCo―Labプロジェクト・グループでの作品『Co-Lab:ソウル-ベルリン』で2012年フェスティバル/トーキョーの公募プログラムに選ばれ東京で作品上演するなど、精力的に活動を続ける振付家だ。また、韓国の有名ダンスカンパニー アン・エスン・ダンスカンパニーに所属し、「横浜ダンスコレクション2002」にダンサーとして参加するなどダンサーとしての経験も豊富。現在はカンパニーを辞め、自身の創作活動に取り組んでいる。

 鈴木優理子は、幼い頃バレエを始め、日本大学芸術学部演劇学科洋舞コース卒業。その後ヨーロッパで研鑽を積んだ。12年12月にはシンガポールCONTACT2012に招聘されるなど、今その活動が注目される振付家。

スヒョンと鈴木は、12年9月からソウルでのレジデンスをスタート。初対面の二人は、二人で色々なことを話すうち、「一緒に」何かをすることや一つの「イメージ」に対して各個人が持つ認識が異なっていることに興味を覚える。そこから創作がスタートし、12年10月にソウルダンスコレクションの演目の一つとして、『Face to Face』を発表した。二人のコミュニケーションにおける共通言語は英語。スヒョンは日本語が少し話せるが、あえて二人の母国語ではない英語を使用することで、お互いが対等の立場にたてるように意識をしての英語の選択だった。

 さらに、二人の言葉で印象的だったのが、韓国人、日本人という文化や言葉の違いはあるのだが、共同制作に取り組んでいるうちに、最終的には、人種をこえ、一個人としてのお互いを知りたいという気持ちが強まったという点だ。レジデンスを通して二人はいつの間にか国境を越えていたのだ。

 韓国公演を終え、横浜でのレジデンスは13年1月にスタート。横浜滞在から2週間目の1月31日には八戸ポータルミュージアム「はっち」で作品を上演した。『Face to Face‐解除された体』と副題がついた八戸公演は、「お互いの置かれた状況を利用して、“共通のイメージ”を形にしてみる」に重点を置き、韓国公演で発表した作品を再構築したもの。韓国公演にあった「一緒に」という要素は一切削られている。それは、横浜で再度作品を構成していく際に、「一緒に」をテーマにいくつかの振付を考え実際に踊り、ビデオを二人でチェックしたところ、観ていて少しも面白さを感じなかったとのこと。そこで「一緒に」の部分を潔く削り、「イメージ」の部分をふくらませ、八戸の作品『Face to Face‐解除された体』となった。

 八戸公演を終え横浜に戻り、さらに2週間の稽古期間を経て、15日、16日に横浜の象の鼻テラスで作品は上演される。ソウル、八戸を経て、横浜で作品は変化するのか。もしくは変化しないのか。まさに現在進行中の『Face to Face 』の行方に注目だ。


■日韓ダンス交流プロジェクト■
日程:15日、16日午後7時開演
 *15日終演後にアフタートークあり
会場:象の鼻テラス(神奈川県横浜市)
料金:一般前売2000円、当日2500円
 *横浜ダンスコレクションEX2013も17 日まで横浜赤レンガ倉庫1号館で開催中
HP:http://www.yokohama-dance-collection-r.jp/