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2018/07/27

<韓国文化>映画でコリアンのアイデンティティーを探る

  • 李香鎮・立教大学異文化コミュニケーション学部教授

    イ・ヒャンジン 韓国・釜山生まれ。専門は韓国、北朝鮮、日本を中心とするアジア映画研究。2008年より立教大学異文化コミュニケーション学部教授。 

 韓国・北朝鮮の映画を研究する李香鎮・立教大学異文化コミュニケーション学部教授が、新著「コリアン・シネマ 北朝鮮・韓国・トランスナショナル」(みすず書房)を出版した。李教授に南北の映画について話を聞いた。

◆「コリアン・シネマ 北朝鮮・韓国・トランスナショナル」を出版して◆

 ―本書執筆の動機は。

 本書は、日本における朝鮮半島の植民地支配の記憶や韓日歴史関係から離れて議論することがなかなか難しい日本の主な映画研究者達が持つ後期植民地主義的視点とは異なり、グローバル映画としてコリアン・シネマを分析している。そして、様々な地域との交流と共にグローバル化されたコリアン・シネマの過去20年間の進化過程、最近の動向、主要作品などをトランスナショナルな視点で紹介した。

 ―「春香伝」が南北で受け入れられた理由は。

 「春香伝」は70年に渡る民族分断が短くも感じられるほど長い歴史を持つ最も重要な文化遺産として共有している。特に、政治的不条理や社会的不平等に抵抗する春香が見せる姿が魅力的で、植民地時代の朝鮮映画としてはもちろん、南北韓社会が大変な政治的変動や映画産業に大きな変化を経験するときは、間違いなくリメークされている作品である。

 例えば、1923年に初に無声映画で映画化されて以後、35年には最初のサウンド映画でも製作された。解放以後、韓国では60編以上の「春香伝」、または「春香伝」に基づく作品が製作された。北朝鮮では、金正日によって本格的な時代劇の製作が行われ始めた80年代半ばまでに作られた12編の時代劇のうちの3編が「春香伝」である。

 ―韓国映画がグローバル映画として発展した一番大きな理由は何か。

 80年代の民主化過程で回復した表現の自由と自信だと言える。そして、2000年代に本格的に活動する監督や製作者達は、韓国社会における移住労働者や脱北者、青年層の貧困、性差別などのグローバルな観客が共感できる社会的問題をしばしば扱っている。

 また、彼らは自分たちの観客が韓国人だと限定しない。日本、アジア、米国、欧州、どこの地域に住んでも自分たちの社会的問題意識を共有できる人々のために映画を作る。進歩的な問題意識を持って、低予算映画で多様性を追求する独立系の映画監督たちも、韓国の観客のみを対象としていない。

 これは日本植民地支配という他者による政治的検閲によって、民族的アイデンティティーを追求しにくく、産業発展もできなかった朝鮮映画が持っていた生命力から来た。その強靭な生命力が60年代の黄金期以降長い間軍事独裁体制の下で政治的順応を余儀なくされたが、社会的批判意識は消えず、最後まで生き残って民主化の大衆的基盤となった。

 ―北朝鮮映画をどう評価しているか。


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