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2001/02/16

<韓国経済>ソウル九老工団デジタル団地に大変身

 ソウル市内にある工業団地として親しまれてきた九老工団が、伝統的産業からデジタル産業中心の先端団地へとイメージ刷新を図っている。名称を変更し、先端企業の誘致を図ったところ、有望ベンチャーがこぞって押し寄せており、新たなベンチャー産業のメッカとして注目を浴びている。

 九老工団は、かつて韓国の産業近代化と輸出基地の役割を担い、韓国経済発展の象徴でもあったが、入居していた企業が地価上昇と採算性悪化でいっせいに地方や海外に移転し、90年代半ばから没落の一途をたどった。雇用者数も93年の5万2700人から99年には2万6000人に半減した。

 これを打開し、再び工業団地の活性化を図ろうと、昨年から改革が始まった。まず、名称を「ソウルデジタル産業団地」に改称し、IT(情報技術)関連企業などの誘致を強化した。その結果、昨年から技術力のあるベンチャー企業が続々と押し寄せ、1年間で80社、従業員6000人が増えた。入居企業(2000年末現在633社)のうち、ベンチャー企業が150社を占める。

 新生九老工団が、新興ベンチャーのインキュベーター(保育)タウンとして脚光を浴びているのは、ソウル江南など他の地域に比べ条件が整っているためだ。

 例えば、九老工団は、管理費や維持費が江南地域の3分の2以下と安い。九老工団のベンチャー施設「キーコックスセンター」は100坪(約330平方㍍)で月200万ウオンほどの賃貸料だが、江南では400万―500万ウオンはかかる。

 また、ソウル市内にあり、交通の便が良いことも九老工団の人気の一因だ。ソフト開発会社などにとっては、環状2号線(電車)で取引先の多い江南まで移動できるので、商談にも便利だ。また工場をソウル郊外に設置し、研究所をここに設立するという企業も多い。

 さらに、地の利から、各種支援機関がここに集中しており、ベンチャー関連情報もスピーディーにキャッチできる。その半面、九老地域のイメージが悪く、江南のベンチャーや外資系企業、金融機関に名刺を差し出すと、技術力が劣っているとか、研究・マーケティング力のない企業だと誤解されるという。

 しかし、産業技術評価院、産業技術試験院などの機関が密集しているうえ、中央大、ソウル大などにアクセスしやすく、今後も入居者が増えそうだ。