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2007/09/22

<韓国経済>韓国進出日本企業インタビュー・競争から共創へ 第3回                                           ~ 日本航空副社長 縄野 克彦 氏 ~

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    なわの・かつひこ 1946年、福島県生まれ。東京大学法学部卒。69年、運輸省(現・国土交通省)入省。自動車交通局長、海上保安庁長官、国土交通審議官などを歴任。2005年、日本航空ジャパン常務、2006年、日本航空常務、2007年4月より日本航空代表取締役副社長

 ――韓国に就航したのは国交前の1964年と聞いているが。

 日本と韓国の間では、日本に韓国の方が大勢いらっしゃったこともあり、国交回復前から九州や大阪からの船便等を利用した人々の往来が頻繁にあった。さらに、韓国と米国が政治的、経済的に密接な関係にあり、その中間に位置する日本が韓国に就航すれば、大きな役割が果たせるのではないかと判断し、国交前の64年に韓国に定期便を飛ばすことになった。

 国交のない国に飛行機を飛ばすというのは、防衛という問題もあって異例のことといえるが、韓国の場合は、実質的な旅客の交流があり、すでに翌年の国交回復の見通しが立っていたこともあって、当時、国営航空会社だった日航と大韓航空の提携というかたちで実現したのだと思う。

 ――現在の韓国への就航状況は。

 当社は現在、ソウル、釜山、済州(大韓航空とのコードシェア)の3地域に飛ばしている。64年の就航当時は、航空運賃が高かったこともあり、利用客は年間1、2万人にとどまっていたが、現在は、往復を一人と数えて成田-仁川が約51万人、羽田-金浦が約40万人に達している。当社の国際線全体に占める韓国線の割合は、旅客で約12-13%、収入で約5-6%を占め、韓国は非常に重要な路線だ。

 ――羽田-金浦の開設は航空会社にとって起爆剤になったのでは。

 空港は都心に近いほうが便利だが、東京は空港適地がなく、政策として成田に国際空港を持っていき、国内線は羽田、国際線は成田に振り分けてきた。近年沖縄より近い韓国には羽田から飛ばすべきではないかという声が起こり、羽田-金浦路線が開設された。現在、日航、全日空、大韓航空、アシアナがそれぞれ1日2便を運航しており、ソウルまで2時間15分で飛ぶ。ビジネスマンの日帰り出張が可能になり、非常に利便性が高まった。9月末からは羽田-虹橋(上海)に就航することが決まり、中国とのビジネスも活性化すると期待している。

 成田-仁川の場合は、他の国際線に乗り継いで米国などに行く人も多いが、羽田-金浦は基本的に韓国あるいは日本への訪問客と言ってよく、その意義は大きいと思う。

 ――就航以来、大韓航空とは密接な関係があるが、どのような交流を続けているのか。

 航空会社は、世界中にネットワークを広げ、グローバル展開を図っており、単独ではやっていけない時代になってきた。航空会社同士が提携し、互いに助け合い、協力し合っていくのが世界の流れになっている。大韓航空とは、コードシェア(共同運航)をやっているほか、空港でのハンドリングでも協力している。羽田と成田では当社が世話をし、逆に金浦、仁川ではやっていただく。こういった共同作業は、仕事の効率化を図るうえで欠かせない。ターミナルでの乗り継ぎに便利になる、マイレージが貯まるなど、利用客にとってもメリットは大きい。

 1社で世界中にネットワークを張るのは不可能なので、互いに手を携え、足りない部分を補い合っていくことが今後ますます必要になるだろう。

 ――先日の韓日航空協議で、相手国への相互乗り入れ自由化に合意したが、今後の韓国路線の拡大計画は。

 韓国の地方都市への就航は関心事ではあるが、ソウル、釜山を拠点に列車やバスを利用して地方に行けるので、いまのところ2都市で足りている。それよりも、韓国とは航空協定で以遠権(相手国を経由して第3国に飛ぶこと)があることから、今後、韓国を経由して中国の地方都市に飛ばすことでビジネスチャンスが広がる可能性がある。

 中国は巨大な人口を抱え、消費大国として脚光を浴びており、将来は日韓中が経済的に一つになり、一体化が進んでいくだろう。中国は環境、省エネなど、たくさんの課題を抱えているが、航空問題もその一つだ。

 日本と韓国は、中国との航空交渉でもっと容量を増やしてほしいと要請している。航空路、飛行場だけでなく、空の通路の管制システムのレベルを上げれば、容量が多くなる。航空路の容量を増やすのが3カ国の課題だ。

 中国は米国と同じように国土が広く、移動交通手段が徐々に飛行機に代わりつつある。このため、航空需要は毎年2ケタの伸びが続いている。すぐの実現は難しいと思うが欧州のように域内の航空自由化が進展していくようになれば、ビジネスチャンスがどんどん広がると思う。

 ――韓日の友好促進への提言を。

 日本と韓国は地理的、文化的、民族的、人種的に最も近い隣国であり、欧州の人々が見たら、日本人も韓国人も区別がつかないくらいよく似ている。韓国のお寺に行くと、日本に仏教を伝えた玄関口であることがよくわかる。

 日本人のルーツは、南方系、中国系、朝鮮半島系とあるが、現天皇が間接的に言及したように、韓国から渡来人が文化を携えて日本にやってきたことは明白だ。近代において悲しむべき歴史はあったが、日韓は親類であり、文化的、経済的交流をもっともっと深め、友好関係をさらに強固にしていくべきだ。飛行機は交流を後押しする手段であり、今後も両国の友好親善に寄与できることを願っている。