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2017/11/03

<韓国文化>韓国の社会派作品、日本公開を

  • 韓国の社会派作品、日本公開を

    『パムソム海賊団、ソウル・インフェルノ』

 「山形国際ドキュメンタリー映画祭2017」が先日、山形市内の映画館で開かれ、好評を博した。韓国映画は3本上映された。同映画祭に参加したアジア映画の研究者、門間貴志・明治学院大学文学部芸術学科教授に文章を寄せてもらった。

◆山形国際ドキュメンタリー映画祭を観て 門間 貴志・明治学院大学文学部芸術学科教授◆

 山形国際ドキュメンタリー映画祭も始まってからすでに30年が経とうとしていることに軽い驚きの念を持ちつつ、今年も映画を堪能した。

 開会式の上映は、戦後のドキュメンタリーや実験映画から劇映画まで大きな足跡を残しながらも今年逝去した松本俊夫監督の三本短編作品であった。

 1968年に発表された『つぶれかかった右眼のために』は、三台の16㍉フィルムを同時に上映し、ヒッピー、ゲイ、学生運動など当時の文化や世相をとらえた映像に金嬉老事件のテレビ報道の映像がコラージュされた実験映画である。現在はデジタル化されDVDで観ることも可能になったが、やはり発表当時のマルチスクリーン上映で観直すのは貴重な体験であった。

 15本がエントリーしたコンペティション部門では、フレデリック・ワイズマンの『エクス・リブス-ニューヨーク公共図書館』を観た。

 ナレーションを一切排してひたすら対象を見つめるワイズマンの作風は堂々たるものである。図書館が単に本を貸す場所でないことを、彼らの講演や講座など多彩な活動を見せることで示している。

 量販店にセレクションを丸投げして蔵書を購入するどこかの図書館のことを思い出し、しばし頭痛をこらえた。

 原一男監督の『ニッポン国VS泉南石綿村』は、大阪の泉南市で、アスベスト公害の被害者として国を訴えている原告団を8年にわたって取材した大作である。

 アスベストは石綿と呼ばれ広く建築に用いられてきた建築資材だったが、肺に吸い込むことで肺ガンや中皮腫などの疾患を発症させることが後に判明した。泉南市もかつて石綿産業で栄えた地域である。

 映画は原告団の一人一人の暮らしを追っていくが、取材が進むにつれて次々に亡くなっていく様に呆然とさせられもするが、戦前からこの仕事に携わってきた人々の中に多くの在日韓国人がいることも描かれ、私の関心を引いた。また韓国でもこの公害で苦しむ人々がおり、泉南の原告団が訪韓して彼らと交流を持つ様子も出てくる。

 しかし泉南の原告団の在日韓国人を取材した韓国のメディアが、彼らを「徴用労働者」というステレオタイプに単純に当てはめる報道姿勢にはやや疑問を持った。

 名物プログラムでもあるアジア千波万波部門には20本が出品された。2014年の「雨傘革命」をテーマとした陳梓桓監督の『乱世備忘 僕らの雨傘運動』を観た。


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