◆底辺労働者の諸相◆
アキ・カウリスマキ監督の『枯れ葉』(23年)は、すでに若くはない貧しくて孤独な男と女の、出会いから恋にいたるまでを数々の名曲をバックに描き出した逸品である。
日雇い労働者の男は酒に溺れ、女はスーパーの賞味期限切れ寸前の食品で命をつなぐ。フィンランド語で朗々と歌いあげるシャンソン「枯葉」が耳を離れない。
韓国映画『ビニールハウス』(23年)も好評だ。主人公はビニールハウスに住む訪問看護師。彼女は刑務所にいる息子をもつ。介護しているのは認知症の女性で、その亭主は視覚障碍者。好材料をイ・ソルヒ監督はサスペンスに仕立てるが、別の料理の仕方もありえたはず。
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