ここから本文です

2014/08/15

<韓国文化>韓流シネマの散歩道 第6回 氾濫する「愛と死」のロマン                                  二松学舎大学 田村 紀之 客員教授

  • 韓流シネマの散歩道 第6回 氾濫する「愛と死」のロマン①

    『とかげの可愛い嘘』 カン・ジウン監督

  • 韓流シネマの散歩道 第6回 氾濫する「愛と死」のロマン②

    『奇跡の夏』 イム・テヒョン監督

  • 二松学舎大学 田村 紀之 客員教授

    たむら・としゆき 1941年京都生まれ。一橋大学卒。東京都立大学経済学部教授、二松学舎大学教授などを経て現在は二松学舎大学客員教授。

◆良作の『とかげの可愛い嘘』『奇跡の夏』◆

 前回、TVドラマ『オープン・エンディッド』を紹介し、韓国版の「愛と死をみつめて」と呼んだ。しかしそのものズバリ、『愛と、死をみつめて』(イ・ドンヒョン監督、原題は「空の庭園」)という作品があることも付言しておこう。愛と死のあいだに「点」があるかないかがポイントである。主演はアン・ジェウクとイ・ウンジュという人気スターたち。ここでは、アン・ジェウクがホスピスの医師、イ・ウンジュが胃がん患者という設定である。

 話がややこしくなるのは、おなじくイ・ウンジュ主演の青春悲恋ものに、『永遠の片想い』というのがあるからだ。こちらのほうは、病弱な若い二人の女性とその共通のボーイ・フレンドとの、純愛の三角関係を扱ったものだが、監督・脚本のイ・ハンが、じつは『愛と、死をみつめて』の脚本も執筆している。05年に主演のイ・ウンジュが、24歳の若さで自殺したことで、この映画にも関心が集中した。

 さらにまた、香港映画『愛と死の間(はざま)で』(ダニエル・ユー監督、05年)というのもあって、ここでも、交通事故、心臓移植、短い余命といった常套手段が、メロドラマの玉手箱からつぎつぎと取り出される。不治の病を中心に据えた安易な悲恋ものは、どうやら韓国映画のお家芸ではなくなっているようだ。


つづきは本紙へ