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2013/05/10

<韓国文化>魅力的な韓国インディーズ・アニメ

  • 魅力的な韓国インディーズ・アニメ①

                       『豚の王』

  • 魅力的な韓国インディーズ・アニメ②

                『Noodle Fish/でこぼこ魚』

  • 魅力的な韓国インディーズ・アニメ③

                  『Herstory/少女の物語』

 韓国のインディーズ・アニメを紹介する「花開くコリア・アニメーション2013」が、11日から大阪と名古屋で開催され、話題の短編・長編29作品が一挙上映される。同映画祭の日本側実行委員、田中恵美さんに文章を寄せてもらった。

◆社会問題を多彩な技法とテーマで 田中 恵美(日本側実行委員)◆

 莫大な予算と人員を動員して制作・公開される商業アニメーションとは異なり、作家自身の感性を最大限に生かして制作される、インディーズ・アニメーション。日本でも、アカデミー短編アニメ賞を受賞した『頭山』の山村浩二監督など、多くの作家が活躍している。

 いま韓国でも、このようなインディーズ・アニメーションの制作が、盛んに行われている。「花開くコリア・アニメーション(以下『花コリ』)」は、韓国のインディーズ・アニメーションの最前線を、日本のアニメーションファンや韓国文化ファンに向けて紹介する上映会だ。

 韓国は90年代後半以降、金大中政権の「文化立国」政策をきっかけに、コンテンツ産業の強化が提唱されたが、その一環として、全国の大学にアニメーション学科が設けられ、アニメーション制作を学ぶ若者が急増した。韓国のアニメーション作家による団体「韓国インディペンデント・アニメーション協会(KIAFA)」は、05年より、公募による韓国唯一のインディーズ・アニメーション専門映画祭「インディ・アニフェスト」を開催しており、参加者の中から国際的なアニメーション映画祭の入賞者を輩出するなど、韓国インディーズ・アニメーションの発展に貢献している。

 「花コリ」は、このインディ・アニフェスト韓国内巡回上映の延長として、08年に東京でスタートし、09年には大阪、10年には名古屋での開催を始めた。当初は「韓国」の「インディーズ・アニメーション」という、一般の方々には唐突に思われるような取り合わせを、どのように受け入れてもらうかに腐心した。しかし、日本のアニメーション作家団体や各地の団体・個人の方々からの支援に支えられ、6回目を迎えることができた。

 今年度は「インディ・アニフェスト2012」の本選進出作から、短編28作品を「恋?愛!サラン!!」「世界は万華鏡」「心の扉をノック」の3プログラムに分けて上映する。大賞に輝いた『Noodle Fish/でこぼこ魚』は、約1400食分の乾麺を使ったというユニークな技法に驚かされる作品だ。他にも、従軍慰安婦のハルモニへの取材をもとに制作したという『Herstory/少女の物語』、11年に起きた韓進重工業での「クレーン闘争」をレゴブロックで表現した『希望のバス、ラブストーリー』など、多彩な技法やテーマの作品を見ることができる。

 また、今回は長編作品『豚の王』の特別上映も行う。本作は韓国で初めてカンヌ国際映画祭・監督週間部門に招待された長編アニメーションであり、『息もできない』のヤン・イクチュン監督と女優のキム・コッビが声優として参加したことも話題を呼んだ。

 監督のヨン・サンホは、これまでも短編作品でインディ・アニフェストに入賞するなど高く評価されており、本作の公開は、韓国インディーズ・アニメーションの歴史において、ひとつの成果と捉えることができる。

 「花コリ」では、日韓のアニメーション制作者同士、また観客との交流にも重点をおいている。今年度も、韓国から監督を招いてのトークイベント、また大阪会場と名古屋会場では、一般観客と共同制作を行うワークショップを開催する予定である。

 最後に、主催のKIAFAスタッフ、日本側スタッフも、「韓国のインディーズ・アニメーションが好き、その魅力を広めたい」という一心で、運営に取り組んできた。一人でも多くの方に「花コリ」を通じて韓国インディーズ・アニメーションの世界に触れていただき、その思いを共有できれば幸いである。


■映画祭日程■
 11~16日=大阪PRANET+1、18~19日=愛知芸術文化センター。 http://anikr.com