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2013/07/19

<韓国文化>各地の韓日草の根交流

  • 各地の韓日草の根交流

    左が遠藤 敦司さん

 韓日草の根交流が各地で行われている。群馬では前橋朗読研究会「BREATH」が、山梨では韓日中の市民が集う清里銀河塾が、それぞれ交流行事を開催した。その交流内容を報告する。

◆萩原朔太郎の詩で日韓交流 遠藤 敦司さん(前橋朗読研究会「BREATH」代表)◆

 前橋朗読研究会「BREATH」の創立20周年記念公演「『人生は過失なり』詩人・萩原朔太郎~娘・葉子が描いた父への鎮魂~」をこのほど、前橋市内で開催した。なぜ詩人・朔太郎をテーマに、日韓文化交流公演となったのか?

 その理由は、地元の前橋生まれの詩人、萩原朔太郎が、近現代日本を代表する詩人であることと、その詩作品を韓国で初めて翻訳出版した林容澤氏(仁荷大学教授)を知ったことに起因している。

 今回は韓国の朔太郎研究家として、天安市の祥明大学校教授の梁東国氏が参加。梁氏は現在、日本の女流詩人・茨木のり子研究のため、仙台の東北大学に留学中だ。

 一般的に朔太郎の詩は難解、暗い、病的というイメージが定着。しかし梁氏は、見事そのイメージを振り払ってくれた。特に朔太郎の有名な詩「猫」を梁氏が翻訳し朗読して下さった効果は、抜群だった。

 「おわーこんばんは」のフレーズを、「おわーアンニョンハセヨ」と朗読した瞬間、会場は大いに湧き、笑い声が起った。会場のほとんどの人が、韓流ブームの影響もあって「アンニョンハセヨ」の意味を理解していたのである。

 詠み終わったあと、梁氏は、猫を描いたいくつかの詩は、大正、昭和初期に日本に留学した韓国の若者に多大な影響を与え、それ以後、「猫」を扱った詩がいくつも生まれていると説明してくれた。それ以前は皆無であったという。

 日本の植民地時代に、このような文化交流があったことは、不幸な歴史にわずかな救いを見る事が出来る思いだ。

 対談では、梁氏をはじめ、八木幹夫氏(詩人、前現代詩人会理事長)岡田芳保氏(詩人、元群馬県立土屋文明記念文学館館長)を交えて語り合った。

 オノマトペ(擬声語)について、韓国では擬声語は少なく、特に朔太郎が詩の表現で使った「遺伝」という詩の「のあーる とあーる やはあー」という犬の遠吠えの声。また「時計」という詩の「ぎぼあんじゃん ぎぼあんじゃん」という古い柱時計の擬声音は、ハングルでは大変に翻訳しにくいと梁氏は語った。このことは、朔太郎の独特な感性を浮き出させてくれた。

 こうして、日本文学を違った文化圏から照射する重要性を再認識した20周年公演となった。

 思えば朔太郎が、第一詩集「月に吠える」を自費出版してから、あと四年で百年の時を刻む。今も次々と海外で翻訳出版され、研究され、日韓で朔太郎の詩を朗読する。朔太郎が時代を越え、常に新しい輝きを放っているからではないだろうか。


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